民法の改正案が審議され、離婚後の子どもの養育に関するルールが大きく見直されようとしています。
特に注目されているのが、「親権」と「監護」の違い、そして共同親権の導入です。
この記事では、改正内容をわかりやすく解説し、皆さまの疑問にお答えします。
1. 親権と監護の違いとは?
親権
- 子の養育全般に関する包括的な権利義務
- 子の財産管理や代理権も含む
- 改正案では離婚後も共同親権の選択が可能に
監護
- 子の生活・教育などの身上監護に関する具体的権限
- 改正民法第824条の3により明確化
- 居所の指定や教育方針などは監護者が単独で判断可能
- 親権者でも監護者でなければ監護行為に干渉不可
- 監護者には財産管理権・代理権はない
2. 共同親権なのに監護者が一方に?
共同親権を選んだ場合でも、監護者は一方に限定されることがあります。
これは主に「子の利益」を最優先に考慮した結果で、以下のような事情が背景にあります。
- 父母間の将来の紛争リスクを回避する必要がある場合
- 進学先や居所などの決定での対立を予防
- 国際結婚に限らず、日本国内の離婚でも同様の判断がされうる
3. 監護者の指定は必須ではない理由
改正案では、監護者の指定は必須ではありません。
離婚後も父母が責任を持って養育に関わるという基本理念に基づいており、家庭の事情に応じて柔軟な運用が求められています。
4. 子の利益を最優先にした法改正
今回の改正案の中心は「子の利益の確保」です。多様な家族形態や価値観に対応し、できる限り父母が協力して子育てを行うことが、子どもの最善の利益に資するとの考え方が示されています。
5. 親権行使における特定の事項と日常の行為
特定の事項(改正民法824条の2第3項)
- 進学先など、意見対立の可能性がある重要事項
- 協議不成立時は家庭裁判所が判断
日常の行為(改正民法824条の2第2項)
- 日常生活での監護行為
- 短期の旅行などは通常、日常の行為に含まれる
6. DV・虐待と親権の関係
- 葛藤があるからといって直ちに単独親権になるわけではない
- 裁判所は調停等を通じて両親の協力を促す
- DVや虐待がなくても、状況により単独親権の判断はあり得る
- 「おそれ」の判断は客観的証拠に限らず総合的に考慮
7. 改正後の運用と裁判所の役割
監護者と親権者の違いやDVの判断基準、特定の事項の定義など、具体的な運用に不透明さが残っているとの指摘があります。
裁判所の判断に頼る場面も多くなると考えられ、今後の実務の展開が注目されます。
まとめ:離婚後の親権・監護は慎重に判断を
今回の民法改正案は、子の利益を第一に、多様な家族に対応できる制度設計を目指しています。
共同親権や監護権の明確化は、離婚後も親が連携して子の養育に関わる道を開くものです。
離婚後の親権や監護でお悩みの方は、ご相談ください。個別の事情に応じたアドバイスが重要です。
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