投稿者: 行政書士吉村

  • 遺言の重要性

    遺言の重要性

    遺言とは

    人生の集大成ともいえる「遺言」は、ご自身の大切な財産や想いを、確実にご家族や関係者へ伝えるための法的手段です。

    長年かけて築き上げた財産や、大切な人への気持ち。それらを「自分の希望通りに託したい」とお考えの方にとって、遺言書は非常に有効なツールです。

    遺言書を作成しておくことで、相続人同士のトラブルを防ぐことができるだけでなく、ご自身の意思を明確に伝えることができるため、残されたご家族の安心にもつながります。

    「うちにはあまり財産がないから関係ない」と思われるかもしれませんが、実はそういった方ほど遺言書の有無が大きな影響を与えるケースも少なくありません。

    当事務所では、お一人おひとりのご事情やご希望を丁寧にお伺いし、適切な遺言書の作成をお手伝いしています。
    将来への安心と、ご家族への優しさを形にするために――今からできる準備を始めてみませんか?


    遺言を残すメリット

    ~将来の安心と家族の笑顔のために~

    「自分が亡くなった後、家族に迷惑をかけたくない」「大切な人にきちんと財産を残したい」——
    そんな思いをお持ちの方には、遺言書の作成を強くおすすめします。

    遺言を残すことで、次のようなトラブルを未然に防ぐことができます。

    ■ 法定相続では対応できないご希望に沿える
    ・特定の相続人に、法定相続分以上の財産を渡したい
    ・特定の相続人を相続から外したい

    このようなケースでは、遺言がなければ希望通りに財産を分けることはできません。

    ■ 財産の種類に応じた分配ができる
    ・不動産は長男へ、預貯金は次男へ、といった財産ごとの分配も可能です。
    法定相続では、すべての財産を均等に分けることが基本のため、分け方に不満が出やすく、相続争いの原因となることがあります。

    ■ 相続権のない方にも財産を遺せる
    ・内縁の配偶者や長年お世話になった方など、法律上の相続権がない人にも、遺言によって財産を遺すことができます。

    ■ 認知の意思を伝えることができる
    ・婚外子などを認知したい場合にも、遺言によって法律上の効力ある認知が可能になります。

    遺言の法的ルール

    日本の民法では、遺言の形式や作成方法について厳格なルールを定めています。
    民法第960条(遺言の方式) 「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
    民法第967条(普通の方式による遺言の種類) 「遺言は、自筆証書、公正証書、秘密証書のいずれかによってしなければならない。」


    この規定により、録音や動画による遺言は無効となります。正しく法的に有効な遺言を作成するためには、遺言書の形式や内容に細心の注意を払う必要があります。

    適切な遺言の作成に向けて

    ご自身の思いをしっかりと残すために――
    遺言書は、相続に関するご意思を明確に示す大切な手段です。しかし、法律上の要件を満たしていない遺言書は、無効とされてしまうことがあります。また、内容があいまいな場合、かえって相続人の間でトラブルの原因となることも少なくありません。

    市販のエンディングノートは、自分の考えを整理するためには有効ですが、法的な効力はありません。安心して相続の準備を進めるためには、法的に有効な「遺言書」を作成することが重要です。

    当事務所では、遺言書の作成に必要な法的知識をもとに、わかりやすく丁寧にサポートいたします。
    「自分の意思をしっかり残したい」「相続で家族に迷惑をかけたくない」――そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

    まとめ


    • 遺言を作成することで、相続争いを防ぎ、財産分配の希望を明確に示すことができます。
    • 遺言は、民法に定められた方式(自筆証書、公正証書、秘密証書)で作成する必要があります。
    • 遺言作成の際には、行政書士などの専門家のサポートを受けることで、より確実な遺言書を残すことが可能です。

    遺言は「想いをかたちに」する大切な手段です
    遺言書は、単に財産の分け方を示すものではなく、あなたの人生の総まとめであり、ご家族への最後のメッセージでもあります。
    きちんと準備しておくことで、残されたご家族が安心して未来を歩むことができるのです。

    当事務所では、あなたのご意向を丁寧にお伺いし、法的に有効な遺言書の作成を全力でサポートいたします。
    どうぞお気軽にご相談ください。

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  • 遺言の方式

    遺言の方式

    遺言を作成する際に知っておきたい基本事項

    遺言(いごん)は、人生の最期に残す大切な意思表示です。財産の分け方を明確にしたり、家族や大切な人への想いを形にしたりすることで、遺された方々の負担やトラブルを未然に防ぐことができます。

    しかし、遺言には法律で定められた形式があり、正しい方法で作成しないと「無効」となってしまう恐れがあります。せっかく遺された想いも、法的に認められなければ実現されない可能性があるのです。

    ここでは、遺言を考え始めた方に向けて、最低限知っておくべき「遺言の基本的なルール」について、分かりやすくご説明いたします。



    遺言の方式にはルールがある


    遺言は自由に作成できるわけではなく、法律で定められた方式に従う必要があります。民法第960条には、


    遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。


    と規定されています。このため、遺言を適切な方式で作成しないと、法的に無効となる可能性があります。

    遺言の方式の分類

    民法では、遺言の方式を以下の2種類に分類しています。

    普通の方式(一般的な遺言)
    特別の方式(緊急時の遺言)

    それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

    普通の方式の遺言

    一般的に用いられる遺言の方式で、平常時に作成されるものです。民法第967条では、次の3つの方式が定められています。

    自筆証書遺言

    • 遺言者が全文を自筆で書く方式。
    • 費用がかからず手軽に作成できる。
    • 形式不備があると無効になる可能性がある。

    • 2020年の民法改正により、自筆の負担軽減のため一部の内容(財産目録など)のパソコン作成が認められるようになった。

    公正証書遺言

    • 公証人が遺言者の口述をもとに作成し、公証役場で保管する方式。
    • 形式や内容の不備がなく、確実に執行される。
    • 費用がかかるが、トラブルを防ぎやすい。

    秘密証書遺言

    • 遺言の内容を秘密にしながら、公証人に遺言の存在を証明してもらう方式。
    • 遺言の秘密を保持できるが、形式に不備があると無効になる可能性がある。
    • 実際に利用されることは少ない。

    特別の方式の遺言

    特別の方式の遺言は、遺言者が通常の方式で遺言を作成できない特別な状況にある場合に認められるものです。民法には、以下のような特別の方式が定められています。

    死亡の危急にある人の遺言

    • 生命の危機が迫る状況で、証人3名以上の立会いのもと、遺言の趣旨を口授し、筆記させる方式。
    • 遺言の日から20日以内に家庭裁判所で確認を得る必要がある。

    伝染病で隔離されている人の遺言

    • 伝染病のために隔離されている人が、警察官1名および証人1名以上の立会いのもとで作成する遺言。

    船舶中にいる人の遺言

    • 船に乗っている人が、船長または事務員1名と証人2名以上の立会いのもとで作成する遺言。

    船舶遭難中の人の遺言

    • 船舶が遭難した際に、証人2名以上の立会いのもとで口頭で遺言する方式。
    • 証人が筆記し、家庭裁判所の確認を得る必要がある。

    まとめ

    • 遺言には法律で定められた方式があり、これに従わないと無効になる可能性があります。
    • 一般的な遺言は「普通の方式」であり、自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類があります。
    • 緊急時には「特別の方式」による遺言が認められることがあります。
    • 遺言を作成する際は、適切な方式を選び、必要に応じて専門家に相談することが大切です。

    専門家のサポートで安心を
    遺言は一度作成すれば終わり、というものではありません。状況の変化に応じて見直しが必要になることもあります。また、相続人の状況や財産の種類によって、最適な遺言の形式は異なります。

    当事務所では、遺言書の作成から見直し、保管・執行に至るまで、安心して任せていただけるサポートをご提供しています。

    ご自身の意思を確実に伝えるために。
    大切な人に、想いと財産をきちんと届けるために。
    正しい遺言書の作成を支援します。

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  • 自筆証書遺言の書き方

    自筆証書遺言の書き方

    自筆証書遺言とは

    自筆証書遺言とは、遺言者が自ら手書きで作成する遺言書のことを指します。民法により作成方法が厳格に定められており、これに従わない場合、遺言書が無効となる可能性があります。自筆証書遺言を正しく作成するために、そのルールや注意点を詳しく解説します。


    自筆証書遺言の作成ルール

    自筆で書くこと

    遺言者自身が手書きで全文を記載する必要があります。パソコンや代筆は認められていません。
    遺言の全文・日付・氏名の記載

    遺言書には以下の内容を必ず記載しなければなりません

    全文:遺言の内容はすべて手書きで記載
    日付:作成日を「○年○月○日」と具体的に記載(「吉日」は不可)
    氏名:遺言者本人の氏名をフルネームで記載

    押印の必要性
    遺言書には押印が必要です。裁判所では実印に限らず認印や指印も認められていますが、偽造・変造を防ぐために実印の使用が推奨されます。


    自筆証書遺言の訂正方法


    遺言書を訂正する場合、以下の手続きを行わなければなりません。

    訂正箇所を明示
    訂正した旨を記載
    署名と押印を訂正箇所に追加

    誤った訂正方法を用いると遺言書が無効になるため、慎重に訂正するか、書き直すことが望ましいです。


    財産目録の作成


    遺言書に財産目録を添付することができます。財産目録は自筆でなくても作成可能であり、パソコンやワープロを使用できます。また、預金通帳の写しや登記事項証明書を添付することも認められています。ただし、財産目録の各ページには署名と押印が必要です。


    遺言書の保管方法

    自己保管のリスク
    自筆証書遺言は自己責任で保管する必要があります。紛失や破棄・変造のリスクがあるため、適切な保管が求められます。

    法務局での保管制度
    2020年7月10日より「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が施行され、法務局に自筆証書遺言を預けることができるようになりました。この制度を利用すると、遺言書の紛失や変造を防ぎ、また家庭裁判所の検認手続きを省略することが可能となります。


    自筆証書遺言の検認


    自筆証書遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所の「検認」を受ける必要があります。検認は遺言書の形式を確認する手続きであり、内容の有効性を判断するものではありません。なお、検認を受けずに遺言を執行した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。


    自筆証書遺言のメリット・デメリット

    メリット
    いつでも自分で作成できる
    費用がかからない
    内容を秘密にできる
    デメリット
    書き方のミスで無効になる可能性がある
    検認の手続きが必要
    紛失や偽造のリスクがある

    まとめ


    自筆証書遺言は手軽に作成できる一方で、法律に基づいた適切な記載が求められます。遺言書の有効性を確保するために、正しい方法で作成し、適切に保管することが重要です。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。

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  • 公正証書遺言

    公正証書遺言

    はじめに

    遺言書を作成する際、「どのように書けばよいのか分からない」と悩む方も多いでしょう。そのような場合、法律の専門家である公証人を活用することで、適正かつ確実な遺言を残すことができます。
    本記事では、公正証書遺言の特徴や作成手続きについて詳しく解説します。

    公正証書遺言の特徴

    公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。自筆証書遺言と比較して、以下のようなメリットがあります。

    紛争を未然に防ぐ効果
    公正証書遺言は法律の専門家が関与し、適正な形式で作成されるため、後々の紛争を防ぐ効果があります。

    遺言書の紛失・偽造を防止
    作成された遺言書の原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがありません。

    家庭裁判所の検認が不要
    自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要ですが、公正証書遺言は不要です。これにより、相続手続きがスムーズに進みます。

    公正証書遺言の作成手続き

    必要な証人
    公正証書遺言を作成するには、証人が2名以上必要です。ただし、次のような人は証人になれません。

    未成年者
    遺言者の推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族
    公証人の配偶者、親族、使用人
        証人を頼む際は、弁護士・行政書士・司法書士などの法律専門家に依頼することもできます。

    作成の流れ

    公証役場に相談
    遺言の内容について事前に公証人と相談します。
    証人の手配
    証人2名を準備します。
    公証人による遺言内容の筆記
    遺言者が口述した内容を公証人が筆記し、遺言者および証人に確認してもらいます。
    遺言者・証人の署名・押印
    筆記内容に問題がなければ、遺言者と証人が署名・押印します。
    公証人の署名・押印
    公証人が署名・押印し、遺言書が正式に完成します。
    正本・謄本の交付
    遺言者には正本・謄本が交付され、原本は公証役場で保管されます。

    公正証書遺言の費用

    公正証書遺言の作成には、公証人の手数料が発生します。手数料は遺産の総額に応じて異なり、以下のように定められています。

    相続財産の額 公証人手数料
    100万円以下 5,000円
    100万円超~200万円以下 7,000円
    200万円超~500万円以下 11,000円
    500万円超~1,000万円以下 17,000円
    1,000万円超~3,000万円以下 23,000円
    3,000万円超~5,000万円以下 29,000円
    5,000万円超~1億円以下 43,000円
    また、証人を弁護士・司法書士・行政書士に依頼する場合は別途費用が発生します。

    公正証書遺言の活用が適している方

    以下のような方には、公正証書遺言の作成をおすすめします。

    自筆での遺言作成が難しい方
    遺言の内容を確実に伝えたい方
    相続争いを防ぎたい方
    家庭裁判所での検認手続きを避けたい方

    特に、視覚障害や聴覚障害がある方でも、通訳を活用することで公正証書遺言を作成することができます。

    まとめ

    公正証書遺言は、公証人が作成することで法的に有効性が高く、紛失・改ざんのリスクが低い遺言書の形式です。確実な遺言を残したい方は、公証人と相談のうえ、作成を検討してみましょう。
    公正証書遺言の作成についてのご相談は、行政書士や弁護士にお問い合わせください。

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  • 遺言でできること 〜認知や未成年者の処遇について〜

    遺言でできること 〜認知や未成年者の処遇について〜

    遺言による身分関係の決定について


    遺言は、法律で定められた方式を守っていれば、その内容は基本的に自由に決めることができます。

    ただし、遺言には相続人や相続財産に大きな影響を与える事項が含まれることがあり、特に遺族の身分関係に関わる内容については慎重に作成する必要があります。

    本記事では、遺言によって影響を及ぼす可能性のある身分関係に関する事項について解説します。

    遺言で身分関係に影響を与える事項


    遺言によって決定できる身分関係に関する事項には、以下のようなものがあります。

    認知

    認知とは、結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)について、父親がその子を自分の子どもであると法的に認めることをいいます。

    ふつうは役所に届け出ることで認知をしますが、もう一つの方法として「遺言」によって認知することもできます。

    これは、父親が生前に認知できなかった場合に、遺言書の中で「自分の子である」と記すことで、死後に認知の効力が生じる仕組みです。

    認知されると、その子は父親の法的な子どもとして扱われ、相続の権利も得ることができます。

    つまり、遺言による認知は、子の権利を守る大切な手段でもあるのです。

    「認知=法律上の親子関係をつくること」

    未成年後見人の指定

    未成年後見人とは、親が亡くなったり親権を失ったときに、代わりに子どもの生活や財産を守る人です。


    民法第839条では、親があらかじめ遺言で「この人を未成年後見人にしてください」と指定できることが定められています。


    特に、両親のうち一方に財産の管理権がない場合は、もう一方の親が単独で指定できます。


    もし遺言などで誰も指定されていなければ、家庭裁判所が適切な人を選んで後見人にします。


    未成年後見人は1人でも複数でもよく、場合によっては法人(例えば福祉団体など)を選ぶこともできます。


    子どもが不利益を受けないように、法律はこのような仕組みを整えています。

    未成年後見人とは、親が亡くなったり親権を失ったときに、代わりに子どもの生活や財産を守る人です。


    たとえば、10歳の子どもがいて、両親とも交通事故で亡くなってしまった場合、その子には親の代わりとなる「未成年後見人」が必要です。


    民法第839条では、親が生前に遺言で「子どもが未成年のうちに自分が亡くなったら、この人を後見人にしてほしい」と書いておけば、その人が未成年後見人に選ばれます。


    たとえば「おばの花子さんにお願いしたい」と遺言に書いておけば、花子さんが子どもの生活や財産を見守る役割を担います。


    遺言がなければ、家庭裁判所が信頼できる人を選任します。


    また、1人でなく複数人にしたり、福祉法人などの団体を後見人にすることも可能です。


    子どもを守るための、大切なしくみです。

    未成年後見監督人の指定

    未成年後見監督人とは、未成年後見人が子どもの生活や財産をきちんと管理しているかを見守る役割の人です。

    たとえば、親が亡くなったあと、代わりに子どもを世話する未成年後見人が決まったとしても、その人が本当に子どものために行動しているかどうか、誰かがチェックする必要があります。

    そのチェック役が「未成年後見監督人」です。

    民法第848条では、遺言を残す人(遺言者)が、未成年後見人だけでなく、未成年後見監督人も遺言で指定できると定めています。

    つまり、自分が亡くなった後、信頼できる人に「後見人の監督役もお願いしたい」とあらかじめ決めておけるのです。

    ただし、遺言で指定がなかった場合でも心配はいりません。

    そのときは家庭裁判所が代わりに適切な人を選んで、未成年後見人の監督体制を整えてくれます。

    子どもの利益がきちんと守られるように、法律は二重のチェック体制を用意しているのです。


    遺言作成時の留意点

    上記のような身分関係に影響を与える遺言を作成する際には、以下の点に留意する必要があります。

    遺言は、遺産の分け方だけでなく、身分関係にも大きな影響を与えることがあります。

    たとえば「認知」を遺言で行う場合、その子どもは法的に親子関係があると認められ、相続人となります。

    これにより、それまで想定されていなかった人が相続に加わることになり、他の相続人との関係が複雑になる可能性があります。

    感情的な対立が起こることもあるため、慎重な判断が必要です。

    また、未成年の子がいる場合には「未成年後見人」を遺言で指定することができます。

    後見人はその子の生活や財産を管理する重要な役割を担いますので、信頼でき、責任感のある人物を選ぶ必要があります。

    適任者が見つからない場合は、家庭裁判所に申し立てて法人を後見人として選任してもらう方法もあります。

    身分関係に関わる遺言は、家族の将来に深く関わるため、専門家に相談しながら丁寧に作成することが大切です。

    遺言にはいくつかの方式がありますが、特に「身分関係に影響を与える遺言」(たとえば認知や相続人の廃除など)をする際には、「公正証書遺言」をおすすめします。

    自筆証書遺言や秘密証書遺言では、亡くなった後に家庭裁判所の「検認」という手続きが必要です。

    この検認では、形式に不備があると遺言が無効になるおそれがあります。

    特に自筆証書遺言では、日付や署名の書き忘れなどでトラブルになることが多いです。

    これに対して公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が内容を確認しながら作成するため、形式的なミスが起きにくく、遺言の内容が確実に実現されやすいです。

    さらに検認手続きも不要なので、遺言者の意思を速やかに反映させることができます。

    特に重要な意思を遺す場合には、公正証書遺言が最も安心・確実な方法といえるでしょう。

    まとめ

    遺言者は、遺言によって認知や未成年後見人・未成年後見監督人の指定を行うことができます。


    これらの事項は、相続人や未成年者の生活に大きな影響を与えるため、慎重に作成する必要があります。


    遺言の有効性や迅速な執行を確保するため、公正証書遺言を利用することが望ましいです。

    遺言の作成にあたっては、法律の専門家に相談し、適切な内容となるよう十分な検討を行いましょう。

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  • 遺言の重要性と相続財産の処分について

    遺言の重要性と相続財産の処分について

    遺言の重要性と影響

    遺言は、遺言者が自身の財産の分配方法を指定できる法的手段です。

    遺言の内容次第で相続人や相続財産に大きな影響を及ぼす可能性があるため、遺言を作成する際にはその内容を十分に理解し、適切に記載することが重要です。


    本記事では、遺言によって相続財産の処分に影響を与える主な事項について解説します。

    遺言によって相続財産の処分に影響を与える事項


    遺言によって相続財産の処分に関与できる事項として、以下の3つが挙げられます。

    遺贈
    一般財団法人の設立
    信託の設定

    遺贈(いぞう)とは、遺言書によって自分の死後に財産を誰かにあげることです。

    たとえば、「自分の家を友人にあげる」と遺言書に書いておけば、その友人は家をもらうことができます。

    遺贈の相手は家族でなくてもかまわず、友人や法人(たとえば学校や団体)でもOKです。

    ただし、注意が必要なのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。

    遺留分とは、法定相続人(たとえば子どもや配偶者)に最低限保証されている取り分のこと。

    遺贈で全部の財産を他人にあげてしまうと、遺留分を侵害することになり、相続人から「取り返したい」と請求されることがあります。

    ですから、遺贈を考えるときは、誰にどれくらいの財産を残すか、遺留分とのバランスを考えることが大切です。

    一般財団法人とは、ある目的のために使うお金(財産)をもとに作られる法人です。

    たとえば「子どもたちの教育を支援したい」と思って財産を残す場合、この一般財団法人が使われます。

    この法人を「遺言」で作ることができる点です。亡くなった人の意思で法人を作るわけです。

    手続きの流れはこうです。

    まず遺言の中で、「一般財団法人を作りたい」「こういう目的で動かしてほしい」と書きます。

    次に、遺言執行者(亡くなった人の遺言を実行する人)が定款(法人のルール)を作り、公証人の認証を受けます。

    そして最低でも300万円の財産を拠出し、役員(評議員・理事・監事)を選びます。

    最後に、理事の中から代表者を決めて、法務局で法人の登記をすれば設立完了です。

    少し手順は多いですが、故人の思いを法人という形で実現できる制度なのです。

    信託とは、自分の大切な財産を「信頼できる人(受託者)」に託して、その人に特定の目的のために管理・運用してもらう制度です。

    たとえば、自分が亡くなったあと、未成年の子どもがしっかりと生活できるように、遺言で信託を設定することができます。

    たとえば、次のようなケースで使われます。

    • 子どもがまだ小さく、財産を自分で管理できないとき
    • 障がいがあって生活支援が必要な家族がいるとき
    • お金を浪費してしまうような相続人がいるとき

    信託を使えば、「このお金は毎月10万円ずつ子どもの生活費に使うように」といった希望を形にすることができます。

    単に財産を渡すだけではなく、将来の使い方まで指定できるので、遺族の生活を安定させるのにとても有効です。

    遺言作成時の留意点

    遺言で自分の財産の分け方を決めることができますが、正しいルールに従わないと、その遺言が無効になってしまうことがあります。

    特に注意したいのは、遺言の「方式(決められた形)」と「内容」です。

    例えば、自筆で書いた遺言(自筆証書遺言)や、内容を秘密にして作る遺言(秘密証書遺言)は、亡くなった後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要で、その過程で無効になる可能性もあります。

    これに対して、公正証書遺言は、公証人という専門家が作成をサポートしてくれるため、方式や内容のミスが起こりにくく、安全性が高いのが特徴です。

    ですから、遺言を確実に残したいなら、公正証書遺言を選び、専門家のアドバイスを受けながら作るのが安心です。

    まとめ

    • 遺言により、遺贈、一般財団法人の設立、信託の設定が可能。
    • これらの事項は相続財産に大きな影響を与えるため、慎重に作成する必要がある。
    • 遺言の無効リスクを避けるため、公正証書遺言を利用するのが望ましい。

    適切な遺言を作成し、円滑な相続を実現するためにも、専門家に相談することをおすすめします。

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  • 遺言執行者とは

    遺言執行者とは



    遺言執行者の役割

    遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う者を指します。法律上の正式な呼称は「遺言執行者」ですが、「遺言執行人」と呼ばれることもあります。
    遺言は、遺言者の死後にその内容が実現されるものです。遺言執行者が指定されている場合、遺言の内容が適正かつ迅速に実行されることが期待されます。
    本記事では、遺言執行者の必要性や法的根拠、具体的な任務について詳しく解説します。

    遺言執行者を指定するメリット


    遺言執行者を指定することは必須ではありませんが、以下のようなメリットがあります。
    遺言内容の確実な実現 遺言執行者は遺言者の代理人として、相続財産の管理や遺言の執行に必要なあらゆる行為を行う権限を持ちます。
    相続人による妨害の防止 遺言執行者が指定されている場合、相続人は相続財産の処分や遺言執行を妨げる行為をすることができません(民法第1013条)。

    第1013条は、遺言執行者がいるときに、相続人が勝手に遺産を動かしてはいけないというルールを定めています。

    遺言執行者とは、亡くなった人の遺言の内容を実際に実行する人のことです。たとえば「Aにこの家を相続させる」と遺言に書いてあった場合、遺言執行者はその手続きを進めます。このとき、相続人が勝手にその家を売ったり、処分したりすることはできません。もし相続人が遺言の内容に反する行動をとってしまうと、亡くなった人の意思が守られなくなってしまうからです。

    この条文の目的は、遺言者の最後の意思をきちんと実現させるために、遺言執行者にスムーズに仕事をしてもらうことにあります。つまり、相続人の自由な行動よりも、遺言の実現を優先させているのです。

    遺言執行者が指定されていない場合、遺言の実現は相続人全員の協議に委ねられます。しかし、相続人間の意見が対立すると協議が不調になり、遺言の実現が遅れることがあります。遺言執行者がいることで、このようなリスクを軽減できます。

    遺言執行者の指定が必要なケース


    以下のような内容を含む遺言の場合、遺言執行者の指定が必須となります。

    子の認知

    推定相続人の廃除

    一般財団法人の設立

    【民法における遺言執行者の重要な役割(民法1014条・1015条ほか)】

    遺言によって自分の死後の意思を実現するには、「遺言執行者」が必要になる場面があります。たとえば、亡くなった方が「私の子を認知する」と遺言に書いていた場合(民法781条2項)、遺言執行者が戸籍法の定めに従い、市区町村へ届出をして初めて、認知が法的に成立します。本人が死亡している以上、自分で届出はできませんから、遺言執行者が代わりに行うのです。

    また、「この相続人には財産を渡したくない」として相続人の廃除を希望する遺言(民法893条)も、ただ書いただけでは効力は生じません。遺言執行者が家庭裁判所に対して正式に廃除を請求する必要があります(民法894条2項)。

    さらに、遺言によって「一般財団法人を設立したい」という意思が示された場合も、その法人設立のための諸手続きを、遺言執行者が担うことになります(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条)。

    このように、遺言執行者は単に遺産を分けるだけでなく、遺言内容の実現に深く関わる法的な責任者です。民法1012条以下に規定されており、相続実務において極めて重要な役割を果たします。

    遺言執行者の法的根拠

    遺言執行者に関する規定は民法に定められています。

    第1015条は、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」の行為がどのように相続人に影響を与えるかを定めています。遺言執行者とは、亡くなった人(被相続人)の遺言の内容を実際に実行する人のことです。たとえば、「Aに財産を渡せ」と遺言があれば、それを実際に渡すのが遺言執行者の仕事です。

    この条文では、遺言執行者がその「権限の範囲内」で、「自分は遺言執行者ですよ」と示して行動した場合、その結果は相続人に直接効力があるとされています。つまり、遺言執行者が適切に手続きをすれば、相続人の許可を得なくても、その行為は法的に有効であり、相続人がそれを受け入れる義務があるということです。

    この仕組みにより、遺言の内容がスムーズに実現できるようになっています。

    第1016条は、「遺言執行者」が他の人に仕事を任せることができるか、ということを定めています。遺言執行者とは、亡くなった人(遺言者)の遺言の内容を実現する人のことです。この条文では、遺言執行者が自分の責任のもとで第三者に仕事を任せること(再委任といいます)が認められています。ただし、遺言の中で「自分でやってほしい」といった特別な意思が書かれている場合は、その内容が優先されます。さらに、やむを得ない理由があって第三者に任せたときには、その選び方や監督の仕方について、相続人に対して責任を負う、ということになります。つまり、遺言執行者が誰かに任せる場合でも、全く無責任ではいけませんよ、というルールです。

    遺言執行者の具体的な任務



    民法では、遺言の内容を実現するために「遺言執行者」という役割があります。これは、亡くなった人の意思をきちんと実現するために必要な仕事を、一定のルールに従って行う人のことです。主な流れは以下のとおりです。

    就任の通知(民法1007条)
    遺言執行者になった人は、まず相続人に「自分が遺言執行者として就任したこと」を知らせます。

    相続人の調査
    被相続人(亡くなった人)の戸籍を出生から死亡まで集めて、誰が法定相続人なのかを確認します。

    財産目録の作成(民法1011条)
    遺産の内容(不動産、預貯金、株など)を調べて一覧表にし、それを相続人に渡します。この段階で、相続人の同意があれば家庭裁判所の許可なく目録を作成できます。

    遺言の執行(民法1012条)
    遺言に書かれている内容を具体的に実行します。たとえば、特定の人に不動産を渡すために名義変更をしたり、預金を払い戻したりします。

    遺産の引渡しと業務完了の通知
    遺産を受遺者や相続人に引き渡し、すべての業務が終わったら、完了したことを関係者に知らせて終了です。

    遺言執行者に関するその他の規定

    民法第1017条は、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」が複数いる場合のルールを定めています。遺言執行者とは、遺言に書かれた内容を実際に実行する人のことです。たとえば、「Aに財産をあげる」と書いてあれば、その財産をAに渡す手続きをするのが遺言執行者の役割です。

    この条文では、遺言執行者が2人以上いるとき、何かを決める必要がある場合は「過半数(半分より多い数)」の賛成で決めてよい、とされています。全員の同意が必要ではないという点がポイントです。ただし、遺言を書いた人(遺言者)が、「この遺言は全員一致で進めてほしい」などと特別な指示をしていた場合は、その指示が優先されます。

    つまり、基本的にはスムーズに遺言を実行できるように、過半数で物事を決められる仕組みですが、遺言者の意志があればそれを尊重する、という柔軟なルールになっています。

    民法第1019条は、遺言執行者の「解任」と「辞任」について定めた条文です。遺言執行者とは、亡くなった人(被相続人)の遺言を実現するために選ばれた人のことです。この人がきちんと仕事をしなかったり、何らかの正当な理由(たとえば病気など)がある場合には、相続人などの関係者は、家庭裁判所に対してその人を辞めさせてほしいと請求することができます(これが「解任」)。また、遺言執行者自身も、正当な理由があるときは、家庭裁判所の許可をもらって自分から辞めることもできます(これが「辞任」)。つまりこの条文は、遺言執行者に問題があったときや続けられない事情があるときに、柔軟に対応できるようにして、円滑に遺言が実行されることを目的としています。


    報酬と費用の支払い


    第1018条は、遺言執行者の報酬に関する規定です。遺言執行者とは、遺言で指名された人が遺産の分け方を実行する役割を担いますが、その仕事に対する報酬の取り決めについて述べています。

    まず、家庭裁判所が「相続財産の状況やその他の事情」を考慮して、遺言執行者の報酬を決めることができるということです。これにより、遺産の額や執行者が行う仕事の内容に応じて、報酬の額が調整されることがあります。例えば、遺産が多い場合や、複雑な手続きが必要な場合には、報酬が高くなる可能性があります。

    一方で、「遺言者が遺言で報酬を定めた場合は、この限りでない」とも書かれています。つまり、遺言者が遺言で具体的に報酬の額を決めていれば、家庭裁判所が報酬を決める必要はなく、その遺言に従うことになります。

    このように、この条文は遺言執行者の報酬を柔軟に調整できることを意味しており、遺言者の意思を尊重することが大切であることを示しています。

    第1021条は、遺言の執行にかかる費用について規定しています。遺言の執行とは、故人の遺志に基づいて財産を分けるための手続きや、遺言書の内容を実現するための行為を指します。この執行には、弁護士や行政書士に依頼する費用、手数料などが含まれます。

    この条文では、その執行費用が誰の負担になるかについて説明しています。基本的には、相続財産がその費用を負担します。つまり、遺言執行に必要な費用は、故人の遺産から支払われることになります。

    ただし、「遺留分を減ずることができない」とあります。遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる財産の割合です。たとえば、子どもがいる場合、その子どもには一定の財産を遺言にかかわらず受け取る権利があります。遺言の執行にかかる費用が遺留分を減らしてしまうことがないように、配慮されています。つまり、相続人が遺留分を失わない範囲で費用が支払われるようになっているわけです。

    この条文は、遺言執行に関する公平性を保ち、相続人の権利を守るための重要な規定です。

    まとめ

    遺言執行者は、遺言の内容を円滑に実現するために重要な役割を果たします。
    • 遺言執行者の指定は必須ではないが、指定することで相続手続きが円滑になる。
    • 子の認知、推定相続人の廃除、一般財団法人の設立の場合は遺言執行者の指定が必須。
    • 遺言執行者は法律に基づく権限を持ち、遺言の執行に必要な手続きを行う。
    • 遺言執行者の任務には、就任通知、相続人の調査、財産目録の作成、遺産分割の実施などが含まれる。

    遺言の確実な実現を望む場合は、専門家(弁護士・行政書士など)を遺言執行者に指定することを検討すると良いでしょう。

    ご相談は専門家へ 遺言の作成や執行に関するご相談は、ぜひ専門家へご相談ください。適切なアドバイスを受けることで、安心して遺言を準備することができます。

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  • 遺言の撤回

    遺言の撤回

    遺言の撤回とは

    遺言書を作成した後も、遺言者の人生は続きます。時間の経過とともに事情が変わり、遺言の内容を見直したくなることもあるでしょう。

    そのような場合、遺言は撤回できるのでしょうか?本記事では、遺言の撤回に関する法律と具体的な手続きを解説します。

    遺言はいつでも撤回できる


    民法第1022条により、遺言者はいつでも遺言を撤回できます。

    民法第1022条は、「遺言をした人は、いつでもその内容を取り消すことができる」ということを定めています。たとえば、ある人が「全財産を長男に相続させる」という遺言をしていたとしても、その後考えが変わり、「次男にも分けたい」と思った場合には、新たに遺言を書き直せば、前の遺言は取り消されたことになります。

    ここで重要なのは、「いつでも」撤回できるという点と、「遺言の方式に従って」撤回する必要があるという点です。つまり、口約束やメモ書きではなく、法律で定められた正式な方法(公正証書遺言や自筆証書遺言など)で撤回しなければ効力がありません。

    また、「全部」でも「一部」でも撤回できるので、「財産の分け方だけ変える」など部分的な修正も可能です。遺言は人生の最終的な意思表示とも言える大切なものですが、状況が変われば考えも変わるものです。ですから、このように柔軟に対応できる仕組みが法律で認められているのです。

    遺言が撤回されたとみなされる場合


    以下の状況では、遺言が明示的に撤回されなくても、撤回されたものとみなされます。

    後の遺言が前の遺言と抵触する場合


    異なる日付の遺言が2通あり、内容が矛盾する場合、後の遺言が前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。

    民法第1023条は、複数の遺言がある場合の「内容の食い違い(抵触)」についてのルールです。たとえば、最初の遺言で「土地を長男に相続させる」と書かれていたのに、その後の遺言で「同じ土地を次男に相続させる」と書かれていた場合、内容が矛盾していますよね。このように前と後の遺言で内容がぶつかる部分があったときは、後から作った遺言の内容が優先され、そのぶつかる部分に限っては前の遺言は「撤回されたもの」として扱います。

    つまり、遺言者がわざわざ「前の遺言を取り消す」と書いていなくても、新しい内容が前と矛盾していれば、自動的に古い部分は無効になるということです。これは、遺言者の最も新しい意思を尊重するためのルールです。なお、矛盾していない部分については前の遺言もそのまま有効です。この条文は、遺言内容を整理して正しく実現するために重要な役割を果たしています。

    遺言者の生前の行為が遺言と抵触する場合


    遺言者が、生前に遺言の内容と矛盾する行為を行った場合、遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条2項)。

    民法第1023条第2項は、「遺言とその後の生前処分などが食い違う場合」についてのルールを定めています。簡単に言うと、「後の行為が優先される」という考え方です。

    たとえば、遺言で「Aという土地を長女に相続させる」と書いていたのに、その後、遺言者が生前にその土地を第三者に売ってしまった場合、土地はもう存在しないので、遺言の内容は実現できません。このように、後の売却(=生前処分)が前の遺言と矛盾しているときは、「売却という行為によって遺言は撤回されたもの」とみなされるのです。

    また、「生前処分」以外にも「その他の法律行為」として、贈与や賃貸借など、法的に意味を持つ行為も含まれます。つまり、遺言者の最新の意思を尊重するため、後の行為が前の遺言とぶつかれば、遺言のその部分は無効になるというルールです。このようにして、遺言の内容と現実の状況にズレが生じた場合でも、スムーズに処理できる仕組みが整えられているのです。

    例えば、遺言書で相続させる予定だった財産を生前に処分してしまった場合です。

    遺言者が故意に遺言書や遺贈財産を破棄した場合(民法第1024条)。

    民法第1024条は、「遺言書や遺贈の目的物(贈ると決めた財産)を故意に壊したり処分した場合は、遺言を取り消したとみなす」というルールです。

    たとえば、ある人が「この家を長男に相続させる」と遺言書に書いていたのに、自分でその遺言書を破り捨てた場合、「もうこの遺言は取りやめたい」という意思があると考えられるため、破棄した部分の遺言は撤回されたものと扱われます。

    また、遺言書は残っていても、遺言者がその家を自分で壊したり売ったりして手放した場合も、「その財産をあげる気はなくなった」と判断されるため、やはりその部分の遺言は撤回されたことになります。

    ここで大事なのは「故意に」破棄したかどうかです。うっかり燃やしてしまったとか、知らずに処分した場合などは撤回とみなされません。遺言者の明確な意思があったかどうかがポイントになるわけです。この条文は、遺言者の最終的な気持ちをきちんと尊重するための仕組みといえます。


    遺言の撤回の効力

    民法第1025条は、一度撤回された遺言は、基本的に元には戻らないというルールを定めています。

    たとえば、ある人が「Aに財産を相続させる」と書いた遺言をした後、「やっぱりやめる」と思って別の内容の遺言を書いたとします。この時点で、最初の遺言は撤回されたことになります。その後に新しい遺言を破棄したり、効力がなくなったとしても、最初の遺言が自動的に復活することはありません。これが「効力を回復しない」という意味です。

    ただし例外もあります。それは、撤回の原因となった行為(たとえば新しい遺言)が、錯誤(まちがい)・詐欺・強迫などでなされた場合です。つまり、「だまされて」新しい遺言を書いたとか、「脅されて」遺言書を破棄したという場合には、元の遺言の効力が回復することもあります。

    この条文の趣旨は、遺言の効力があいまいになるのを防ぎ、遺言者の真意を確実に反映させるためのルールです。安易に「前の遺言が復活する」となると、相続をめぐるトラブルの元になるからです。


    遺言の撤回権の放棄は禁止


    民法第1026条は、「遺言を撤回する権利は、あらかじめ放棄することはできない」というルールを定めています。

    たとえば、ある人が「この遺言は絶対に撤回しません」と文書に書いたり、誰かと約束したとしても、その約束は法律上の効力を持ちません。つまり、遺言者はいつでも自由に考えを変えて、遺言の内容を撤回できるということです。

    これは、遺言が遺言者の最終的な意思を反映するものであるという点から、とても大切な考え方です。人の気持ちや状況は変わるものですから、「一度書いたから変えられない」となってしまうと、真の意思が反映されない遺言になってしまうおそれがあります。

    また、撤回の自由があることで、遺言者が将来のことを考えながら柔軟に対応できるようになります。したがって、「撤回しない」といった取り決めは無効であり、遺言者は生きている限り、何度でも自由に遺言を見直し、撤回することができるというわけです。


    負担付遺贈の遺言の取消し


    民法第1027条は、「負担付遺贈」に関するルールです。負担付遺贈とは、何か義務を果たすことを条件に財産をもらえる遺贈のことです。

    たとえば、遺言で「この家をAさんにあげる。ただし、毎月仏壇にお参りすること」というように、条件(負担)がついている場合があります。ところが、遺贈を受けたAさんがその条件を守らない場合、相続人は「ちゃんとやってください」と一定の期限を設けて催促(催告)することができます。

    それでもなお義務を果たさないときは、相続人は家庭裁判所に申し立てて、その遺贈の取消しを求めることができます。つまり、条件を守らないなら、あげたものも取り消される可能性があるということです。

    この条文の目的は、遺言者の意図(義務を果たしてもらいたいという希望)をしっかり守ることです。同時に、受遺者に対しても、義務を果たさなければ遺贈の権利を失う可能性があるという緊張感を与える規定でもあります。

    まとめ


    遺言はいつでも自由に撤回できます。
    次の場合、遺言は撤回されたものとみなされます。
    後の遺言が前の遺言と抵触する場合
    遺言者の生前の行為が遺言と抵触する場合
    遺言者が故意に遺言書や遺贈財産を破棄した場合
    遺言の撤回を撤回することはできません。
    遺言の撤回権を放棄することはできません。

    遺言は、人生の変化に応じて見直すことが重要です。適切な撤回・修正を行い、常に自身の意思を反映した遺言を残すようにしましょう。

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  • 相続人の範囲

    相続人の範囲


    はじめに


    相続とは、被相続人(亡くなった方)の財産を、一定の親族が引き継ぐ制度です。

    誰が相続人になるのかは、民法によって定められています。本記事では、相続人の範囲や相続権の制限について詳しく解説します。

    相続人の範囲


    法律上、相続人の範囲は明確に定められており、これを「法定相続人」と呼びます。

    法定相続人は、被相続人の配偶者および一定範囲の血族です。

    血族には優先順位があり、上位の相続人がいる場合、下位の者は相続できません。

    被相続人の配偶者


    被相続人の配偶者は、常に相続人となります。血族に相続人がいる場合は、血族とともに遺産を相続します。


    ※配偶者とは、婚姻届を提出した者のみを指し、内縁関係の者は含まれません。

    被相続人の子


    子は、法定相続人として最優先の地位を持ちます。子が複数いる場合は、均等に相続分を分けます。
    養子の相続権
    • 普通養子:実親・養親の双方の相続権を持つ
    • 特別養子:養親のみの相続権を持つ
    非嫡出子(婚姻関係にない男女の子)の相続権
    • 原則として実子と同等の相続権を持つ
    • 父方の財産を相続するには、父親の認知が必要
    胎児の相続権
    • 胎児は生まれたものとみなされ、相続権を持つ
    • ただし、死産の場合は相続権を失う
    代襲相続
    • 子が被相続人より先に死亡している場合、その子(孫)が相続する
    • 孫がいない場合は、ひ孫が相続する(再代襲)

    被相続人の直系尊属(父母・祖父母)


    直系尊属は、第2順位の相続人です。
    • 被相続人に子や孫がいれば、相続権はありません。
    • 親等が近い直系尊属(父母)が優先され、祖父母は次の順位となります。

    被相続人の兄弟姉妹


    兄弟姉妹は第3順位の相続人です。
    • 子や直系尊属がいれば、相続権はありません。
    • 兄弟姉妹が死亡している場合、その子(甥・姪)が代襲相続できます。
    • ただし、甥・姪の子(再代襲)は相続できません。

    相続権を失う場合


    法定相続人であっても、以下の理由で相続権を失うことがあります。
    欠格
    被相続人や他の相続人に危害を加えた場合、相続権を失います。
    具体例
    被相続人や他の相続人を故意に死亡させた者
    被相続人の殺害を知りながら告発・告訴しなかった者
    被相続人の遺言を詐欺・強迫により妨害した者
    被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

    廃除

    被相続人は、次のような場合に相続人を廃除できます。
    • 被相続人への虐待・重大な侮辱を行った場合
    • 著しい非行があった場合

    廃除の手続きは、家庭裁判所への申し立てや遺言で行われます。
    欠格・廃除の代襲相続
    欠格または廃除された相続人がいる場合、その子は代襲相続が認められます。

    相続人が明らかでない場合

    相続人が不明な場合、以下の手続きを経て財産を処分します。
    相続財産は相続財産法人となる
    家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、相続人の捜索を行う
    相続人捜索の公告を2ヶ月間実施
    債権者・受遺者の請求がないか確認
    それでも相続人が現れない場合、特別縁故者(生計を共にしていた者など)に財産が与えられることがある
    さらに相続人が現れない場合、財産は最終的に国庫に帰属

    まとめ


    • 配偶者は常に相続人となる
    • 血族の相続順位は、①子、②直系尊属、③兄弟姉妹
    • 代襲相続が認められる場合がある
    • 欠格・廃除により相続権を失う場合がある
    • 相続人が不明な場合は、管理手続きを経て国庫へ帰属する可能性がある

    相続は、家族や財産の状況によって大きく異なります。スムーズな手続きを進めるために、専門家へ相談することをおすすめします。

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  • 相続開始後に確認すべき保険給付と保険金について

    相続開始後に確認すべき保険給付と保険金について

    はじめに


    相続が開始すると、被相続人の死亡に伴い、さまざまな保険給付や保険金の請求権が発生する場合があります。

    これらの請求権は、一定期間内に手続きを行わないと時効によって消滅してしまうため、忘れずに請求することが重要です。
    被相続人が加入していた保険の種類や保険料の納付状況に応じて、請求できる可能性のある給付には以下のようなものがあります。

    国民健康保険・健康保険関係

    葬祭費


    国民健康保険の被保険者が亡くなった場合、葬儀を執り行った方に対して「葬祭費」が支給されます。

    支給額は自治体によって異なり、請求期限は死亡日の翌日から2年です。


    埋葬料・埋葬費


    健康保険の被保険者が業務外の理由で死亡した場合、生計を維持されていた遺族に「埋葬料」が支給されます。

    該当する遺族がいない場合は、埋葬を行った方に「埋葬費」として実費が支給されます。

    請求期限は死亡日の翌日から2年(埋葬費は埋葬日の翌日から2年)です。

    国民年金関係

    遺族基礎年金


    生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受給可能です。

    受給要件には、被保険者が一定の年金加入期間を満たしていることが含まれます。

    請求期限は死亡日の翌日から5年です。


    寡婦年金


    第1号被保険者として10年以上保険料を納めた夫が死亡した場合、10年以上婚姻関係を継続していた妻が60歳から65歳まで受給可能です。

    請求期限は死亡日の翌日から5年です。


    死亡一時金


    第1号被保険者が死亡し、36か月以上保険料を納付していた場合、遺族に一時金が支給されます。

    請求期限は死亡日の翌日から2年です。

    厚生年金関係

    遺族厚生年金


    厚生年金保険の被保険者が死亡した場合、生計を維持されていた遺族が受給可能です。

    一定の加入期間などの要件を満たす必要があります。

    請求期限は死亡日の翌日から5年です。

    労災保険関係

    遺族補償年金(遺族年金)


    業務災害や通勤災害による死亡の場合、被災労働者の収入により生計を維持されていた遺族が受給できます。

    請求期限は死亡日の翌日から5年です。


    遺族補償年金前払一時金(遺族年金前払一時金)


    遺族補償年金の受給者は、1回に限り年金の前払いを受けることができます。

    請求期限は死亡日の翌日から2年です。


    遺族補償一時金(遺族一時金)


    遺族補償年金の受給者がいない場合、または受給権者全員が受給資格を失った場合に、一時金が支給されます。

    請求期限は死亡日の翌日から5年です。


    葬祭料(葬祭給付)


    労災による死亡の場合、葬祭を執り行った方に給付されます。

    請求期限は死亡日の翌日から2年です。

    生命保険(任意保険)


    被保険者が生命保険に加入していた場合、保険会社から死亡保険金を受け取ることができます。

    請求期限は死亡後3年です。

    まとめ


    相続が発生すると、被相続人の死亡に伴い、さまざまな保険給付を請求できる可能性があります。

    これらの請求権には2~5年の時効があるため、忘れずに手続きを行うことが重要です。


    主な保険給付
    国民健康保険・健康保険(葬祭費、埋葬料、埋葬費)
    国民年金(遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金)
    厚生年金(遺族厚生年金)
    労災保険(遺族補償年金、遺族補償年金前払一時金、遺族補償一時金、葬祭料)
    生命保険(任意保険)


    該当する給付があるかどうかを確認し、早めに申請を行うことをおすすめします。

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