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  • 原価割れ契約が受注者も禁止に?建設業者が守るべき新規制

    原価割れ契約が受注者も禁止に?建設業者が守るべき新規制

    行政書士の吉村です。
    2025年に全面施行される改正建設業法(建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部改正)は、建設業界の“これまでの常識”を大きく変える内容を含んでいます。

    その中でも特に重要なのが、「原価割れ契約の禁止が、受注者(建設業者)側にも義務付けられたこと」です。

    これまでの建設業法では、「発注者→受注者」に対する不当な低価格強要を主に規制していました。しかし今回の改正では、建設業者自身が通常必要な原価を下回る総価で契約を結ぶことが、コンプライアンス違反として明確化されました。

    本記事では、この改正の背景と、建設業者が今すぐ着手すべき「適正な原価計算」「見積ルール整備」のポイントを行政書士の立場から分かりやすく解説します。

    1. なぜ受注者側の原価割れ契約が禁止されたのか

    (1) 最大の目的は「労務費へのしわ寄せ防止」

    建設業界では、就業者の減少・高齢化が深刻化しており、担い手確保は国全体の最重要課題となっています。近年、国が推進している「新4K」(給与がよい、休日が取れる、希望がもてる、カッコイイ)というコンセプトも、その流れの一つです。

    しかし、請負代金が不当に低い場合、負担は最終的に労務費の圧迫として現れます。
    適切な賃金を支払えなければ、技術者は離職し、人材不足に拍車がかかります。

    今回の改正は、低廉な契約を建設業者自らが選択してしまうことによる、労働者への悪影響を防ぐ目的で導入されたものです。

    (2) 従来の規制との違い

    従来の建設業法でも、発注者が著しく低い労務費での見積変更を迫る行為は禁止されていました。しかし今回の改正では、

    「通常必要な原価を下回る総価での契約」を建設業者自身にも禁止
    という新たな規制が追加されました。

    つまり、適正な価格で契約を結ぶのは発注者の責務であると同時に、受注者の責務でもあるという構造へ変わったのです。

    2. 見落としがちな「通常必要な原価」とは

    今回禁止されるのは、「通常必要な原価を下回る総価での契約」です。では、その原価には何が含まれるのでしょうか。

    一般に建設工事の価格は、材料費・労務費・経費などで構成されますが、とくに以下の必要経費を確保できない契約は、原価割れと判断されるリスクが高まります。

    費用項目概要
    労務費技能労働者の賃金原資
    法定福利費健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など事業主負担分
    安全衛生経費安全対策・保護具等の費用
    建退共掛金建設業退職金共済制度の掛金

    とくに法定福利費や安全衛生経費が確保できない総価契約は、法違反と判断される可能性が高くなります。

    ただし、「低廉な資材を保有している」など合理的理由がある場合は除外されます。

    3. 建設業者が今すぐ取り組むべき具体的対策

    改正法は2025年12月12日に完全施行されます。準備期間は限られています。

    (1) 適正な原価計算体制を整備する

    「なんとなくこの金額で受注しよう」は通用しません。
    すべての工事で、以下を明確に把握する必要があります。

    • 法定福利費
    • 安全衛生経費
    • 標準的な労務費

    特に労務費については、中央建設業審議会が示す「標準労務費」が行政指導の参考指標になります。これを下回る単価設定は「不適正」と判断される可能性が高いため、必ず自社の見積と照らし合わせて確認しましょう。

    (2) 社内規定・見積ルールの見直し

    原価割れ契約の禁止は、受注者のコンプライアンスに直結します。

    • 見積書作成の社内ルール化(労務費・法定福利費の算出方法)
    • 工期設定の判断基準の明文化
    • 内訳明示の徹底(元請・下請いずれでも必須)

    とくに内訳明示は、適正な価格交渉の出発点です。

    (3) 違反時は行政指導の対象に

    受注者側が原価割れ契約を結んだ場合も、国土交通大臣等による指導・監督の対象となります。

    短期的に見れば、「とにかく受注して現場を動かす」ことで売上を確保したくなるかもしれません。ですが、コンプライアンス違反は信用を失墜し、許可維持・事業継続に重大な影響を及ぼします。

    まとめ|持続可能な経営こそ最大の防御策

    今回の「原価割れ契約の禁止」は、建設業者が自らの価値を守り、働く人を守り、業界全体の持続性を高めるための重要な規制です。

    適正原価の把握 → 適正価格での契約 → 適正な賃金の支払い

    この流れを企業として確実に実施することが、将来にわたり信頼される建設業者として生き残る唯一の道です。

    改正建設業法への対応や、社内の見積ルール整備・コンプライアンス体制構築についてお悩みの方は、建設業法務に精通した行政書士がサポートいたします。お気軽にご相談ください。

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  • 【2025年施行予定】 建設業法等の改正ポイントを行政書士がわかりやすく解説

    【2025年施行予定】 建設業法等の改正ポイントを行政書士がわかりやすく解説

    2025年中に施行が予定されている建設業法等の改正について、建設業者のみなさまから
    「何が変わるのか」「どんな手続きが必要になるのか」「注意すべき点はどこか」など、お問い合わせを多くいただいております。

    今回の法改正は、建設業界が抱える以下の課題に真正面から取り組む重要なものです。

    • 担い手不足が深刻化している
    • 賃金水準が他業種と比べ低い傾向にある
    • 長時間労働が常態化している
    • 資材価格高騰により現場の労務費が圧迫されている

    この改正は建設業の持続可能な産業化を目指すもので、国が掲げる「新4K」 (給与がよい・休日が取れる・希望がもてる・カッコイイ)の実現に向け、以下の3つの柱を中心に進められています。

    1. 改正の三つの柱と目的

    1. 労働者の処遇改善
    2. 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
    3. 働き方改革と生産性の向上

    2. 各柱における具体的な改正内容

    (1)労働者の処遇改善

    • 労務費の適正確保を建設業者の努力義務として明文化
      労働者の知識・技能を公正に評価し、適正な賃金を確保する取組を行うことが求められます。国はその取組状況を調査・公表します。
    • 標準労務費(労務費の基準)の作成・勧告
      中央建設業審議会が作成し、契約交渉や行政指導の参考指標として活用されます。
    • 著しく低い見積りの提出や発注者による変更要求は禁止
      違反した発注者は国土交通大臣による勧告・公表の対象となります。
      ※対象となる請負金額の下限:500万円(建築一式工事は1,500万円)
    • 原価割れ契約の禁止
      通常必要な原価を下回る請負契約の締結は禁止されます。

    (2)資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止

    • リスク情報(おそれ情報)の通知義務化
      資材価格の急騰など、契約内容に影響が出る可能性のある情報は、契約締結前に受注者が通知しなければなりません。
    • 請負代金等の変更方法を契約書に明記することが義務化
    • 誠実な協議の努力義務化
      契約後に価格変動などが発生した場合、注文者は協議に誠実に応じなければなりません。
    • 契約変更を認めない条項の禁止

    (3)働き方改革と生産性向上

    • 工期ダンピングの禁止
      著しく短い工期での請負契約の締結を禁止し、長時間労働の抑止を図ります。
    • 工期変更協議の円滑化
    • 現場技術者の専任義務の合理化(複数現場兼任の容認)
      ICTを活用し、以下の条件を満たす場合、兼任が可能に。
      ・現場間の移動が1日で可能、かつ概ね2時間以内
      ・下請け階層が3次まで
      ・ICTによる施工体制確認が実施されている
    • ICTによる現場管理の効率化
      CCUS活用等により、施工体制台帳写しの提出不要となる場合があります。

    (4)特定建設業許可等の金額要件 引き上げ(2025年2月施行)

    項目改正前改正後
    特定建設業許可が必要な下請金額4,500万円以上(建築一式7,000万円以上)5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)
    監理技術者の専任が必要な工事4,000万円以上(建築一式8,000万円以上)4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)
    施工体制台帳の作成義務4,500万円以上5,000万円以上

    3. 法改正の実効性確保に向けた国の取り組み

    • 建設Gメンによる現場調査の強化
    • 標準労務費運用方針の公表予定(2024年12月上旬)
    • 公共工事設計労務単価の引き上げ(令和7年3月 適用分)
      全職種平均 前年比+6.0%、13年連続上昇

    今回の法改正を例えるなら、建設業界という大きな乗り物のエンジン(賃金・労働環境)を強化し、ハンドル(契約・工期)を安定化し、ナビ(ICT化)を最新化するものです。


    これにより業界全体が「新4K」の目的地へ向かって進んでいくことが期待されています。


    建設業許可の更新・変更手続きはお任せください

    今回の法改正により、許可区分や技術者配置の確認、契約書様式の見直しなど、建設業者様に求められる対応は多岐にわたります。


    法改正に関するご相談や、建設業許可の新規取得・更新・変更・経審・入札参加登録などの手続きは、ぜひ当事務所へご相談ください。

    初回相談無料/オンライン相談対応
    お気軽にお問い合わせください。

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  • 改葬許可証の取得手続きと必要書類|行政書士が詳しく解説

    改葬許可証の取得手続きと必要書類|行政書士が詳しく解説

    近年、「お墓の引越し(改葬)」をご希望されるご家庭が増えています。


    遠方の墓地の管理が難しい場合や、跡継ぎがいない場合、または新しい納骨堂へ移したい場合など、 さまざまな理由で改葬手続きを行う必要が生じます。

    しかし、実際に改葬を行う際には、市区町村への行政手続きが必須であり、改葬許可証を取得しなければ改葬は認められません。

    本記事では、改葬許可証の取得に必要な書類・手続きの流れ・注意点について、行政書士が分かりやすく解説します。

    改葬とは?改葬許可証が必要な理由

    改葬とは、埋葬した遺骨を別の墓地・納骨堂へ移動することを指します。


    この改葬(お墓の移転)に際しては法律に基づき、市区町村長の許可を得る必要があります。

    改葬許可証の法的根拠

    項目根拠となる法律内容
    許可の義務墓地、埋葬等に関する法律 第5条第1項改葬を行う者は、市区町村長の許可が必要
    許可証の交付同法 第8条許可時に「改葬許可証」を交付する
    管理者の義務同法 第14条許可証を提示しなければ埋蔵・収蔵できない
    罰則同法 第21条無許可改葬は罰金等の罰則の対象

    改葬許可証がなければ、墓じまいや遺骨の取り出し、移転工事すら進めることができません。


    そのため、事前準備と正確な手続きが非常に重要です。

    改葬許可証を取得するために必要な書類

    改葬許可証の交付には、主に次の3つの書類を準備し、遺骨がある市区町村役場へ提出します。

    ① 改葬許可申請書

    • 自治体へ改葬を申請するための書類
    • 役所窓口または自治体ホームページで入手可能
    • 1体につき1枚記載が原則(自治体により異なる場合あり)
    • 記載内容:死亡者の情報、改葬理由、新しい納骨先、申請者情報など

    ② 受入証明書(改葬受入証明書等)

    • 新しい納骨先が遺骨を受け入れることを証明する書類
    • 新しい墓地・霊園管理者が発行
    • 名称例:受入証明書/永代使用許可証/使用承諾書 等

    ③ 埋葬証明書

    • 現在の墓地に遺骨が納骨されていることの証明
    • 多くの場合、改葬許可申請書内の管理者署名欄で兼用
    • 墓地管理者によっては発行手数料が必要な場合あり

    必要に応じて提出する書類

    • 改葬承諾書…申請者と墓地使用者が異なる場合
    • 委任状…代理申請する場合
    • 戸籍謄本…死亡日と続柄確認が必要な場合

    改葬許可証取得までの具体的な手続きの流れ

    ステップ内容担当
    1新しい納骨先を決定し、受入証明書を取得新しい墓地管理者
    2役所で改葬許可申請書を入手・記入申請者
    3現在の墓地管理者から埋葬証明を取得現墓地管理者
    4必要に応じ承諾書・委任状を準備関係者
    5役所へ書類一式を提出し、改葬許可証を申請市区町村役場

    交付期間と費用の目安

    • 交付期間:3日~1週間程度(自治体・休日による)
    • 費用:無料~300円程度
    • 例:横浜市は手数料無料

    改葬許可証取得後の流れ

    • 現在の墓地管理者へ許可証を提示し、遺骨の取り出し(閉眼供養等)を実施
    • 納骨先で許可証を提出し、埋蔵・収蔵を行う

    改葬手続きは専門家への相談も可能です

    改葬手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、
    親族間の合意形成や寺院・霊園との調整、書類作成が必要になるため、思った以上に時間と労力がかかるケースが少なくありません。

    「手続きが不安」「葬祭関係者や寺院との調整をお願いしたい」という場合は、行政書士へご相談いただくことでスムーズに進められます。

    改葬許可証の申請についてお困りの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。


    初回相談・お見積りは無料で承っております。

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  • 建設業許可「500万円の基準」と材料費の取扱い|分割契約の抜け道は成立するのか?

    建設業許可「500万円の基準」と材料費の取扱い|分割契約の抜け道は成立するのか?

    建設業許可の取得を検討されている事業者様にとって、よく話題になるのが「500万円の基準」と「材料費を含めるかどうか」という問題です。

    「材料費を別扱いにすれば500万円未満になるのでは?」
    「契約を分割すれば許可なしで対応できるのでは?」

    このようなご相談は非常に多いですが、結論から申し上げると、材料費を除外して500万円未満とすることは認められず、意図的な契約分割も法的に無効となる可能性が高いとされています。

    本記事では、建設業許可不要となる「軽微な建設工事」の基準、材料費を含めた算定方法、そして「抜け道」と誤解されがちなケースについて、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

    建設業許可不要となる「軽微な建設工事」の基準

    建設業法では、次の基準を満たす工事は「軽微な建設工事」として建設業許可を必要としません。

    工事の種類軽微な工事の金額基準(許可不要)
    建築一式工事以外の専門工事1件の請負代金の額が500万円未満(税込)
    建築一式工事1,500万円未満(税込)
    または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事

    材料費は必ず請負代金に含めて計算する

    「請負代金」とは、材料費・消費税を含めた金額(税込)のことを指します。

    つまり、次のようなケースは許可が必要になります。

    • 工事代金:420万円(税込)
    • 注文者支給材料:100万円
    • 合計:520万円 → 許可が必要

    材料を注文者が無償提供したとしても、その市場価格を加算して計算します。材料費を分けて契約したり、別途清算扱いにすることで500万円未満に見せる方法は認められません。

    消費税も合計に含める必要がある

    「税抜きなら500万円未満だから大丈夫」と誤解される方がいますが、以下のようなケースでも違反となります。

    • 税抜金額:490万円
    • 税込金額:539万円 → 許可が必要

    「500万円問題」を回避する分割契約や別契約は抜け道になるのか?

    500万円以上になるのを避けるために、契約を複数に分けたり、工程ごとに契約書を作成する方法を検討される方がいます。

    しかし、建設業法では意図的な分割契約は認められていません。

    分割契約は合算判断される

    同一の工事を2つ以上に分割し、形式的に500万円未満としても、実質的に一体の工事と判断されれば合算され、500万円以上となれば許可が必要になります。

    判断ポイントは以下の通りです。

    • 工事の目的や内容が一体か
    • 同一場所で行われる工事か
    • 施工時期が連続しているか

    例:内装工事400万円、電気工事180万円 → 一体と判断 → 合計580万円 → 許可が必要

    建築一式工事として扱われる場合

    複数の専門工事を総合的に企画・調整しながら行う場合、建築一式工事と認められる可能性があります。この場合の軽微な工事の基準は、

    1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事

    ただし、建築一式工事に該当するかどうかは、事業者の判断ではなく行政が判断するため、自主的な判断は非常に危険です。

    無許可で500万円を超える工事を請け負うリスク

    許可を持たずに500万円以上の工事を請け負った場合、建設業法違反となり以下の罰則が科されます。

    • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
    • 違反後5年間は建設業許可を取得できない
    • 元請会社も違反に問われる可能性あり

    違反の結果、信用の失墜、取引停止、公共工事案件の排除など、事業への影響は極めて大きくなります。

    まとめ|500万円基準は厳格、抜け道は存在しないと考えるべき

    • 材料費・消費税を含めた金額(税込)で判断する
    • 注文者支給材料も市場価格換算で合算する
    • 分割契約による500万円回避は法的に無効となる可能性が高い
    • 判断に迷う場合は専門家に相談することが重要

    工事が500万円を超える可能性がある場合は、早めに建設業許可取得の準備を始めることが賢明です。


    許可は信用力の向上、取引機会の拡大、元請案件への参入にもつながります。

    建設業許可の取得をお考えの事業者様へ

    当事務所では、建設業許可申請、業種追加、更新手続き、経営事項審査(経審)など、建設業の実務を幅広くサポートしております。

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  • 家族信託とは?認知症対策に有効な財産管理の新しい方法

    家族信託とは?認知症対策に有効な財産管理の新しい方法

    高齢化が進む中、「親が認知症になったら財産はどうすればいいのか?」というご相談が増えています。

    その解決策として注目されているのが、「家族信託(民事信託)」です。

    本記事では、家族信託の基本的な仕組みや任意後見制度との違い、実際にどのような方に向いているのかを、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

    家族信託(民事信託)とは

    家族信託とは、財産を持っている方(委託者)が、ご家族など信頼できる人(受託者)に財産を託し、その財産を委託者自身または別の人(受益者)の利益のために、契約に基づいて管理・運用・処分してもらう制度です。

    2007年の信託法改正によって制度が整備され、「家族による財産管理」が可能になりました。

    たとえば、「将来、父が認知症になったときに自宅を売却して施設費用に充てたい」というようなケースで、家族信託が非常に有効です。

    あらかじめ契約を結んでおくことで、父の判断能力が低下しても、受託者である子どもが裁判所の関与なしに自宅を売却できるようになります。

    家族信託の3つの登場人物

    • 委託者:財産を託す人(通常はご本人)
    • 受託者:財産を託されて管理・運用する人(多くは家族や親族)
    • 受益者:信託財産から利益を受ける人(委託者本人の場合が多い)

    この3者の契約によって信託が成立し、財産の名義は受託者に移ります。

    ただし、あくまで「管理・運用のための名義変更」であり、受託者の個人財産とは分けて扱われます。

    家族信託の主なメリット

    1. 認知症になっても財産管理を続けられる

    家族信託の最大の特長は、委託者の判断能力が低下した後でも、受託者が契約内容に基づいて財産を管理・処分できる点です。

    任意後見制度では、認知症発症後に家庭裁判所の監督人選任が必要ですが、家族信託ではその必要がありません。

    特に不動産の売却が関係する場合、裁判所の手続きや監督人報酬(年間20万円以上の場合も)を省略できるため、スムーズかつ経済的に対応できます。

    2. 財産運用の自由度が高い

    後見制度では「財産の保存・維持」が原則ですが、信託では契約の範囲内で柔軟な管理・運用が可能です。

    たとえば、信託財産を担保に融資を受けたり、信託口座で証券運用を行うこともできます。

    また、「孫へのお年玉」など、本人以外への支出も契約で定めることができるなど、自由度が高いのが魅力です。

    3. 相続対策としても有効

    信託契約では、委託者の死亡後に残った財産(残余財産)を誰に引き継がせるかをあらかじめ指定できます。

    これは遺言と同様の効果を持ち、場合によっては遺言よりも柔軟な多世代承継が可能です。

    たとえば「父 → 母 → 子」へと順番に財産を引き継がせることも、信託なら契約で設定できます。

    任意後見制度との違い

    項目家族信託任意後見契約
    財産の名義受託者名義に変更される本人名義のまま
    裁判所の関与原則なし判断能力低下後に監督人が関与
    財産の利用目的契約内容により柔軟(本人以外にも使える)本人のためのみ
    投資・運用可能(契約次第)原則として不可
    死後の財産指定残余財産の帰属先を指定できる死亡時に契約終了(遺言が必要)
    コスト監督人報酬なし監督人報酬あり(年間約20万円〜)

    家族信託が向いている方

    • 将来的に不動産を売却して施設入居費用などを確保したい方
    • 認知症対策として、家族に財産管理を任せたい方
    • 信頼できる家族・親族が受託者として関われる方
    • 財産の名義変更に抵抗がない方
    • 相続を複数世代にわたって計画的に行いたい方

    家族信託の注意点・デメリット

    家族信託には大きなメリットがある一方で、以下の点には注意が必要です。

    • 判断能力が必要: 信託契約はあくまで契約行為のため、認知症が進行している場合は利用できません。
    • 受託者選びが重要: 受託者には不動産の処分など強い権限があるため、信頼関係が不可欠です。
    • 名義変更への抵抗: 財産の所有名義が受託者に移ることに心理的抵抗を感じる方も多くいます。
    • 全財産を網羅できない: 年金口座など一部の財産は信託できない場合があり、別途遺言書などの併用が必要です。

    まとめ:家族信託は「判断能力があるうち」に始めることが大切

    家族信託は、将来の認知症や相続に備えるための強力な手段です。

    しかし、信託契約を結ぶには本人の判断能力がある段階での準備が欠かせません。

    また、制度設計には専門知識が必要であり、契約内容を誤ると「信託したのに使えない」といったトラブルになることもあります。

    当事務所では、ご家族の状況や財産構成を丁寧にヒアリングし、最適な家族信託スキームの設計をサポートいたします。 「うちは信託を使うべきか?」「任意後見とどちらが良いのか?」といったご相談もお気軽にお寄せください。

    ▶ 家族信託・後見制度のご相談はこちらから

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  • 埼玉県で産業廃棄物収集運搬業許可を取得するための完全ガイド

    埼玉県で産業廃棄物収集運搬業許可を取得するための完全ガイド

    産業廃棄物の収集・運搬を業として行うためには、「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。 本記事では、埼玉県で新規・更新の許可申請を行う際に押さえるべきポイントを、行政書士がわかりやすく解説します。 これから申請を検討している方、または更新時期を迎える事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

    1. 許可を取得するための主な要件

    産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるためには、以下の要件を満たすことが求められます。

    (1)経理的基礎の確保(経済力)

    産業廃棄物を適切に取り扱い、事業を安定して継続できるだけの経済的基盤が必要です。 判断基準としては以下の点が重視されます。

    • 利益が計上できているか
    • 債務超過になっていないか
    • 法人税や所得税を適切に納付しているか

    もし基準を満たさない場合でも、財務状況を示す追加資料の提出で審査されることもあります。 資金繰りに不安がある場合は、早めに専門家に相談しておくと安心です。

    (2)事業計画の整備

    申請時には、次の内容を含む事業計画書の提出が必要です。

    • 産業廃棄物の品目、運搬量、形状
    • 排出場所・処分場・運搬経路
    • 使用車両・容器・飛散防止措置などの運搬方法
    • 施設や人員などの業務遂行体制

    (3)知識・技能の取得

    新規で許可を申請する場合、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会(収集・運搬課程 新規)を受講し、修了証を取得する必要があります。 法人の場合は、役員(監査役を除く)や政令で定める使用人、個人の場合は申請者本人または常勤の使用人が対象です。

    2. 埼玉県での申請手続き(積替え保管を除く)

    (1)申請は予約制

    埼玉県では、窓口提出・郵送提出のいずれも予約制です。 「埼玉県産業廃棄物収集運搬業許可申請予約システム」から予約を行い、書類を提出します。

    (2)申請期間と予約

    予約カレンダーは4か月先まで公開され、4か月前から予約可能です。 更新申請の場合は、許可期限の3か月前から申請できます。

    (3)提出方法と手数料

    書類は正本(提出用)と副本(控え)の2部を作成し、左側2か所をひもとじで提出します。 郵送申請も可能で、以下の流れになります。

    1. 予約
    2. 電子申請・届出サービスで申請書第1面を作成
    3. 書類の郵送
    4. クレジットカードまたはペイジーによる手数料納付

    手数料は電子申請・届出サービスで納付します。 たとえば、更新許可は73,000円変更許可は71,000円です。 両方を同時に行う場合、それぞれの手数料が必要になります。

    (4)標準処理期間

    申請の収受から許可・不許可の決定までの標準処理期間は43営業日です(優良認定を含む場合は48営業日)。 補正対応にかかる期間は処理期間に含まれませんので、書類の正確な準備が重要です。

    3. 運搬施設・環境保全措置に関する要件

    (1)運搬車両と容器

    車両番号が確認できる写真、車体表示(「産業廃棄物収集運搬車」「会社名」「固有番号」)が明確な写真の添付が必要です。

    (2)特定廃棄物の運搬措置

    • 感染性廃棄物:保冷機能付き容器を使用し、証明書類を添付
    • 石綿含有廃棄物:フレコンバッグに封入し、他の廃棄物と混合しないよう運搬
    • 水銀使用製品廃棄物:専用容器や緩衝材を使用し、破砕しないように区分運搬

    (3)積替え保管施設での環境保全措置

    積替え保管施設では、次のような環境対策を講じる必要があります。

    • アイドリングストップによる大気汚染防止
    • 屋内設置・排水路清掃による水質汚濁防止
    • 建屋内作業による騒音・振動対策
    • 専用容器・区画表示による飛散・混合防止

    4. 提出書類に関する注意点

    • 登記事項証明書や地図などの添付書類は、申請日から3か月以内に発行されたものを使用。
    • 個人商店の場合でも、屋号ではなく個人名義で申請。
    • 更新・変更・優良認定の場合、一部書類の省略が可能(省略理由一覧の添付が必要)。
    • 法人は直近3期分の決算書・納税証明書・残高証明などを提出。
    • 債務超過の場合は、中小企業診断士等の「財務診断書」や「今後5年間の経営計画書」の提出が求められることも。

    5. 行政書士に依頼するメリット

    産業廃棄物収集運搬業許可の申請は、提出書類が多く、要件も細かいため、初めての方にとっては非常に複雑です。 行政書士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

    • 複雑な書類作成・審査対応をスムーズに代行
    • 複数自治体への同時申請にも対応
    • 積替え保管を伴う許可など、特殊ケースにも柔軟に対応
    • 法人としての信頼あるサポート体制

    申請スケジュールに余裕をもって準備することが、許可取得の第一歩です。 当事務所では、許可申請から更新・変更までトータルでサポートいたします。 お気軽にご相談ください。


    【対応地域】埼玉県・東京都・群馬県・栃木県・千葉県ほか

    【対応業務】産業廃棄物収集運搬業許可/積替え保管許可/優良認定申請/変更届など

    産業廃棄物許可申請のご相談は、行政書士へ。
    専門的な知識と経験で、確実な許可取得をサポートいたします。

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  • 成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?概要と種類をわかりやすく解説

    成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方を、 法律的に保護・支援する仕組みです。
    判断能力が低下すると、財産管理や契約手続きが困難となり、不利益を被るおそれがあります。
    ここでは、成年後見制度の概要・種類・利用時の注意点について、わかりやすく解説します。

    1. 成年後見制度の目的と必要性

    判断能力が低下すると、本人の意思確認ができなくなり、家族であっても 預金の引き出しや不動産の売却、入院や施設入所の契約などができません。
    成年後見制度を利用することで、家庭裁判所の監督のもと、 財産や生活を適切に守ることができます。

    2. 成年後見制度の種類

    成年後見制度には大きく分けて、次の二種類があります。

    • 法定後見制度:判断能力が低下した後に利用。家庭裁判所が後見人を選任。
    • 任意後見制度:判断能力があるうちに契約をしておき、将来に備える仕組み。
    制度開始時期後見人の選任権限の範囲取消権
    法定後見判断能力が低下した後家庭裁判所広範囲にわたるあり
    任意後見判断能力があるうち本人が契約(公正証書)契約内容の範囲内なし

    3. 法定後見制度の3つの類型

    法定後見は、本人の判断能力の程度によって以下の3類型に分かれます。

    • 後見:判断能力がほとんどない場合。成年後見人が包括的に代理。
    • 保佐:判断能力が著しく不十分な場合。重要な行為について援助。
    • 補助:判断能力が一部不十分な場合。特定の行為に限り援助。

    4. 後見人の職務とできないこと

    主な職務

    • 財産管理(預貯金、不動産、税金支払いなど)
    • 身上監護(介護サービス利用契約、施設入退所契約など)
    • 家庭裁判所への定期報告

    制限される行為

    • 医療行為への同意(手術や延命治療の可否など)
    • 養子縁組や遺言作成などの身分行為
    • 本人の利益にならない贈与や相続税対策

    5. 成年後見制度の費用

    • 申立費用: 約2万円(申立手数料・郵券代など)。専門家依頼時は別途10万〜30万円程度。
    • 後見人の報酬: 専門職後見人の場合、月2万〜6万円程度(本人の財産から支払う)。

    6. 家族が後見人になる場合の注意点

    • 家庭裁判所の判断で、弁護士など専門職が選任されることが多い。
    • 家族が後見人になると費用は抑えられるが、事務負担が大きい。
    • 一度選任されると辞任は難しく、他の親族の同意も重要。

    7. 成年後見制度以外の選択肢:家族信託

    本人に判断能力があるうちに利用できる制度として「家族信託」があります。
    信頼できる家族に財産管理を託しておくことで、柔軟な資産管理や相続対策が可能です。
    ただし、身上監護(介護や医療契約)はできないため、 任意後見制度と併用して使われることもあります。

    まとめ

    成年後見制度は、判断能力が低下した本人を保護する大切な仕組みですが、 利用にはメリットとデメリットがあります。
    また、法定後見・任意後見・家族信託といった制度はそれぞれ特徴があり、 状況に応じた選択が重要です。
    実際に制度を利用する際は、家庭裁判所の審判や多くの書類準備が必要となるため、 制度の仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。

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  • 遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    非課税とするための条件と手続き

    親の遺産を慈善団体に寄付したいと考えたとき、相続税はどのように扱われるのか──本記事では国税庁の制度を基に「非課税となる具体条件」と「申告手続きの実務ポイント」を整理して解説します。

    結論(要点まとめ)

    遺産寄付の相続税の取り扱いは寄付の方法によって異なります。主に次の2つのケースに分かれます。

    • 遺言で直接寄付(遺贈)する場合:相続人を経由せずに寄付されるため、原則として相続税はかかりません。
    • 相続人が一度相続した後に寄付する場合:原則課税。ただし国税庁の「相続財産を寄附した場合の非課税制度」を満たせば非課税になります。

    1. 遺言に基づく直接寄付(遺贈)のポイント

    遺言で「団体へ遺贈する」旨がある場合、その財産は相続人を経由せずに寄付先へ渡ります。この場合、相続人が財産を取得したとはみなされないため、相続税は基本的に発生しません。

    注意点:譲渡所得税の可能性

    ただし、不動産や上場株式などを遺贈した場合、被相続人の死亡時に譲渡したとみなされるケースがあり、譲渡所得税の問題が生じる可能性があります。事前に税務の専門家に確認してください。

    2. 相続人が受け取ってから寄付する場合(非課税にする4要件)

    相続人が一度財産を取得してから寄付する場合でも、次の要件をすべて満たせば相続税の非課税特例が適用されます。

    非課税特例の4つの要件

    1. 寄付財産が相続や遺贈で取得した「現物」であること
      (例:相続で取得した現金・預金・不動産・株式等そのもの。取得後に売却して得た現金は不可。)
    2. 相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに寄付が完了していること
      (期限を過ぎると特例は適用されません。)
    3. 寄付先が国・地方公共団体・公益法人・認定NPOなど適格な公益団体であること
      (任意団体や一般企業は対象外。寄付先の適格性は事前確認が必須。)
    4. 寄付を証明する書類(受領証や寄付契約書等)を申告書に添付すること
      (申告に必要な明細書の記載・添付がないと適用されません。)

    実務上のポイント

    • 寄付前に寄付先の「公益性(適格性)」を書面で確認しておくと安全です。
    • 相続税申告を税理士に依頼する場合でも、寄付の証明書類は相続人が確実に保管しておきましょう。
    • 株式や土地などの評価方法や時価の算定が問題となることがあります。評価額は相続税申告で重要です。

    3. 国税庁の制度(No.4141)に基づく適用範囲

    国税庁が示す特例では、主に次の寄付パターンが対象となります。

    寄付先の主な分類

    • 国・地方公共団体
    • 特定の公益法人(例:公益社団法人・公益財団法人、学校法人、独立行政法人など)
    • 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)
    • 特定の公益信託(信託会社を通じて公益信託に組み入れる場合)

    適用除外の例

    以下に該当すると特例の適用が取り消されることがあります。

    • 寄付先が寄付から2年以内に公益性を失った場合
    • 寄付を通じて特定の相続人が不当に利益を受けるなど、不当な税負担の減少が認められる場合

    4. 手続きと必要書類(チェックリスト)

    非課税特例の適用を受けるために必要な手続きと提出書類は次のとおりです。

    必須書類(主なもの)

    • 相続税申告書(特例適用の旨を記載)
    • 寄附した財産の明細書(相続税申告書第14表)
    • 寄付先からの受領証または寄付契約書
    • 寄付先が公益法人等であることを証明する書類(必要に応じて所轄庁の証明)

    手続きの流れ(簡易)

    1. 寄付先の適格性を事前に確認する(書面で保存)
    2. 寄付(相続税申告期限内に完了)
    3. 必要書類を揃えて相続税申告書に添付して提出
    4. 税務署の確認を経て非課税が適用される

    5. よくある質問(FAQ)

    Q1:遺言で寄付するとき、相続人の手続きは必要ですか?

    A:遺言で直接寄付(遺贈)される場合、寄付先へ財産が移転するため、相続人がその財産を受け取ったとはみなされません。ただし相続放棄や遺言の執行など、手続き上の対応が必要になる場合があります。

    Q2:寄付先の「公益性」はどこで確認できますか?

    A:寄付先の法人格や認定状況は、所轄庁の公開情報や寄付先からの公式な証明書で確認します。認定NPOかどうか、公益法人の認定有無などを文書で取得してください。

    Q3:相続開始後に売却して得た現金を寄付したらダメですか?

    A:原則として、相続で取得した財産を現物のまま寄付することが要件です。相続財産を売却して得た現金は非課税特例の対象にならないため注意が必要です。

    まとめとご案内

    遺産寄付における相続税の取り扱いは、寄付の方法・寄付先・申告期限・証明書類の有無によって結果が大きく異なります。正確に非課税を適用するためには、寄付先の適格性の確認・申告期限の厳守・必要書類の整備が不可欠です。実務上の判断や税務評価に関する個別のご相談は、税理士や行政書士・弁護士などの専門家へご相談ください。

    (本稿は国税庁資料に基づく一般的な解説であり、事例により取扱いが異なる場合があります。)

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  • 公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言でも無効?意思能力と対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?無効とされる理由と対策

    遺言書は、故人の意思を家族に伝える大切な手段です。特に公正証書遺言は「公証人が関与するため安全」と思われがちですが、実際には無効とされるケースが裁判例で数多く存在します。
    本記事では、公正証書遺言が無効になる理由と、無効を防ぐための対策をわかりやすく解説します。

    公正証書遺言とは?

    遺言書には大きく分けて2種類があります。

    • 自筆証書遺言:本人が自ら全文を書いて作成する。費用がかからない反面、形式不備で無効になるリスクが高い。
    • 公正証書遺言:公証人が関与して作成する。形式面では安全性が高いとされる。

    しかし、公正証書遺言でも「必ず有効」とは限りません。

    公正証書遺言が無効とされる主な理由

    1. 遺言者本人の判断能力の欠如

    民法第963条は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めています。
    例えば次のような場合には無効と判断される可能性があります。

    • 認知症と診断されていた。
    • 介護記録や証言から「正常な判断ができなかった」と認められた。
    • 遺言内容が不自然で、本人の真意ではないと疑われる。

    2. 公証人による確認不足

    公証人は法律の専門家ですが、確認が十分でない場合もあります。

    • 遺言書を読み上げるだけで、本人の理解を確認していない。
    • 家族や専門家が原案を作成し、本人は署名するだけ。
    • 本人確認が印鑑証明だけで済まされ、意思能力の確認が不十分。

    遺言能力とは?

    遺言能力とは「有効に遺言を行える能力」のことです。本人が遺言の内容を理解し、その結果を予測できる力が求められます。

    関連条文内容
    民法961条15歳に達した者は遺言できる
    民法963条遺言時に能力を有しなければならない

    判断基準としては、医師の診断、認知機能テスト、遺言内容の合理性などが重視されます。

    無効を防ぐための生前対策

    1. 医師の診断書を取得

    遺言作成直後に「意思能力あり」とする診断書を残しておくと有効性を証明しやすくなります。

    2. 遺言能力の証拠を残す

    • 認知機能テストの結果を保存
    • 作成時の様子を動画記録
    • 弁護士など専門家の立会いを依頼

    3. 遺言執行者の指定

    公正証書遺言を作成する際、信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。

    死後に無効が疑われた場合

    相続人同士で争いになった場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことになります。

    • 裁判ではカルテや介護記録などの客観的証拠が重視される。
    • 第一審だけで1~2年かかることもある。
    • 無効と判断されれば遺産分割協議が必要になる。

    まとめ

    • 公正証書遺言でも無効になることがある。
    • 最大のポイントは「遺言能力(意思能力)」の有無。
    • 診断書や動画記録など、客観的な証拠を残すことが重要。

    相続争いの多くは「一般家庭」で起きています。大切な家族のために、早めに法的に有効な遺言を準備しておくことがトラブル防止につながります。

    ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 【執行・財産開示手続の改正】養育費回収がワンストップ化!法改正のポイントを徹底解説

    【執行・財産開示手続の改正】養育費回収がワンストップ化!法改正のポイントを徹底解説

    1.改正の背景と目的

    従来、養育費などの扶養義務に基づく債権の回収には、複数の申立てが必要で、債権者の負担が大きいという課題がありました。債務者の財産情報も取得しにくく、強制執行に至るまでのプロセスが煩雑でした。

    今回の改正では、手続のワンストップ化収入情報の強制的な開示制度の導入が実現され、養育費の履行確保がより現実的になりました。

    2.改正のポイント

    【1】民事執行法 第167条の17(扶養義務等に係る債権の特例)

    ■ 改正内容
    養育費等の債権について、財産開示手続の申立てと同時に、債権差押命令の申立てがされたものとみなされる制度が創設されました。

    ■ 改正前との違い
    これまでは、以下の手続を別々に申し立てる必要がありました:

    • ① 財産開示手続申立て
    • ② 財産調査(住民票等取得)
    • ③ 債権差押命令申立て

    改正により、これらが一括で同時に処理されるようになり、債権者の負担が軽減されます。

    ■ 具体例
    養育費の支払いを拒否している債務者に対し、財産開示手続を申し立てると、給与債権への差押命令が自動的に行われ、住民票取得命令も裁判所の職権で実施されます。

    【2】人事訴訟法 第34条の3(収入情報等の開示命令)

    ■ 改正内容
    家庭裁判所が、養育費分担請求の場面で、当事者に収入・資産の状況の開示を命じることが可能になりました。

    ■ 改正前との違い
    これまでは任意協力に頼るしかなく、正確な情報が得られないこともありましたが、今後は法的拘束力を持って開示を命じることができます。

    ■ 制裁措置
    虚偽の情報を提出した場合や正当な理由なく拒否した場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

    【3】家事事件手続法 第152条の2(収入情報等の開示命令)

    ■ 適用対象の審判

    • ・夫婦間の協力扶助
    • ・婚姻費用分担
    • ・子の監護費用
    • ・財産分与

    上記の審判手続でも収入情報の開示命令が適用され、生活費や財産分与に関する法的支援が強化されました。

    3.改正の実務的意義

    • ● 手続がワンストップ化され、養育費回収までのスピードが大幅に向上
    • ● 相手方の財産・収入状況が法的に把握しやすくなり、公平な養育費算定が可能に
    • ● 開示拒否や虚偽申告への制裁により、法的実効性が強化

    4.まとめ

    本改正は、養育費や婚姻費用などの支払いを確保し、子どもの生活を守るために重要な一歩です。