投稿者: 行政書士吉村

  • 【令和6年民法改正】家族法の重要ポイントをわかりやすく解説

    【令和6年民法改正】家族法の重要ポイントをわかりやすく解説

    令和6年5月に成立した「民法等の一部を改正する法律」は、親権、離婚、養育費、親子交流といった家族法に大きな影響を与える重要な改正です。

    このページでは、民法改正のポイントを5つに分けてわかりやすく解説します。

    なお、次回以降は各ポイントをさらに詳しくご説明します。

    1. 親の責務が法律で明確に規定されました

    改正民法では、父母が子に対して負う責任が明確に定められました。

    父母は、婚姻の有無にかかわらず、子どもの心身の健やかな成長を図るため、その人格を尊重し、協力して養育することが義務付けられています。

    この改正は、親子関係において子どもの権利を重視し、親同士が協力する重要性を法的に裏付けたものです。

    2. 親権制度の見直しと共同親権の導入

    これまで離婚後は、一方の親のみが親権を持つことが原則でしたが、今回の改正で父母双方が親権を持つ「共同親権」が認められました。

    単独親権となる場合

    • 父母間で協議が整わない場合
    • 虐待や家庭内暴力があり、子の利益が害されるおそれがある場合

    親権変更の際には、協議の経過も重視され、不適切な合意を防ぐ制度も整えられました。

    3. 養育費支払い確保のための法整備

    養育費の不払いを防ぐため、今回の改正で養育費債権に優先的な差押権(先取特権)が認められ、債務名義がなくても差押えが可能になりました。

    また、父母間の協議が整わなくても養育費を請求できる新たな法制度も創設され、養育費の履行確保が実質的に強化されています。

    4. 安全・安心な親子交流の支援

    離婚後も子どもと別居している親が交流できるよう、次の仕組みが整えられました。

    親子交流の新たなルール

    • 調停・審判の前に試験的に親子交流を行うことが可能に
    • 婚姻中の別居時にも親子交流ルールを適用

    これにより、子どもが安心して親と交流を続けることができる環境が法的に支援されました。

    5. その他の家族法関連の改正点

    今回の改正では、次のような家族法全体に関わる見直しも行われました。

    • 養子縁組後の親権者に関する規定を明確化
    • 離婚時の財産分与請求期間が2年から5年に延長
    • 財産分与の考慮要素の具体化
    • 祖父母など親族と子どもの交流に関する新しい規定を整備

    これらの改正は、現代の家族の多様な形に対応した柔軟な法制度を目指しています。

    【まとめ】令和6年民法改正は子ども中心の法改正

    今回の民法改正は、親子関係のルールを現代社会に合わせて大きく見直したものです。

    親の責務の明確化、共同親権の導入、養育費履行の強化、親子交流支援など、すべてにおいて子どもの利益を第一に考えた内容となっています。

    次回のブログでは、「親の責務等に関する規律」について、さらに詳しく解説します。ぜひご覧ください。

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  • 包括遺贈と特定遺贈の違い|判例で解説

    包括遺贈と特定遺贈の違い|判例で解説

    東京地裁平成10年6月26日判決の概要

    この事件では、遺言者が亡くなる前に遺言を残し、妹には特定の不動産を、法人Bにはそれ以外の不動産や書籍・手紙などを贈与する旨を記していました。

    しかし、税務署は法人Bへの遺贈を包括遺贈と判断し、所得税約1億2,000万円の支払い義務を課しました。

    これに対し、法人Bは「特定遺贈である」と主張し裁判を起こしました。

    用語の解説|包括遺贈と特定遺贈

    遺贈とは?

    遺言によって財産を特定の人に与えることを「遺贈」といいます。

    包括遺贈とは?

    民法964条に定められており、「財産の全部」や「〇分の〇」といった割合で遺贈する形式です。相続人に近い立場となり、借金や税金などの義務も引き継ぎます。

    特定遺贈とは?

    「この不動産」や「この預金」など、特定の財産を指定して渡す遺贈です。原則として義務(負債や税金)は引き継ぎません。

    裁判所の判断|包括遺贈と認定された理由

    裁判所は、法人Bへの遺贈を包括遺贈と判断しました。

    遺言内容が「妹に特定の不動産、それ以外すべてを法人Bに渡す」としていたため、包括的な贈与と見なされました。

    学習館の書籍や手紙なども含まれており、遺言者の強い意志が表れていたことも判断材料とされました。

    重要な判例ポイント3つ

    ① 割合が書かれていなくても包括遺贈にあたる

    この判決では、「割合」が書かれていなくても、遺贈の内容が包括的であれば包括遺贈と認められるとしています。

    ② 「すべてを渡す」という文言に注意

    特定の財産を除いた「その他すべて」を渡す表現は、包括遺贈と解釈される可能性があります。特に、動産・不動産を広く含む場合は要注意です。

    ③ 包括遺贈には税金などの義務も伴う

    包括遺贈と判断されると、受遺者(ここでは法人B)は遺言者の所得税などの支払い義務も引き継ぐことになります。

    まとめ|包括遺贈と特定遺贈の違いと実務への影響

    観点内容
    遺贈の種類包括遺贈と特定遺贈に分かれる
    包括遺贈財産全体や割合で承継(義務含む)
    特定遺贈特定の財産のみ(原則、義務なし)
    本件の争点法人Bへの遺贈がどちらか
    判決の考え方割合の記載がなくても包括的なら包括遺贈
    実務上の影響表現次第で大きく税負担が変わる

    おわりに|実務上も重要な判例

    本判例は、遺言の表現方法によって受遺者の負担が大きく変わるという、実務上非常に重要な示唆を含んでいます。包括遺贈と特定遺贈の区別を学ぶうえで、非常に有用な事例といえるでしょう。

    東京地判平成10年6月26日(判時1668号49頁)

  • 包括遺贈と特定遺贈の違いと裁判例解説

    包括遺贈と特定遺贈の違いと裁判例解説

    初学者にも理解しやすいように、「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い、そしてそれが争われた裁判例について、できるだけ平易な言葉で丁寧に解説していきます。

    遺贈とは?

    「遺贈」とは、亡くなった人(被相続人)が遺言によって、自分の財産を誰かに与えることをいいます。

    遺贈には、大きく分けて以下の2種類があります:

    包括遺贈(ほうかついぞう)

    財産の全体、または一定の割合(例:2分の1など)を与える遺贈のことです。

    例:「私の財産の全部をAに遺贈する」「私の財産の3分の1をBに遺贈する」

    特定遺贈(とくていいぞう)

    「この土地」「この家」など、特定の財産を指定して与える遺贈です。

    例:「〇〇市の土地をCに遺贈する」

    この裁判の概要

    被相続人が次のような遺言を残しました:

    「遺産の全部をA、B、Cに贈与する。寺と地所、家はCがとる。Cを遺言執行者とする。」

    ここで問題となったのは以下の2点です:

    • この遺言は包括遺贈か?特定遺贈か?
    • 不動産取得税がかかるのか?

    不動産取得税がかかるかどうか

    地方税法第73条の7では、次のように定められています:

    「相続(包括遺贈や相続人への遺贈)による取得には、不動産取得税を課さない」

    つまり、不動産取得税を免除してもらうには、以下のいずれかである必要があります:

    • 包括遺贈であること
    • 相続人に対する遺贈であること

    原審(地裁)の判断:包括遺贈で税金不要

    地裁の判断は以下の通りです:

    • 「遺産の全部をA・B・Cに贈与」とあるため、包括遺贈である
    • 「家はCがとる」は、配分の詳細を示したにすぎない

    → よって、Cは包括受遺者であり、不動産取得税はかからないと判断されました。

    控訴審(高裁)の判断:特定遺贈で課税対象

    一方、控訴審(東京高裁)は次のように判断しました:

    • 「家はCがとる」という記載は、Cに対する特定の財産の遺贈と解釈できる(特定遺贈)
    • 包括受遺者に対して特定遺贈をすることも可能である

    ただし、最初の文(遺産の全部を…)については包括遺贈かどうかの判断を明確にしていません。

    この裁判例の意義と論点整理

    1. 包括遺贈か?特定遺贈か?

    包括遺贈は通常「割合」で示すとされますが、原審は「全部を与える」との意思があれば割合明示がなくても包括遺贈と認めました。

    2. 包括受遺者への特定遺贈は可能か?

    控訴審は「可能」と認定し、そのうえで「家」は特定遺贈と判断しました。

    3. 不動産取得税の取り扱い

    不動産取得税が免除されるのは:

    • 相続(包括遺贈を含む)による取得
    • 相続人への特定遺贈

    → では「包括受遺者に対する特定遺贈」はどうなるのか?明確にはされていません。

    裁判例:
    原審:横浜地裁 平成10年1月28日(未登載)
    控訴審:東京高裁 平成10年9月10日(判タ1071号172頁)

    まとめ

    ポイント内容
    包括遺贈遺産の「全部」や「割合」で与える。相続に近い。税金は原則不要。
    特定遺贈特定の財産(家や土地など)を与える。原則として税金がかかる。
    争点「全部あげる」と記載していても、解釈によって包括遺贈か特定遺贈かが争点に。
    裁判結果地裁は包括遺贈と認定、高裁は特定遺贈と判断。見解が分かれた。
  • 【やさしく解説】包括遺贈と特定遺贈の違いとは?遺言書を書く前に知っておきたいポイント

    【やさしく解説】包括遺贈と特定遺贈の違いとは?遺言書を書く前に知っておきたいポイント

    こんにちは。行政書士の吉村です。
    今回は、遺言書の中でもとても重要な「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の違いについて、やさしく・わかりやすく解説していきます。

    これを知っておくことで、遺言書を自分で書いてみようという方にも、専門家に依頼する際のイメージづくりにも役立ちます。
    少し難しそうな言葉ですが、実はルールはシンプルなんです。どうぞ最後までお付き合いください。

    包括遺贈とは?

    例:

    • 「私の財産の全部を妻に遺贈する」
    • 「長男に私の財産の3分の1を遺贈する」

    このように、「どれを」とは書かず、「すべて」や「割合」で財産を渡すのが包括遺贈です。
    特徴は、財産全体をまとめて、あるいは◯分の◯という割合で引き継がせる方法であること。

    注意点:
    借金などのマイナスの財産も一緒に引き継がれる点が重要です。

    特定遺贈とは?

    例:

    • 「次男に埼玉県の土地を遺贈する」
    • 「三女に〇〇銀行の預金100万円を遺贈する」

    このように、あげる財産を具体的にピンポイントで指定して渡す方法が特定遺贈です。

    特定遺贈では、プラスの財産だけを相手に渡すことができ、借金などのマイナスの財産はついてきません。

    包括遺贈と特定遺贈の見分け方

    ① 通説(よく使われる考え方)

    ・割合で渡せば包括遺贈、モノを指定すれば特定遺贈。

    • 「遺産の2分の1を遺贈」→ 包括遺贈
    • 「A銀行の預金を遺贈」→ 特定遺贈

    ※ 借金がついてくるのは包括遺贈だけ

    ② 借金の有無で判断する説

    • 借金を含むなら → 包括遺贈
    • 財産だけなら → 特定遺贈

    ③ 折衷説(良いとこどり)

    「割合」も「借金の有無」も両方を考えて判断する柔軟な考え方。

    一部の財産を割合で渡すのはOK?

    例:「長女に甲不動産を相続させる。そのほかの2分の1を長男に遺贈する」

    このような書き方は、遺産全体の割合が曖昧になり、包括遺贈と認められない可能性があります。

    包括遺贈にするには、「遺産全体」に対して割合で指定する必要があります。

    よくあるケースと注意点

    例:「長男には○○銀行の預金を、次男にはその他の一切の財産を遺贈する」

    このような遺言では、「その他の一切の財産」が包括遺贈か特定遺贈かで見解が分かれることがあります。

    • 通説:具体的な財産を渡したあとなので「その他一切」は包括遺贈に当たらない
    • 別の見解:借金も含める意図なら包括遺贈と解釈される可能性あり

    まとめ:包括遺贈と特定遺贈の違い

    比較項目包括遺贈特定遺贈
    内容全体または割合で渡す特定の財産を渡す
    借金も引き継ぐ?はいいいえ
    判定の基準(通説)割合指定具体的な財産指定
    実務上の注意「全体」の割合で書く必要あり金額やモノを具体的に書く

    専門家からひとこと

    「包括遺贈と特定遺贈の違いなんて、遺言書にそんなに大事なの?」と思われるかもしれませんが、この違いが“相続トラブル”の大きな火種になることもあります。

    実際に、「言葉の使い方ひとつ」で遺言の効力が変わってしまい、せっかくの想いがうまく伝わらなかったというケースもあります。

    自分でも書けそう、でもやっぱりちょっと不安。そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
    ご本人の想いを、確実に、法律的にも安心できる形で伝えるお手伝いをいたします。

    お気軽にご相談ください。
    ご家族を想う、そんなお気持ちを大切に、誠実にサポートいたします。

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  • 包括遺贈と特定遺贈の違いとは?

    包括遺贈と特定遺贈の違いとは?

    遺言の内容を考えるうえで、「包括遺贈」と「特定遺贈」という言葉を耳にすることがあります。これらはどちらも遺言によって財産を人に渡す方法ですが、法的な意味や取り扱いに大きな違いがあります。

    ここでは、民法の条文に基づきながら、実務上も重要なポイントを整理し、初めての方でも理解しやすいように説明します。

    包括遺贈と特定遺贈の違い

    包括遺贈:たとえば「財産の3分の1を○○さんに遺贈する」といったように、全体の割合で指定されるものです。民法第990条では「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定められています。

    特定遺贈:たとえば「○○市の土地を△△さんに渡す」というように、特定の財産を指定して行うものです。

    この違いにより、法律上や税務上での取り扱いにも差が生じます。

    遺贈を放棄する際の手続きの違い

    包括遺贈の場合

    贈与の事実を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に「放棄の申述」をしなければなりません(相続放棄と同様の手続き)。一部放棄はできず、全体を受け取るか放棄するかの選択となります。

    特定遺贈の場合

    放棄はいつでも可能で、家庭裁判所の手続きも不要です。部分的な放棄も可能です。

    借金や負債の扱い

    包括遺贈では、遺産の中に借金などのマイナスの財産があれば、それも一定割合で引き継ぐ可能性があります。一方、特定遺贈では指定された財産のみを受け取るため、借金を負うことはありません。

    ただし、形式上は特定遺贈でも実質的に包括遺贈と判断される場合、放棄期限を過ぎると負債を引き継ぐおそれがあります。

    農地を遺贈する場合の注意点

    農地を遺贈する場合、農地法の規制に注意が必要です。

    • 包括遺贈の場合:農業委員会の許可は不要
    • 特定遺贈の場合:原則として許可が必要。許可が下りないと無効

    不動産取得税の違い

    不動産の遺贈により発生する税金にも違いがあります。

    • 包括遺贈:原則として非課税(法定相続人への遺贈含む)
    • 特定遺贈:課税対象(固定資産評価額の約4%)

    形式の違いが税務署の判断に影響することもあります。

    換価遺言と譲渡所得税

    「不動産を売却して現金を渡す」といった遺言は「換価遺言」と呼ばれます。この場合、不動産の売却は相続人が行うため、譲渡所得税は相続人が負担することになります。

    換価金をもらえない相続人が税だけを負担するという事態も生じ得るため、遺言作成時には慎重な検討が必要です。

    包括遺贈と特定遺贈の比較表

    比較項目包括遺贈特定遺贈
    内容遺産全体の一定割合など指定された特定の財産
    放棄の手続き家庭裁判所に3か月以内の申述が必要いつでも可能。家庭裁判所の手続き不要
    一部放棄不可(すべて放棄か受け取りか)可能(不要な物のみ放棄できる)
    借金の引継ぎあり(相続人と同様)なし(プラスの財産のみ)
    農地の承継許可不要必要
    不動産取得税非課税課税される(評価額の約4%)
    換価遺言の税負担相続人が譲渡所得税を負担

    まとめと注意点

    包括遺贈と特定遺贈は、見た目には似ていても法律的な効果や手続き、税金の取り扱いに大きな違いがあります。

    遺言を作成する側も、受け取る側も、それぞれの違いを正しく理解したうえで判断することが重要です。

    不明点があれば、民法の条文に即した解説もいたします。行政書士として、正確な理解をお手伝いします。

    ※本記事は一般的な解説であり、特定の法律相談を目的としたものではありません。具体的な案件については、専門家にご相談ください。

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  • 包括遺贈と特定遺贈の違いをわかりやすく解説

    包括遺贈と特定遺贈の違いをわかりやすく解説

    はじめに:なぜ「遺贈」が注目されているのか?

    近年、「遺贈(いぞう)」という言葉を耳にする機会が増えています。背景には、高齢化や単身世帯の増加など、家族構成の変化があります。

    たとえば、法定相続人がいない方が亡くなった場合、その方の財産は最終的に国に引き取られる(これを「国庫に帰属」といいます)ことになります。実際、2019年度には全国で約603億円もの財産が国庫に帰属しました。

    これは、必ずしも故人の望んだ形ではなかったかもしれません。そんなときに活用できるのが「遺言による遺贈」です。遺贈を使えば、家族以外のお世話になった方や団体(NPO法人・病院・施設など)に自分の財産を託すことができます。

    民法964条:遺贈には2つのタイプがある

    民法第964条では、遺贈について次のように規定されています。

    遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

    この条文にあるように、遺贈には以下の2つの形式があります。

    • 包括遺贈(ほうかついぞう)
    • 特定遺贈(とくていいぞう)

    包括遺贈とは?

    内容

    財産の全部や割合を指定して贈る方法です。

    例:「私の全財産をAに遺贈する。」

    特徴

    • 遺産の割合(例:「2分の1」)を指定する場合にも使われます。
    • プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。
    • 相続人に近い立場となり、遺言執行者がいなくても一部手続きが可能です。

    メリット・デメリット

    メリットデメリット
    財産を包括的に一括で託せる借金も一緒に引き継ぐ可能性がある

    特定遺贈とは?

    内容

    特定の財産を指定して贈る方法です。

    例:「〇〇銀行の預金1000万円をBに遺贈する。」

    特徴

    • 土地・建物・預金など、具体的な財産を対象にしています。
    • 借金などのマイナスの財産は原則として引き継がれません。
    • 不動産などを遺贈する場合、遺言執行者が必要なケースが多くなります。

    メリット・デメリット

    メリットデメリット
    借金を引き継がなくてよい手続きが複雑になりやすい(遺言執行者が必要)

    注意点:包括遺贈と特定遺贈を曖昧にすると?

    たとえば、「財産の一部をAに贈る」とだけ書いてしまうと、それが「割合」の意味なのか「特定の財産」なのかで、受け取る側や遺族の間で解釈が分かれてしまう可能性があります。

    また、包括遺贈だと認識せずに財産を受け取ったら、思わぬ借金がついていた…というケースも実際にあります。

    こうしたトラブルを防ぐためにも、遺言の記載はできるだけ具体的かつ明確にしておくことが重要です。

    まとめ:安心して遺贈するために

    • 「包括遺贈」か「特定遺贈」かをはっきり書く
    • 「割合」なのか「具体的な財産」なのかを明示する
    • 不安があれば法律の専門家に相談する(弁護士・行政書士など)

    【文例】

    包括遺贈の文例:
    「私のすべての財産を、Aに包括的に遺贈する。」

    特定遺贈の文例:
    「私が所有する〇〇銀行の預金(口座番号:XXXX)を、Bに遺贈する。」

    最後に

    「遺贈」は、ご自身の思いを最も確実なかたちで後世に伝える手段の一つです。しっかりと仕組みを理解し、正確な表現で遺言書を作成することが、望んだ相手に確実に財産を届ける第一歩となります。

    ご不明な点がある場合は、専門家へご相談ください。丁寧に、わかりやすくサポートいたします。

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  • 【埼玉県の建設業者必見】入札に参加するなら「格付け」が必要です!

    【埼玉県の建設業者必見】入札に参加するなら「格付け」が必要です!

    こんにちは、行政書士の吉村です。
    今回は、建設業者さんからよくご相談いただく「埼玉県の建設工事入札における格付制度」について、実務的な手順とポイントをわかりやすくご説明します。

    「うちは公共工事にチャレンジしたいけど、まず何をすればいいの?」
    「格付けって聞いたことあるけど、どうやって決まるの?」

    そんな疑問をお持ちの方、ぜひ最後までお読みください。この記事を読めば、格付制度のしくみから申請の流れ、注意点まで一通り理解できますよ。

    ■ そもそも「格付け」ってなに?

    埼玉県では、建設工事の競争入札に参加するために、業者ごとに「格付け(ランク付け)」を行っています。
    この格付けは、経営状況や技術力などを点数化して、どの規模・種類の工事に参加できるかを決める大切な制度です。

    言い換えると、「この会社なら、これくらいの公共工事を任せられる」という客観的な判断基準。
    入札のスタートラインに立つための、まさに「チケット」とも言えるでしょう。

    ■ 格付けの申請はこう進めます(4ステップ)

    ステップ1:まず制度の目的を理解しましょう

    格付けは、埼玉県が定める入札制度の一環。
    その根拠は「埼玉県建設工事請負等競争入札参加者の資格等に関する規程」第8条にあります。

    県が定めた評価基準に基づいて業者をランク分けすることで、適切な事業者が適正な工事を受注できる仕組みを作っているのです。

    ステップ2:評価される3つの要素を押さえる

    格付けの評価は、以下の3つの要素で構成されます。

    • 資格審査数値(=経審点数)
    • 技術者数
    • 県独自の格付基準

    とくに、資格審査数値と技術者数は、日ごろの会社の体制や努力がそのまま反映されるため、しっかり準備しておく必要があります。

    ステップ3:資格審査数値の内訳を知ろう

    この点数は、国土交通省が定める「経営事項審査(経審)」をベースにしています。

    評価される主なポイントは以下のとおり:

    • 完成工事高などの 経営規模
    • 自己資本比率などの 経営状況
    • 技術職員の数などの 技術力
    • 法令遵守や社会保険加入状況といった 社会性

    これらは数値化され、最終的に総合的なスコアとして反映されます。

    ステップ4:工事成績評価点も見逃せない

    埼玉県内に「本店」がある業者さんは、県からの評価(=工事成績評価点)も加味されます。
    この点数は、過去2年度に県発注工事を履行した際の評価結果に基づきます。

    例えば、平均90点以上なら130点が加算されるなど、工事の質が高いほど有利に働きます。

    ■ よくある質問にお答えします!

    Q:うちは埼玉県に営業所があるけど、評価対象になりますか?

    A: 本店(主たる営業所)が埼玉県内にあれば、「県内業者」として評価対象になります。

    Q:経営事項審査ってどこで受けるの?

    A: 都道府県や国の地方整備局に申請して受審します。行政書士が手続き代行できます。

    Q:過去に県の工事をやっていないと点数つきませんか?

    A: 工事成績評価点は付きませんが、経審の点数で格付けはされます。

    Q:官公需適格組合に入っていると有利? A: はい、構成員の合算で評価されるため、小規模事業者でも有利になることがあります。

    Q:経常JVって何?

    A: 複数業者が連携して工事を受ける共同体で、実績が少ない業者でも大規模案件に参加しやすくなります。

    ■ 行政書士からの実務アドバイス

    • 経審には有効期限(1年)があります。更新漏れに注意!
    • 技術者の数は常に最新の台帳に反映を。
    • 工事成績評価を上げるためにも、日頃の施工・報告・安全管理に磨きをかけましょう。

    ■ まとめ:格付けは入札のスタートライン!

    「格付けって難しそう…」と思われたかもしれませんが、しっかり準備すれば確実に前に進めます。
    とはいえ、経審の申請や評価点の管理には専門的な知識と書類作成のノウハウが必要です。

    「まずは一歩踏み出したい」「しっかり整えてチャレンジしたい」
    そんな建設業者さまのお力になります。お気軽にご相談ください。


    公共工事への第一歩、いっしょに踏み出しましょう。

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  • 【実務解説】完成工事高の年額換算とは?

    【実務解説】完成工事高の年額換算とは?

    〜決算期変更・設立初年度など、迷ったらここで確認!〜

    こんにちは。行政書士の吉村です。
    今回は、建設業許可に関わる「完成工事高」の記入について、少し特殊なケース——たとえば「決算期を変更した」「初年度で事業期間が短い」などの場合に必要となる年額換算の方法について、分かりやすくご説明します。

    年額換算とは?

    建設業の許可申請では、過去3年分の「完成工事高」(元請・下請の別も含む)を提出する必要があります。これは、事業の継続性や経営能力を審査するための大事な指標です。

    しかし、以下のようなケースでは、そのままの数字を使うと正確な比較ができません。

    • 決算期を変更した
    • 法人を設立して最初の決算期が12か月未満
    • 合併・分割などで事業期間が中断している

    このような場合には、「12か月分の工事高」に換算して記載する必要があります。これが年額換算です。

    年額換算のやり方(実務編)

    ケース1:決算期を変更した場合

    事例:決算期変更により、事業年度が6か月になった
    完成工事高:6か月で300,000千円
    前年度(12か月)の完成工事高:480,000千円

    計算方法:
    不足する6か月分を、前年度のデータから按分して補います。

    300,000 × 6/6 + 480,000 × 6/12 = 540,000(千円)

    帳票への記載:
    【20002帳票】の「完成工事高」「元請完成工事高」欄に、540,000と記入し、余白に「300,000×6/6 + 480,000×6/12 = 540,000」と記載します。

    ケース2:設立初年度が12か月未満の場合

    事例:設立日:令和3年8月1日
    決算期:令和4年3月31日(8か月間)
    完成工事高:200,000千円

    計算方法:
    8か月分を12か月に換算します。

    200,000 × 12/8 = 300,000(千円)

    帳票への記載:
    【20002帳票】の該当欄に300,000と記載し、余白に「200,000×12/8=300,000」と明記しましょう。

    法令上の根拠

    • 建設業法施行規則第7条第1項第3号の2
    • 経審マニュアルにも換算記載の具体例あり

    「直近の事業年度が12か月に満たないときは、これを12か月に換算した数値により記載することができる。」

    よくあるご質問(Q&A)

    Q1. 勝手に12か月で計算していいんですか?

    A:いいえ。必ず、基準となる期間に応じて、前年度から必要分だけを按分して補完する必要があります。

    Q2. 按分ってどうやって計算するの?

    A:月単位で均等割りします。たとえば12か月で480,000千円なら、1か月あたり40,000千円。6か月分=240,000千円となります。

    Q3. 千円未満はどうしますか?

    A:切り捨てます。帳票単位が「千円」なので、小数点以下は記入しません。

    Q4. 決算期変更はどこで確認するの?

    A:登記事項証明書の「事業年度終了日」で確認できます。
    また、法人税申告書の別表一や内訳明細書でもチェック可能です。

    実務上の注意ポイント

    チェック項目内容
    決算期間の確認登記簿・決算書で必ず確認
    計算式の明記按分や換算の根拠は、帳票内にメモとして記載
    数値は公平に処理申請者に有利・不利にならないように、事実に基づく
    説明の準備を忘れず審査官から根拠を求められることがあります

    まとめ

    特殊なケースでも、完成工事高を12か月ベースで整えることで、審査における公平性や信頼性が確保されます。

    慣れていないと「年額換算ってややこしい…」と思われるかもしれません。でも大丈夫。手順をきちんと踏めば、根拠を持って記入できます。

    ただし、計算間違いや記載漏れがあると、審査で差し戻しになる可能性も…。
    「ちょっと不安…」と感じた方は、無理をせず、行政書士に相談してみてください。

    無料相談も受付中

    「うちの会社の決算、ちょっと特殊だけど大丈夫かな?」
    「自分でやってみたけど合っているか不安…」

    そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
    分かりやすく、確実な申請サポートをお約束します。

  • 【建設業者必見】技能者名簿(様式第5号)の書き方とポイント

    【建設業者必見】技能者名簿(様式第5号)の書き方とポイント

    こんにちは。行政書士の吉村です。

    今回は、経営事項審査(いわゆる「経審」)で提出が必要となることのある「技能者名簿(様式第5号)」について、その作成方法や注意点を、初めての方にもわかりやすく解説します。

    技能者名簿は、「施工に従事した技能者」の情報を整理してまとめる重要な帳票です。

    「うちは必要なの?」
    「評価って何?」
    「どこまで書けばいいの?」
    …といったご相談もよくいただきます。

    この記事を読めば、技能者名簿の基礎から提出の有無、よくある疑問まで、一通り理解できます。事務担当者や経審申請が初めての方にもおすすめです。

    技能者名簿(様式第5号)とは?

    建設業の経営事項審査では、企業の技術力や施工能力を評価するため、実際に現場で働いていた技能者の情報を提出することがあります。

    このときに使うのが「様式第5号(技能者名簿)」です。

    法律の根拠は「建設業法施行規則第14条の2」。そこでは、過去3年間に施工に従事した者の情報提出が義務付けられています。

    つまり、「工具を持って現場で施工した職人さん」のリストということですね。

    記載対象者の条件

    名簿に記載できるのは、以下の3つの条件をすべて満たす方です。

    • 審査基準日時点で、許可業種の工事に従事している
    • 過去3年間に施工に従事していた
    • CCUS(建設キャリアアップシステム)などの能力評価を受けている

    たとえば、「現場監督」や「施工管理」のみを行っていた方は対象外です。実際に作業した技能者だけが該当します。

    記載方法:6ステップで解説

    ステップ1:名簿の様式を準備

    使用するのは、A4サイズの様式第5号です(各自治体のホームページや経審の手引きに掲載されています)。

    ステップ2:基本情報を記入

    項目内容
    通番1、2、3…と順番に記載
    氏名フルネームで(例:埼玉 四郎)
    生年月日和暦で(例:S53年7月10日)
    評価日最新の能力評価日(例:R4年4月17日)

    ステップ3:レベル向上の有無

    過去3年間で、能力評価のレベルが1段階以上上がった場合のみ、「○」を記入します。

    例:R3年:レベル2 → R5年:レベル3 → 「○」記入

    ステップ4:控除対象の判断

    審査基準日の3年以上前に「レベル4(最上位)」評価を受けている方が対象。「○」を記入します。

    これは、「これ以上レベルアップが見込めないので、加点対象から外す」という扱いです。

    ステップ5:最終行に合計人数を記載

    項目内容
    技能者数名簿に記載した合計人数(例:3人)
    レベル向上者数「○」がついた人数(例:2人)
    控除対象者数「○」がついた人数(例:1人)

    ステップ6:提出省略が可能な場合

    次の両方に当てはまる場合は、この名簿の提出が不要になります。

    • CPD単位取得者が0人(帳票項番49)
    • 技能レベル向上者が0人(帳票項番62)

    この場合、「技能者数=0人」として審査されます。

    よくあるご質問(建設業者さんからの相談例)

    Q1:「現場監督も書けますか?」

    → いいえ。工具を持って作業していない「施工管理」だけの方は対象外です。

    Q2:「能力評価ってCCUSのこと?」

    はい、CCUS(建設キャリアアップシステム)もその一つです。他にも職種団体による評価制度(例:鉄筋、型枠など)も該当します。

    Q3:「レベル向上の○って必要ですか?」

    → はい。技能者のレベルが上がると、経審の加点対象になるため、会社の評価にプラスとなります。

    Q4:「控除対象ってなんで○つけるの?」

    → 控除対象者は、すでに最上位レベル(レベル4)を取得済みのため、加点対象にはならないという意味で「○」を付けます。

    Q5:「名簿、出さなくていいって言われたけど…?」

    → その通り。上記の条件(CPD0&レベル向上者0)を満たしていれば、提出省略が可能です。

    まとめ:行政書士からのアドバイス

    技能者名簿は「提出不要」な場合もありますが、内容を誤解して提出ミスにつながることも。

    レベルの評価制度や対象者の定義など、専門知識が必要な場面が多いため注意が必要です。「施工に従事したか?」の確認を怠らないようにしましょう。

    「技能者名簿、必要なのは分かったけど、自社で正しく書けるか不安…」

    そんなときは、ぜひ専門家にご相談ください。

    当事務所では、技能者名簿の作成に必要な情報を丁寧にヒアリングし、正確・迅速に作成代行しています。また、必要に応じて「技能者名簿記載チェックリスト」もご提供しております。

    お気軽にご相談ください!

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  • 建設業経審で加点!CPD申告書類の作り方

    建設業経審で加点!CPD申告書類の作り方

    こんにちは、行政書士の吉村です。

    今日は、建設業を営む事業者の皆さまや技術者の方々が、経営事項審査(いわゆる「経審」)を受ける際に重要な「技術力(Z点)」の加点につながる書類――

    • CPD単位を取得した技術者名簿(様式第4号)
    • CPD単位内訳一覧表

    について、その目的や作成手順、注意点をやさしく解説していきます。

    CPD単位とは?評価される理由

    CPDは「Continuing Professional Development」の略で、日本語では「継続教育」を意味します。つまり、技術者が知識・スキルを高めるために行っている研修等が数値として評価される仕組みです。これが、経審のZ点(技術力)の加点項目として認められるようになっています。

    提出が必要な2つの書類

    書類名主な記載対象
    様式第4号技術職員名簿に載っていないCPD取得者
    CPD単位内訳一覧表CPD単位を取得したすべての技術者

    【ステップ別】作成手順と注意点

    ステップ1:様式第4号に記載すべき人

    以下の条件を満たす人を記載します。

    • 技術職員名簿に載っていない人
    • かつ、次のいずれかに該当する人:
      • 建設業法第7条第2号または第15条第2号に該当
      • 1級・2級の第一次検定試験(技士補)合格者

    ※既に技術職員名簿に載っている人を重複して記載してはいけません。

    ステップ2:CPD単位の換算方法

    取得単位を以下の式で換算します:

    CPD単位 = 取得単位 ÷ 定数 × 30(※上限30、小数点以下切り捨て)

    例:建設業振興基金で5単位取得、定数12の場合:
    5 ÷ 12 × 30 = 12.5 → 12単位として申告

    ステップ3:様式第4号の記載項目

    項目内容
    通番1、2、3…と連番
    氏名技術者の名前(例:浦和 一郎)
    生年月日和暦で記入(例:H5年5月5日)
    CPD単位換算後の単位(上限30)

    ステップ4:CPD単位内訳一覧表の記載項目

    項目内容
    名簿の別「技職」または「様4」
    通番・氏名対応する通番・氏名
    認定団体例:建設業振興基金
    実単位取得した実単位
    換算単位換算後の単位

    関連法令と評価基準

    法令内容
    建設業法 第7条第2号一般建設業の専任技術者要件
    建設業法 第15条第2号特定建設業の専任技術者要件
    経審 Z点CPD取得が加点対象

    よくある質問(Q&A)

    • Q1:技術職員名簿に載っている人も様式第4号に記載する?
      A:✖️不可です。重複記載はNG。
    • Q2:定数はどこで調べる?
      A:国交省告示(別表第18)を参照。例:建設業振興基金=定数12
    • Q3:技士補でも申告可能?
      A:⭕可能です。名簿に未記載であればOK。
    • Q4:換算単位が31になった。申告可能?
      A:✖️NG。上限30。切り捨てで申告。
    • Q5:様式第4号だけでいい?
      A:✖️NG。内訳一覧表も必須です。

    最後に:専門家に任せるのも選択肢

    CPDに関する書類は、加点チャンスでもありますが、記載ルールや法令との整合性など細かな注意が必要です。申告に不安がある方、ミスを避けたい方は、ぜひ専門家にご相談ください。

    ご相談・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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