(民法改正)法定養育費制度の創設を解説

2024年5月の民法改正により、「法定養育費制度」が新たに導入されました。

この制度は、離婚時に養育費の取り決めがなくても、最低限の養育費を請求できる仕組みであり、子どもの貧困を防ぐ重要な改革です。

本記事では、改正前後の違いとポイントをわかりやすく解説します。

1. 改正前の制度とその課題

従来の民法では、離婚の際に父母が協議して養育費の額を定めることが原則でした(民法766条)。

協議が行われなかった場合、親権者が相手方に養育費を請求するのは容易ではありませんでした。

■主な課題

  • 養育費について協議せずに離婚するケースが多い
  • 請求するには家庭裁判所への申立てが必要
  • 結果的に養育費の不払いが多発

このように、協議がないと養育費の請求が難しい制度だったのです。

2. 改正後の制度:法定養育費制度の導入

2024年の改正により、新たに民法766条の3が創設され、離婚時に養育費の取り決めがなくても、子どもを監護する親が相手方に対して法定の最低額を請求できるようになりました。

■改正のポイント

  • 養育費の取り決めがなくても自動的に請求が可能
  • 金額は法務省令による基準に基づき算出
  • 支払義務者は生活困難等を理由に減免を申立可能
  • 請求期限は協議成立・審判確定・子の成年のいずれか早い時点まで

【具体例】

養育費の協議が一切ないまま協議離婚した場合でも、離婚の翌月から法定の標準額(例:月3万円)を自動的に請求できます。

3. 支払義務者への救済措置

支払う側が生活保護を受けている場合や極度の低所得者である場合には、不公平にならないよう以下の救済措置が認められています。

  • 「支払能力がない」ことなどを証明すれば支払免除可
  • 家庭裁判所による柔軟な判断(免除・猶予など)

4. 改正の背景と意義

日本では離婚後に養育費を受け取っていない家庭が多く、子どもの貧困の大きな要因になっていました。

今回の改正は、養育費を「当然の権利」と位置づけ、子どもの経済的安定を図るものです。

なお、従来から民法881条において親の扶養義務は規定されており、今回の法改正はこれを具体化したものと言えます。

5. 改正前と改正後の比較まとめ

比較項目改正前改正後
養育費の請求協議や裁判がないと困難協議なしでも自動で請求可
支払額個別に協議・裁判で決定法務省令の標準額を適用
支払免除特に規定なし生活困難等で免除申立可
手続き負担親権者側の申立てが必要離婚時から当然に請求可

6. まとめ

今回の法改正により、養育費の不払い問題に対する大きな前進が実現しました。

親権者は離婚後すぐに養育費を請求できるようになり、子どもの経済的な権利がより強く保護されます。

離婚を考える方や、すでに離婚された方も、この制度の正しい理解が求められます。

今後、法務省令により具体的な金額が発表された際には、改めて詳細な情報をお届けします。

ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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