投稿者: 行政書士吉村

  • 家族信託とは?認知症対策に有効な財産管理の新しい方法

    家族信託とは?認知症対策に有効な財産管理の新しい方法

    高齢化が進む中、「親が認知症になったら財産はどうすればいいのか?」というご相談が増えています。

    その解決策として注目されているのが、「家族信託(民事信託)」です。

    本記事では、家族信託の基本的な仕組みや任意後見制度との違い、実際にどのような方に向いているのかを、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

    家族信託(民事信託)とは

    家族信託とは、財産を持っている方(委託者)が、ご家族など信頼できる人(受託者)に財産を託し、その財産を委託者自身または別の人(受益者)の利益のために、契約に基づいて管理・運用・処分してもらう制度です。

    2007年の信託法改正によって制度が整備され、「家族による財産管理」が可能になりました。

    たとえば、「将来、父が認知症になったときに自宅を売却して施設費用に充てたい」というようなケースで、家族信託が非常に有効です。

    あらかじめ契約を結んでおくことで、父の判断能力が低下しても、受託者である子どもが裁判所の関与なしに自宅を売却できるようになります。

    家族信託の3つの登場人物

    • 委託者:財産を託す人(通常はご本人)
    • 受託者:財産を託されて管理・運用する人(多くは家族や親族)
    • 受益者:信託財産から利益を受ける人(委託者本人の場合が多い)

    この3者の契約によって信託が成立し、財産の名義は受託者に移ります。

    ただし、あくまで「管理・運用のための名義変更」であり、受託者の個人財産とは分けて扱われます。

    家族信託の主なメリット

    1. 認知症になっても財産管理を続けられる

    家族信託の最大の特長は、委託者の判断能力が低下した後でも、受託者が契約内容に基づいて財産を管理・処分できる点です。

    任意後見制度では、認知症発症後に家庭裁判所の監督人選任が必要ですが、家族信託ではその必要がありません。

    特に不動産の売却が関係する場合、裁判所の手続きや監督人報酬(年間20万円以上の場合も)を省略できるため、スムーズかつ経済的に対応できます。

    2. 財産運用の自由度が高い

    後見制度では「財産の保存・維持」が原則ですが、信託では契約の範囲内で柔軟な管理・運用が可能です。

    たとえば、信託財産を担保に融資を受けたり、信託口座で証券運用を行うこともできます。

    また、「孫へのお年玉」など、本人以外への支出も契約で定めることができるなど、自由度が高いのが魅力です。

    3. 相続対策としても有効

    信託契約では、委託者の死亡後に残った財産(残余財産)を誰に引き継がせるかをあらかじめ指定できます。

    これは遺言と同様の効果を持ち、場合によっては遺言よりも柔軟な多世代承継が可能です。

    たとえば「父 → 母 → 子」へと順番に財産を引き継がせることも、信託なら契約で設定できます。

    任意後見制度との違い

    項目家族信託任意後見契約
    財産の名義受託者名義に変更される本人名義のまま
    裁判所の関与原則なし判断能力低下後に監督人が関与
    財産の利用目的契約内容により柔軟(本人以外にも使える)本人のためのみ
    投資・運用可能(契約次第)原則として不可
    死後の財産指定残余財産の帰属先を指定できる死亡時に契約終了(遺言が必要)
    コスト監督人報酬なし監督人報酬あり(年間約20万円〜)

    家族信託が向いている方

    • 将来的に不動産を売却して施設入居費用などを確保したい方
    • 認知症対策として、家族に財産管理を任せたい方
    • 信頼できる家族・親族が受託者として関われる方
    • 財産の名義変更に抵抗がない方
    • 相続を複数世代にわたって計画的に行いたい方

    家族信託の注意点・デメリット

    家族信託には大きなメリットがある一方で、以下の点には注意が必要です。

    • 判断能力が必要: 信託契約はあくまで契約行為のため、認知症が進行している場合は利用できません。
    • 受託者選びが重要: 受託者には不動産の処分など強い権限があるため、信頼関係が不可欠です。
    • 名義変更への抵抗: 財産の所有名義が受託者に移ることに心理的抵抗を感じる方も多くいます。
    • 全財産を網羅できない: 年金口座など一部の財産は信託できない場合があり、別途遺言書などの併用が必要です。

    まとめ:家族信託は「判断能力があるうち」に始めることが大切

    家族信託は、将来の認知症や相続に備えるための強力な手段です。

    しかし、信託契約を結ぶには本人の判断能力がある段階での準備が欠かせません。

    また、制度設計には専門知識が必要であり、契約内容を誤ると「信託したのに使えない」といったトラブルになることもあります。

    当事務所では、ご家族の状況や財産構成を丁寧にヒアリングし、最適な家族信託スキームの設計をサポートいたします。 「うちは信託を使うべきか?」「任意後見とどちらが良いのか?」といったご相談もお気軽にお寄せください。

    ▶ 家族信託・後見制度のご相談はこちらから

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  • 埼玉県で産業廃棄物収集運搬業許可を取得するための完全ガイド

    埼玉県で産業廃棄物収集運搬業許可を取得するための完全ガイド

    産業廃棄物の収集・運搬を業として行うためには、「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。 本記事では、埼玉県で新規・更新の許可申請を行う際に押さえるべきポイントを、行政書士がわかりやすく解説します。 これから申請を検討している方、または更新時期を迎える事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

    1. 許可を取得するための主な要件

    産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるためには、以下の要件を満たすことが求められます。

    (1)経理的基礎の確保(経済力)

    産業廃棄物を適切に取り扱い、事業を安定して継続できるだけの経済的基盤が必要です。 判断基準としては以下の点が重視されます。

    • 利益が計上できているか
    • 債務超過になっていないか
    • 法人税や所得税を適切に納付しているか

    もし基準を満たさない場合でも、財務状況を示す追加資料の提出で審査されることもあります。 資金繰りに不安がある場合は、早めに専門家に相談しておくと安心です。

    (2)事業計画の整備

    申請時には、次の内容を含む事業計画書の提出が必要です。

    • 産業廃棄物の品目、運搬量、形状
    • 排出場所・処分場・運搬経路
    • 使用車両・容器・飛散防止措置などの運搬方法
    • 施設や人員などの業務遂行体制

    (3)知識・技能の取得

    新規で許可を申請する場合、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会(収集・運搬課程 新規)を受講し、修了証を取得する必要があります。 法人の場合は、役員(監査役を除く)や政令で定める使用人、個人の場合は申請者本人または常勤の使用人が対象です。

    2. 埼玉県での申請手続き(積替え保管を除く)

    (1)申請は予約制

    埼玉県では、窓口提出・郵送提出のいずれも予約制です。 「埼玉県産業廃棄物収集運搬業許可申請予約システム」から予約を行い、書類を提出します。

    (2)申請期間と予約

    予約カレンダーは4か月先まで公開され、4か月前から予約可能です。 更新申請の場合は、許可期限の3か月前から申請できます。

    (3)提出方法と手数料

    書類は正本(提出用)と副本(控え)の2部を作成し、左側2か所をひもとじで提出します。 郵送申請も可能で、以下の流れになります。

    1. 予約
    2. 電子申請・届出サービスで申請書第1面を作成
    3. 書類の郵送
    4. クレジットカードまたはペイジーによる手数料納付

    手数料は電子申請・届出サービスで納付します。 たとえば、更新許可は73,000円変更許可は71,000円です。 両方を同時に行う場合、それぞれの手数料が必要になります。

    (4)標準処理期間

    申請の収受から許可・不許可の決定までの標準処理期間は43営業日です(優良認定を含む場合は48営業日)。 補正対応にかかる期間は処理期間に含まれませんので、書類の正確な準備が重要です。

    3. 運搬施設・環境保全措置に関する要件

    (1)運搬車両と容器

    車両番号が確認できる写真、車体表示(「産業廃棄物収集運搬車」「会社名」「固有番号」)が明確な写真の添付が必要です。

    (2)特定廃棄物の運搬措置

    • 感染性廃棄物:保冷機能付き容器を使用し、証明書類を添付
    • 石綿含有廃棄物:フレコンバッグに封入し、他の廃棄物と混合しないよう運搬
    • 水銀使用製品廃棄物:専用容器や緩衝材を使用し、破砕しないように区分運搬

    (3)積替え保管施設での環境保全措置

    積替え保管施設では、次のような環境対策を講じる必要があります。

    • アイドリングストップによる大気汚染防止
    • 屋内設置・排水路清掃による水質汚濁防止
    • 建屋内作業による騒音・振動対策
    • 専用容器・区画表示による飛散・混合防止

    4. 提出書類に関する注意点

    • 登記事項証明書や地図などの添付書類は、申請日から3か月以内に発行されたものを使用。
    • 個人商店の場合でも、屋号ではなく個人名義で申請。
    • 更新・変更・優良認定の場合、一部書類の省略が可能(省略理由一覧の添付が必要)。
    • 法人は直近3期分の決算書・納税証明書・残高証明などを提出。
    • 債務超過の場合は、中小企業診断士等の「財務診断書」や「今後5年間の経営計画書」の提出が求められることも。

    5. 行政書士に依頼するメリット

    産業廃棄物収集運搬業許可の申請は、提出書類が多く、要件も細かいため、初めての方にとっては非常に複雑です。 行政書士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

    • 複雑な書類作成・審査対応をスムーズに代行
    • 複数自治体への同時申請にも対応
    • 積替え保管を伴う許可など、特殊ケースにも柔軟に対応
    • 法人としての信頼あるサポート体制

    申請スケジュールに余裕をもって準備することが、許可取得の第一歩です。 当事務所では、許可申請から更新・変更までトータルでサポートいたします。 お気軽にご相談ください。


    【対応地域】埼玉県・東京都・群馬県・栃木県・千葉県ほか

    【対応業務】産業廃棄物収集運搬業許可/積替え保管許可/優良認定申請/変更届など

    産業廃棄物許可申請のご相談は、行政書士へ。
    専門的な知識と経験で、確実な許可取得をサポートいたします。

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  • 成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?概要と種類をわかりやすく解説

    成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方を、 法律的に保護・支援する仕組みです。
    判断能力が低下すると、財産管理や契約手続きが困難となり、不利益を被るおそれがあります。
    ここでは、成年後見制度の概要・種類・利用時の注意点について、わかりやすく解説します。

    1. 成年後見制度の目的と必要性

    判断能力が低下すると、本人の意思確認ができなくなり、家族であっても 預金の引き出しや不動産の売却、入院や施設入所の契約などができません。
    成年後見制度を利用することで、家庭裁判所の監督のもと、 財産や生活を適切に守ることができます。

    2. 成年後見制度の種類

    成年後見制度には大きく分けて、次の二種類があります。

    • 法定後見制度:判断能力が低下した後に利用。家庭裁判所が後見人を選任。
    • 任意後見制度:判断能力があるうちに契約をしておき、将来に備える仕組み。
    制度開始時期後見人の選任権限の範囲取消権
    法定後見判断能力が低下した後家庭裁判所広範囲にわたるあり
    任意後見判断能力があるうち本人が契約(公正証書)契約内容の範囲内なし

    3. 法定後見制度の3つの類型

    法定後見は、本人の判断能力の程度によって以下の3類型に分かれます。

    • 後見:判断能力がほとんどない場合。成年後見人が包括的に代理。
    • 保佐:判断能力が著しく不十分な場合。重要な行為について援助。
    • 補助:判断能力が一部不十分な場合。特定の行為に限り援助。

    4. 後見人の職務とできないこと

    主な職務

    • 財産管理(預貯金、不動産、税金支払いなど)
    • 身上監護(介護サービス利用契約、施設入退所契約など)
    • 家庭裁判所への定期報告

    制限される行為

    • 医療行為への同意(手術や延命治療の可否など)
    • 養子縁組や遺言作成などの身分行為
    • 本人の利益にならない贈与や相続税対策

    5. 成年後見制度の費用

    • 申立費用: 約2万円(申立手数料・郵券代など)。専門家依頼時は別途10万〜30万円程度。
    • 後見人の報酬: 専門職後見人の場合、月2万〜6万円程度(本人の財産から支払う)。

    6. 家族が後見人になる場合の注意点

    • 家庭裁判所の判断で、弁護士など専門職が選任されることが多い。
    • 家族が後見人になると費用は抑えられるが、事務負担が大きい。
    • 一度選任されると辞任は難しく、他の親族の同意も重要。

    7. 成年後見制度以外の選択肢:家族信託

    本人に判断能力があるうちに利用できる制度として「家族信託」があります。
    信頼できる家族に財産管理を託しておくことで、柔軟な資産管理や相続対策が可能です。
    ただし、身上監護(介護や医療契約)はできないため、 任意後見制度と併用して使われることもあります。

    まとめ

    成年後見制度は、判断能力が低下した本人を保護する大切な仕組みですが、 利用にはメリットとデメリットがあります。
    また、法定後見・任意後見・家族信託といった制度はそれぞれ特徴があり、 状況に応じた選択が重要です。
    実際に制度を利用する際は、家庭裁判所の審判や多くの書類準備が必要となるため、 制度の仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。

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  • 遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    非課税とするための条件と手続き

    親の遺産を慈善団体に寄付したいと考えたとき、相続税はどのように扱われるのか──本記事では国税庁の制度を基に「非課税となる具体条件」と「申告手続きの実務ポイント」を整理して解説します。

    結論(要点まとめ)

    遺産寄付の相続税の取り扱いは寄付の方法によって異なります。主に次の2つのケースに分かれます。

    • 遺言で直接寄付(遺贈)する場合:相続人を経由せずに寄付されるため、原則として相続税はかかりません。
    • 相続人が一度相続した後に寄付する場合:原則課税。ただし国税庁の「相続財産を寄附した場合の非課税制度」を満たせば非課税になります。

    1. 遺言に基づく直接寄付(遺贈)のポイント

    遺言で「団体へ遺贈する」旨がある場合、その財産は相続人を経由せずに寄付先へ渡ります。この場合、相続人が財産を取得したとはみなされないため、相続税は基本的に発生しません。

    注意点:譲渡所得税の可能性

    ただし、不動産や上場株式などを遺贈した場合、被相続人の死亡時に譲渡したとみなされるケースがあり、譲渡所得税の問題が生じる可能性があります。事前に税務の専門家に確認してください。

    2. 相続人が受け取ってから寄付する場合(非課税にする4要件)

    相続人が一度財産を取得してから寄付する場合でも、次の要件をすべて満たせば相続税の非課税特例が適用されます。

    非課税特例の4つの要件

    1. 寄付財産が相続や遺贈で取得した「現物」であること
      (例:相続で取得した現金・預金・不動産・株式等そのもの。取得後に売却して得た現金は不可。)
    2. 相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに寄付が完了していること
      (期限を過ぎると特例は適用されません。)
    3. 寄付先が国・地方公共団体・公益法人・認定NPOなど適格な公益団体であること
      (任意団体や一般企業は対象外。寄付先の適格性は事前確認が必須。)
    4. 寄付を証明する書類(受領証や寄付契約書等)を申告書に添付すること
      (申告に必要な明細書の記載・添付がないと適用されません。)

    実務上のポイント

    • 寄付前に寄付先の「公益性(適格性)」を書面で確認しておくと安全です。
    • 相続税申告を税理士に依頼する場合でも、寄付の証明書類は相続人が確実に保管しておきましょう。
    • 株式や土地などの評価方法や時価の算定が問題となることがあります。評価額は相続税申告で重要です。

    3. 国税庁の制度(No.4141)に基づく適用範囲

    国税庁が示す特例では、主に次の寄付パターンが対象となります。

    寄付先の主な分類

    • 国・地方公共団体
    • 特定の公益法人(例:公益社団法人・公益財団法人、学校法人、独立行政法人など)
    • 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)
    • 特定の公益信託(信託会社を通じて公益信託に組み入れる場合)

    適用除外の例

    以下に該当すると特例の適用が取り消されることがあります。

    • 寄付先が寄付から2年以内に公益性を失った場合
    • 寄付を通じて特定の相続人が不当に利益を受けるなど、不当な税負担の減少が認められる場合

    4. 手続きと必要書類(チェックリスト)

    非課税特例の適用を受けるために必要な手続きと提出書類は次のとおりです。

    必須書類(主なもの)

    • 相続税申告書(特例適用の旨を記載)
    • 寄附した財産の明細書(相続税申告書第14表)
    • 寄付先からの受領証または寄付契約書
    • 寄付先が公益法人等であることを証明する書類(必要に応じて所轄庁の証明)

    手続きの流れ(簡易)

    1. 寄付先の適格性を事前に確認する(書面で保存)
    2. 寄付(相続税申告期限内に完了)
    3. 必要書類を揃えて相続税申告書に添付して提出
    4. 税務署の確認を経て非課税が適用される

    5. よくある質問(FAQ)

    Q1:遺言で寄付するとき、相続人の手続きは必要ですか?

    A:遺言で直接寄付(遺贈)される場合、寄付先へ財産が移転するため、相続人がその財産を受け取ったとはみなされません。ただし相続放棄や遺言の執行など、手続き上の対応が必要になる場合があります。

    Q2:寄付先の「公益性」はどこで確認できますか?

    A:寄付先の法人格や認定状況は、所轄庁の公開情報や寄付先からの公式な証明書で確認します。認定NPOかどうか、公益法人の認定有無などを文書で取得してください。

    Q3:相続開始後に売却して得た現金を寄付したらダメですか?

    A:原則として、相続で取得した財産を現物のまま寄付することが要件です。相続財産を売却して得た現金は非課税特例の対象にならないため注意が必要です。

    まとめとご案内

    遺産寄付における相続税の取り扱いは、寄付の方法・寄付先・申告期限・証明書類の有無によって結果が大きく異なります。正確に非課税を適用するためには、寄付先の適格性の確認・申告期限の厳守・必要書類の整備が不可欠です。実務上の判断や税務評価に関する個別のご相談は、税理士や行政書士・弁護士などの専門家へご相談ください。

    (本稿は国税庁資料に基づく一般的な解説であり、事例により取扱いが異なる場合があります。)

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  • 公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言でも無効?意思能力と対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?無効とされる理由と対策

    遺言書は、故人の意思を家族に伝える大切な手段です。特に公正証書遺言は「公証人が関与するため安全」と思われがちですが、実際には無効とされるケースが裁判例で数多く存在します。
    本記事では、公正証書遺言が無効になる理由と、無効を防ぐための対策をわかりやすく解説します。

    公正証書遺言とは?

    遺言書には大きく分けて2種類があります。

    • 自筆証書遺言:本人が自ら全文を書いて作成する。費用がかからない反面、形式不備で無効になるリスクが高い。
    • 公正証書遺言:公証人が関与して作成する。形式面では安全性が高いとされる。

    しかし、公正証書遺言でも「必ず有効」とは限りません。

    公正証書遺言が無効とされる主な理由

    1. 遺言者本人の判断能力の欠如

    民法第963条は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めています。
    例えば次のような場合には無効と判断される可能性があります。

    • 認知症と診断されていた。
    • 介護記録や証言から「正常な判断ができなかった」と認められた。
    • 遺言内容が不自然で、本人の真意ではないと疑われる。

    2. 公証人による確認不足

    公証人は法律の専門家ですが、確認が十分でない場合もあります。

    • 遺言書を読み上げるだけで、本人の理解を確認していない。
    • 家族や専門家が原案を作成し、本人は署名するだけ。
    • 本人確認が印鑑証明だけで済まされ、意思能力の確認が不十分。

    遺言能力とは?

    遺言能力とは「有効に遺言を行える能力」のことです。本人が遺言の内容を理解し、その結果を予測できる力が求められます。

    関連条文内容
    民法961条15歳に達した者は遺言できる
    民法963条遺言時に能力を有しなければならない

    判断基準としては、医師の診断、認知機能テスト、遺言内容の合理性などが重視されます。

    無効を防ぐための生前対策

    1. 医師の診断書を取得

    遺言作成直後に「意思能力あり」とする診断書を残しておくと有効性を証明しやすくなります。

    2. 遺言能力の証拠を残す

    • 認知機能テストの結果を保存
    • 作成時の様子を動画記録
    • 弁護士など専門家の立会いを依頼

    3. 遺言執行者の指定

    公正証書遺言を作成する際、信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。

    死後に無効が疑われた場合

    相続人同士で争いになった場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことになります。

    • 裁判ではカルテや介護記録などの客観的証拠が重視される。
    • 第一審だけで1~2年かかることもある。
    • 無効と判断されれば遺産分割協議が必要になる。

    まとめ

    • 公正証書遺言でも無効になることがある。
    • 最大のポイントは「遺言能力(意思能力)」の有無。
    • 診断書や動画記録など、客観的な証拠を残すことが重要。

    相続争いの多くは「一般家庭」で起きています。大切な家族のために、早めに法的に有効な遺言を準備しておくことがトラブル防止につながります。

    ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 【執行・財産開示手続の改正】養育費回収がワンストップ化!法改正のポイントを徹底解説

    【執行・財産開示手続の改正】養育費回収がワンストップ化!法改正のポイントを徹底解説

    1.改正の背景と目的

    従来、養育費などの扶養義務に基づく債権の回収には、複数の申立てが必要で、債権者の負担が大きいという課題がありました。債務者の財産情報も取得しにくく、強制執行に至るまでのプロセスが煩雑でした。

    今回の改正では、手続のワンストップ化収入情報の強制的な開示制度の導入が実現され、養育費の履行確保がより現実的になりました。

    2.改正のポイント

    【1】民事執行法 第167条の17(扶養義務等に係る債権の特例)

    ■ 改正内容
    養育費等の債権について、財産開示手続の申立てと同時に、債権差押命令の申立てがされたものとみなされる制度が創設されました。

    ■ 改正前との違い
    これまでは、以下の手続を別々に申し立てる必要がありました:

    • ① 財産開示手続申立て
    • ② 財産調査(住民票等取得)
    • ③ 債権差押命令申立て

    改正により、これらが一括で同時に処理されるようになり、債権者の負担が軽減されます。

    ■ 具体例
    養育費の支払いを拒否している債務者に対し、財産開示手続を申し立てると、給与債権への差押命令が自動的に行われ、住民票取得命令も裁判所の職権で実施されます。

    【2】人事訴訟法 第34条の3(収入情報等の開示命令)

    ■ 改正内容
    家庭裁判所が、養育費分担請求の場面で、当事者に収入・資産の状況の開示を命じることが可能になりました。

    ■ 改正前との違い
    これまでは任意協力に頼るしかなく、正確な情報が得られないこともありましたが、今後は法的拘束力を持って開示を命じることができます。

    ■ 制裁措置
    虚偽の情報を提出した場合や正当な理由なく拒否した場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

    【3】家事事件手続法 第152条の2(収入情報等の開示命令)

    ■ 適用対象の審判

    • ・夫婦間の協力扶助
    • ・婚姻費用分担
    • ・子の監護費用
    • ・財産分与

    上記の審判手続でも収入情報の開示命令が適用され、生活費や財産分与に関する法的支援が強化されました。

    3.改正の実務的意義

    • ● 手続がワンストップ化され、養育費回収までのスピードが大幅に向上
    • ● 相手方の財産・収入状況が法的に把握しやすくなり、公平な養育費算定が可能に
    • ● 開示拒否や虚偽申告への制裁により、法的実効性が強化

    4.まとめ

    本改正は、養育費や婚姻費用などの支払いを確保し、子どもの生活を守るために重要な一歩です。

  • 経審評価UP!資本性借入金の活用方法

    経審評価UP!資本性借入金の活用方法

    いつもお世話になっております。

    行政書士吉村事務所の吉村です。


    建設会社の皆様にとって、公共工事の受注に欠かせないのが「経営事項審査(経審)」ですよね。その経審の評価を左右する重要な要素の一つが「自己資本」です。

    この度、国土交通省より、負債として計上されている借入金の一部を「自己資本」とみなすことができる新たな制度、「資本性借入金」に関する事務取扱いが発表されました。

    今回はこの制度の内容と、経審への具体的な影響を分かりやすく解説いたします。

    資本性借入金とは?

    資本性借入金とは、一定の条件を満たした借入金を「自己資本」として扱うことができる制度です。

    2025年7月1日以降の経審申請から適用され、対象は審査基準日が2025年3月31日以降の決算、かつ単独決算で申請する企業に限られます。

    経審での評価向上ポイント

    自己資本が増加してP点アップ

    建設会社が公共工事を受注するためには、経審での評価点(P点)が重要です。自己資本は経営安定性を示す重要指標で、以下の項目に影響します。

    • 負債回転期間:負債減少により改善
    • 自己資本対固定資産比率:自己資本増により改善
    • 自己資本比率:自己資本増により改善
    • X₂₁自己資本:評価点向上

    これにより、経営状況分析のY点が向上し、結果として総合評定値(P点)アップが期待できます。

    資本性借入金と認められる要件

    以下のすべての要件を満たす借入金が対象となります:

    • 金融機関(政府系含む)からの借入であること
      例:日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」など
    • 償還期間が5年超
    • 期限一括償還(または同等の据置期間)
    • 配当可能利益に応じた金利(業績連動型)
    • 法的破綻時の劣後性の確保

    注意点: 残存期間が5年未満になると、自己資本として認められる金額は毎年20%ずつ逓減します。

    経審申請における具体的手続き

    ① 証明書の取得

    公認会計士・税理士・建設業経理士1級などの資格者から「資本性借入金」の証明書を取得(国土交通省様式)。

    ② 経営状況分析時の提出

    • 経営状況分析申請書に「資本性借入金 ○○○円」と記載
    • 証明書の写し・契約書の写しを添付
    • 証明者が建設業経理士の場合は合格証・修了証も添付

    ③ 経営規模等評価時の提出

    • 「自己資本額」の欄に資本性借入金を加算した額を記載
    • 再度、証明書の写しを添付

    まとめ:活用すれば経審に有利!

    この「資本性借入金」制度は、経審における自己資本評価の大幅な改善につながる可能性があります。


    まずは、貴社の借入契約がこの要件に該当するかを確認してみてください。

    ご不明な点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。貴社の経審評価向上を全力でサポートいたします。

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  • (民法改正)法定養育費制度の創設を解説

    (民法改正)法定養育費制度の創設を解説

    2024年5月の民法改正により、「法定養育費制度」が新たに導入されました。

    この制度は、離婚時に養育費の取り決めがなくても、最低限の養育費を請求できる仕組みであり、子どもの貧困を防ぐ重要な改革です。

    本記事では、改正前後の違いとポイントをわかりやすく解説します。

    1. 改正前の制度とその課題

    従来の民法では、離婚の際に父母が協議して養育費の額を定めることが原則でした(民法766条)。

    協議が行われなかった場合、親権者が相手方に養育費を請求するのは容易ではありませんでした。

    ■主な課題

    • 養育費について協議せずに離婚するケースが多い
    • 請求するには家庭裁判所への申立てが必要
    • 結果的に養育費の不払いが多発

    このように、協議がないと養育費の請求が難しい制度だったのです。

    2. 改正後の制度:法定養育費制度の導入

    2024年の改正により、新たに民法766条の3が創設され、離婚時に養育費の取り決めがなくても、子どもを監護する親が相手方に対して法定の最低額を請求できるようになりました。

    ■改正のポイント

    • 養育費の取り決めがなくても自動的に請求が可能
    • 金額は法務省令による基準に基づき算出
    • 支払義務者は生活困難等を理由に減免を申立可能
    • 請求期限は協議成立・審判確定・子の成年のいずれか早い時点まで

    【具体例】

    養育費の協議が一切ないまま協議離婚した場合でも、離婚の翌月から法定の標準額(例:月3万円)を自動的に請求できます。

    3. 支払義務者への救済措置

    支払う側が生活保護を受けている場合や極度の低所得者である場合には、不公平にならないよう以下の救済措置が認められています。

    • 「支払能力がない」ことなどを証明すれば支払免除可
    • 家庭裁判所による柔軟な判断(免除・猶予など)

    4. 改正の背景と意義

    日本では離婚後に養育費を受け取っていない家庭が多く、子どもの貧困の大きな要因になっていました。

    今回の改正は、養育費を「当然の権利」と位置づけ、子どもの経済的安定を図るものです。

    なお、従来から民法881条において親の扶養義務は規定されており、今回の法改正はこれを具体化したものと言えます。

    5. 改正前と改正後の比較まとめ

    比較項目改正前改正後
    養育費の請求協議や裁判がないと困難協議なしでも自動で請求可
    支払額個別に協議・裁判で決定法務省令の標準額を適用
    支払免除特に規定なし生活困難等で免除申立可
    手続き負担親権者側の申立てが必要離婚時から当然に請求可

    6. まとめ

    今回の法改正により、養育費の不払い問題に対する大きな前進が実現しました。

    親権者は離婚後すぐに養育費を請求できるようになり、子どもの経済的な権利がより強く保護されます。

    離婚を考える方や、すでに離婚された方も、この制度の正しい理解が求められます。

    今後、法務省令により具体的な金額が発表された際には、改めて詳細な情報をお届けします。

    ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 【解説】養育費に優先権が認められる民法改正をわかりやすく解説

    【解説】養育費に優先権が認められる民法改正をわかりやすく解説

    ~養育費債権がより強く、確実に回収できるように~

    令和6年(2024年)の民法改正により、養育費債権に「先取特権」が付与されました。これにより、債務名義がなくても差押えが可能となる、大きな実務上の変化が生じています。

    本記事では、改正前と改正後の違いを条文をベースに具体的に解説します。

    1.改正前の状況:養育費の回収は困難だった

    これまで、養育費の支払いが滞った場合でも、相手の財産を差し押さえるには、判決・調停・公正証書などの債務名義が必要でした。

    家庭裁判所での手続きを経なければ強制執行できず、その間に相手が財産を移すリスクも高く、回収は困難でした。

    また、「先取特権」は民法上存在していましたが、「子の監護の費用」として認められるケースは限定的で、実務上ほとんど使われていませんでした。

    2.改正内容:養育費債権に一般の先取特権を付与

    今回の改正で、民法第306条に新たに「子の監護の費用(養育費)」が明記されました。

    【改正後:民法第306条 抜粋】

    次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。

    • 共益の費用
    • 雇用関係
    • 子の監護の費用(新設)
    • 葬式の費用
    • 日用品の供給

    この改正により、養育費債権は総財産に対して優先的に差押えが可能となり、しかも債務名義が不要という大きな利点が生まれました。

    たとえば、協議離婚で養育費を取り決めたが公正証書を作っていない場合でも、先取特権により差押えが可能になります。

    3.より具体的なルール:民法第308条の2の新設

    今回の改正では、先取特権の対象となる養育費債権の根拠条文や差押え額の算定方法も明文化されました。

    【改正後:民法第308条の2 概要】

    以下の義務に基づく養育費に先取特権が認められます:

    • 第752条(夫婦の協力義務)
    • 第760条(婚姻費用の分担)
    • 第766条、第766条の3(離婚後の監護義務)
    • 第877条~第880条(扶養義務)

    また、差押え可能な金額は「子の監護に要する標準的な費用」とされ、法務省令で具体的な金額が定められることになります。

    このルールにより、過剰な差押えを防ぎつつ、必要最低限の養育費は迅速に回収可能となります。

    4.改正のポイントまとめ

    項目改正前改正後
    差押えに必要な手続き債務名義が必要債務名義なしでも差押え可能
    法的根拠明記なし民法306条に明記
    優先順位なし総財産に対して優先権あり
    計算方法個別判断法務省令で標準額を算定

    5.まとめ:養育費確保の大きな一歩

    今回の改正は、養育費の未払い問題に大きな解決策をもたらすものです。

    これまで泣き寝入りするしかなかった多くのケースで、債務名義がなくても差押えができることになり、養育費の支払い率向上が期待されています。

    養育費を受け取る側は、この「先取特権」が利用できることを知っておくことが非常に重要です。

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  • 離婚後の親権と監護の違いとは?改正民法824の3のポイント

    離婚後の親権と監護の違いとは?改正民法824の3のポイント

    民法の改正案が審議され、離婚後の子どもの養育に関するルールが大きく見直されようとしています。

    特に注目されているのが、「親権」と「監護」の違い、そして共同親権の導入です。

    この記事では、改正内容をわかりやすく解説し、皆さまの疑問にお答えします。

    1. 親権と監護の違いとは?

    親権

    • 子の養育全般に関する包括的な権利義務
    • 子の財産管理や代理権も含む
    • 改正案では離婚後も共同親権の選択が可能に

    監護

    • 子の生活・教育などの身上監護に関する具体的権限
    • 改正民法第824条の3により明確化
    • 居所の指定や教育方針などは監護者が単独で判断可能
    • 親権者でも監護者でなければ監護行為に干渉不可
    • 監護者には財産管理権・代理権はない

    2. 共同親権なのに監護者が一方に?

    共同親権を選んだ場合でも、監護者は一方に限定されることがあります。

    これは主に「子の利益」を最優先に考慮した結果で、以下のような事情が背景にあります。

    • 父母間の将来の紛争リスクを回避する必要がある場合
    • 進学先や居所などの決定での対立を予防
    • 国際結婚に限らず、日本国内の離婚でも同様の判断がされうる

    3. 監護者の指定は必須ではない理由

    改正案では、監護者の指定は必須ではありません

    離婚後も父母が責任を持って養育に関わるという基本理念に基づいており、家庭の事情に応じて柔軟な運用が求められています。

    4. 子の利益を最優先にした法改正

    今回の改正案の中心は「子の利益の確保」です。多様な家族形態や価値観に対応し、できる限り父母が協力して子育てを行うことが、子どもの最善の利益に資するとの考え方が示されています。

    5. 親権行使における特定の事項と日常の行為

    特定の事項(改正民法824条の2第3項)

    • 進学先など、意見対立の可能性がある重要事項
    • 協議不成立時は家庭裁判所が判断

    日常の行為(改正民法824条の2第2項)

    • 日常生活での監護行為
    • 短期の旅行などは通常、日常の行為に含まれる

    6. DV・虐待と親権の関係

    • 葛藤があるからといって直ちに単独親権になるわけではない
    • 裁判所は調停等を通じて両親の協力を促す
    • DVや虐待がなくても、状況により単独親権の判断はあり得る
    • 「おそれ」の判断は客観的証拠に限らず総合的に考慮

    7. 改正後の運用と裁判所の役割

    監護者と親権者の違いやDVの判断基準、特定の事項の定義など、具体的な運用に不透明さが残っているとの指摘があります。

    裁判所の判断に頼る場面も多くなると考えられ、今後の実務の展開が注目されます。

    まとめ:離婚後の親権・監護は慎重に判断を

    今回の民法改正案は、子の利益を第一に、多様な家族に対応できる制度設計を目指しています。

    共同親権や監護権の明確化は、離婚後も親が連携して子の養育に関わる道を開くものです。

    離婚後の親権や監護でお悩みの方は、ご相談ください。個別の事情に応じたアドバイスが重要です。

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