カテゴリー: 相続・遺言・終活

  • 成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?制度の種類と注意点をわかりやすく解説

    成年後見制度とは?概要と種類をわかりやすく解説

    成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方を、 法律的に保護・支援する仕組みです。
    判断能力が低下すると、財産管理や契約手続きが困難となり、不利益を被るおそれがあります。
    ここでは、成年後見制度の概要・種類・利用時の注意点について、わかりやすく解説します。

    1. 成年後見制度の目的と必要性

    判断能力が低下すると、本人の意思確認ができなくなり、家族であっても 預金の引き出しや不動産の売却、入院や施設入所の契約などができません。
    成年後見制度を利用することで、家庭裁判所の監督のもと、 財産や生活を適切に守ることができます。

    2. 成年後見制度の種類

    成年後見制度には大きく分けて、次の二種類があります。

    • 法定後見制度:判断能力が低下した後に利用。家庭裁判所が後見人を選任。
    • 任意後見制度:判断能力があるうちに契約をしておき、将来に備える仕組み。
    制度開始時期後見人の選任権限の範囲取消権
    法定後見判断能力が低下した後家庭裁判所広範囲にわたるあり
    任意後見判断能力があるうち本人が契約(公正証書)契約内容の範囲内なし

    3. 法定後見制度の3つの類型

    法定後見は、本人の判断能力の程度によって以下の3類型に分かれます。

    • 後見:判断能力がほとんどない場合。成年後見人が包括的に代理。
    • 保佐:判断能力が著しく不十分な場合。重要な行為について援助。
    • 補助:判断能力が一部不十分な場合。特定の行為に限り援助。

    4. 後見人の職務とできないこと

    主な職務

    • 財産管理(預貯金、不動産、税金支払いなど)
    • 身上監護(介護サービス利用契約、施設入退所契約など)
    • 家庭裁判所への定期報告

    制限される行為

    • 医療行為への同意(手術や延命治療の可否など)
    • 養子縁組や遺言作成などの身分行為
    • 本人の利益にならない贈与や相続税対策

    5. 成年後見制度の費用

    • 申立費用: 約2万円(申立手数料・郵券代など)。専門家依頼時は別途10万〜30万円程度。
    • 後見人の報酬: 専門職後見人の場合、月2万〜6万円程度(本人の財産から支払う)。

    6. 家族が後見人になる場合の注意点

    • 家庭裁判所の判断で、弁護士など専門職が選任されることが多い。
    • 家族が後見人になると費用は抑えられるが、事務負担が大きい。
    • 一度選任されると辞任は難しく、他の親族の同意も重要。

    7. 成年後見制度以外の選択肢:家族信託

    本人に判断能力があるうちに利用できる制度として「家族信託」があります。
    信頼できる家族に財産管理を託しておくことで、柔軟な資産管理や相続対策が可能です。
    ただし、身上監護(介護や医療契約)はできないため、 任意後見制度と併用して使われることもあります。

    まとめ

    成年後見制度は、判断能力が低下した本人を保護する大切な仕組みですが、 利用にはメリットとデメリットがあります。
    また、法定後見・任意後見・家族信託といった制度はそれぞれ特徴があり、 状況に応じた選択が重要です。
    実際に制度を利用する際は、家庭裁判所の審判や多くの書類準備が必要となるため、 制度の仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。

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  • 遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    遺産寄付で相続税を抑える条件と手続き

    非課税とするための条件と手続き

    親の遺産を慈善団体に寄付したいと考えたとき、相続税はどのように扱われるのか──本記事では国税庁の制度を基に「非課税となる具体条件」と「申告手続きの実務ポイント」を整理して解説します。

    結論(要点まとめ)

    遺産寄付の相続税の取り扱いは寄付の方法によって異なります。主に次の2つのケースに分かれます。

    • 遺言で直接寄付(遺贈)する場合:相続人を経由せずに寄付されるため、原則として相続税はかかりません。
    • 相続人が一度相続した後に寄付する場合:原則課税。ただし国税庁の「相続財産を寄附した場合の非課税制度」を満たせば非課税になります。

    1. 遺言に基づく直接寄付(遺贈)のポイント

    遺言で「団体へ遺贈する」旨がある場合、その財産は相続人を経由せずに寄付先へ渡ります。この場合、相続人が財産を取得したとはみなされないため、相続税は基本的に発生しません。

    注意点:譲渡所得税の可能性

    ただし、不動産や上場株式などを遺贈した場合、被相続人の死亡時に譲渡したとみなされるケースがあり、譲渡所得税の問題が生じる可能性があります。事前に税務の専門家に確認してください。

    2. 相続人が受け取ってから寄付する場合(非課税にする4要件)

    相続人が一度財産を取得してから寄付する場合でも、次の要件をすべて満たせば相続税の非課税特例が適用されます。

    非課税特例の4つの要件

    1. 寄付財産が相続や遺贈で取得した「現物」であること
      (例:相続で取得した現金・預金・不動産・株式等そのもの。取得後に売却して得た現金は不可。)
    2. 相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに寄付が完了していること
      (期限を過ぎると特例は適用されません。)
    3. 寄付先が国・地方公共団体・公益法人・認定NPOなど適格な公益団体であること
      (任意団体や一般企業は対象外。寄付先の適格性は事前確認が必須。)
    4. 寄付を証明する書類(受領証や寄付契約書等)を申告書に添付すること
      (申告に必要な明細書の記載・添付がないと適用されません。)

    実務上のポイント

    • 寄付前に寄付先の「公益性(適格性)」を書面で確認しておくと安全です。
    • 相続税申告を税理士に依頼する場合でも、寄付の証明書類は相続人が確実に保管しておきましょう。
    • 株式や土地などの評価方法や時価の算定が問題となることがあります。評価額は相続税申告で重要です。

    3. 国税庁の制度(No.4141)に基づく適用範囲

    国税庁が示す特例では、主に次の寄付パターンが対象となります。

    寄付先の主な分類

    • 国・地方公共団体
    • 特定の公益法人(例:公益社団法人・公益財団法人、学校法人、独立行政法人など)
    • 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)
    • 特定の公益信託(信託会社を通じて公益信託に組み入れる場合)

    適用除外の例

    以下に該当すると特例の適用が取り消されることがあります。

    • 寄付先が寄付から2年以内に公益性を失った場合
    • 寄付を通じて特定の相続人が不当に利益を受けるなど、不当な税負担の減少が認められる場合

    4. 手続きと必要書類(チェックリスト)

    非課税特例の適用を受けるために必要な手続きと提出書類は次のとおりです。

    必須書類(主なもの)

    • 相続税申告書(特例適用の旨を記載)
    • 寄附した財産の明細書(相続税申告書第14表)
    • 寄付先からの受領証または寄付契約書
    • 寄付先が公益法人等であることを証明する書類(必要に応じて所轄庁の証明)

    手続きの流れ(簡易)

    1. 寄付先の適格性を事前に確認する(書面で保存)
    2. 寄付(相続税申告期限内に完了)
    3. 必要書類を揃えて相続税申告書に添付して提出
    4. 税務署の確認を経て非課税が適用される

    5. よくある質問(FAQ)

    Q1:遺言で寄付するとき、相続人の手続きは必要ですか?

    A:遺言で直接寄付(遺贈)される場合、寄付先へ財産が移転するため、相続人がその財産を受け取ったとはみなされません。ただし相続放棄や遺言の執行など、手続き上の対応が必要になる場合があります。

    Q2:寄付先の「公益性」はどこで確認できますか?

    A:寄付先の法人格や認定状況は、所轄庁の公開情報や寄付先からの公式な証明書で確認します。認定NPOかどうか、公益法人の認定有無などを文書で取得してください。

    Q3:相続開始後に売却して得た現金を寄付したらダメですか?

    A:原則として、相続で取得した財産を現物のまま寄付することが要件です。相続財産を売却して得た現金は非課税特例の対象にならないため注意が必要です。

    まとめとご案内

    遺産寄付における相続税の取り扱いは、寄付の方法・寄付先・申告期限・証明書類の有無によって結果が大きく異なります。正確に非課税を適用するためには、寄付先の適格性の確認・申告期限の厳守・必要書類の整備が不可欠です。実務上の判断や税務評価に関する個別のご相談は、税理士や行政書士・弁護士などの専門家へご相談ください。

    (本稿は国税庁資料に基づく一般的な解説であり、事例により取扱いが異なる場合があります。)

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  • 公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

    公正証書遺言でも無効?意思能力と対策を解説

    公正証書遺言は本当に安全か?無効とされる理由と対策

    遺言書は、故人の意思を家族に伝える大切な手段です。特に公正証書遺言は「公証人が関与するため安全」と思われがちですが、実際には無効とされるケースが裁判例で数多く存在します。
    本記事では、公正証書遺言が無効になる理由と、無効を防ぐための対策をわかりやすく解説します。

    公正証書遺言とは?

    遺言書には大きく分けて2種類があります。

    • 自筆証書遺言:本人が自ら全文を書いて作成する。費用がかからない反面、形式不備で無効になるリスクが高い。
    • 公正証書遺言:公証人が関与して作成する。形式面では安全性が高いとされる。

    しかし、公正証書遺言でも「必ず有効」とは限りません。

    公正証書遺言が無効とされる主な理由

    1. 遺言者本人の判断能力の欠如

    民法第963条は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めています。
    例えば次のような場合には無効と判断される可能性があります。

    • 認知症と診断されていた。
    • 介護記録や証言から「正常な判断ができなかった」と認められた。
    • 遺言内容が不自然で、本人の真意ではないと疑われる。

    2. 公証人による確認不足

    公証人は法律の専門家ですが、確認が十分でない場合もあります。

    • 遺言書を読み上げるだけで、本人の理解を確認していない。
    • 家族や専門家が原案を作成し、本人は署名するだけ。
    • 本人確認が印鑑証明だけで済まされ、意思能力の確認が不十分。

    遺言能力とは?

    遺言能力とは「有効に遺言を行える能力」のことです。本人が遺言の内容を理解し、その結果を予測できる力が求められます。

    関連条文内容
    民法961条15歳に達した者は遺言できる
    民法963条遺言時に能力を有しなければならない

    判断基準としては、医師の診断、認知機能テスト、遺言内容の合理性などが重視されます。

    無効を防ぐための生前対策

    1. 医師の診断書を取得

    遺言作成直後に「意思能力あり」とする診断書を残しておくと有効性を証明しやすくなります。

    2. 遺言能力の証拠を残す

    • 認知機能テストの結果を保存
    • 作成時の様子を動画記録
    • 弁護士など専門家の立会いを依頼

    3. 遺言執行者の指定

    公正証書遺言を作成する際、信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。

    死後に無効が疑われた場合

    相続人同士で争いになった場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことになります。

    • 裁判ではカルテや介護記録などの客観的証拠が重視される。
    • 第一審だけで1~2年かかることもある。
    • 無効と判断されれば遺産分割協議が必要になる。

    まとめ

    • 公正証書遺言でも無効になることがある。
    • 最大のポイントは「遺言能力(意思能力)」の有無。
    • 診断書や動画記録など、客観的な証拠を残すことが重要。

    相続争いの多くは「一般家庭」で起きています。大切な家族のために、早めに法的に有効な遺言を準備しておくことがトラブル防止につながります。

    ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 包括遺贈と特定遺贈の違い|判例で解説

    包括遺贈と特定遺贈の違い|判例で解説

    東京地裁平成10年6月26日判決の概要

    この事件では、遺言者が亡くなる前に遺言を残し、妹には特定の不動産を、法人Bにはそれ以外の不動産や書籍・手紙などを贈与する旨を記していました。

    しかし、税務署は法人Bへの遺贈を包括遺贈と判断し、所得税約1億2,000万円の支払い義務を課しました。

    これに対し、法人Bは「特定遺贈である」と主張し裁判を起こしました。

    用語の解説|包括遺贈と特定遺贈

    遺贈とは?

    遺言によって財産を特定の人に与えることを「遺贈」といいます。

    包括遺贈とは?

    民法964条に定められており、「財産の全部」や「〇分の〇」といった割合で遺贈する形式です。相続人に近い立場となり、借金や税金などの義務も引き継ぎます。

    特定遺贈とは?

    「この不動産」や「この預金」など、特定の財産を指定して渡す遺贈です。原則として義務(負債や税金)は引き継ぎません。

    裁判所の判断|包括遺贈と認定された理由

    裁判所は、法人Bへの遺贈を包括遺贈と判断しました。

    遺言内容が「妹に特定の不動産、それ以外すべてを法人Bに渡す」としていたため、包括的な贈与と見なされました。

    学習館の書籍や手紙なども含まれており、遺言者の強い意志が表れていたことも判断材料とされました。

    重要な判例ポイント3つ

    ① 割合が書かれていなくても包括遺贈にあたる

    この判決では、「割合」が書かれていなくても、遺贈の内容が包括的であれば包括遺贈と認められるとしています。

    ② 「すべてを渡す」という文言に注意

    特定の財産を除いた「その他すべて」を渡す表現は、包括遺贈と解釈される可能性があります。特に、動産・不動産を広く含む場合は要注意です。

    ③ 包括遺贈には税金などの義務も伴う

    包括遺贈と判断されると、受遺者(ここでは法人B)は遺言者の所得税などの支払い義務も引き継ぐことになります。

    まとめ|包括遺贈と特定遺贈の違いと実務への影響

    観点内容
    遺贈の種類包括遺贈と特定遺贈に分かれる
    包括遺贈財産全体や割合で承継(義務含む)
    特定遺贈特定の財産のみ(原則、義務なし)
    本件の争点法人Bへの遺贈がどちらか
    判決の考え方割合の記載がなくても包括的なら包括遺贈
    実務上の影響表現次第で大きく税負担が変わる

    おわりに|実務上も重要な判例

    本判例は、遺言の表現方法によって受遺者の負担が大きく変わるという、実務上非常に重要な示唆を含んでいます。包括遺贈と特定遺贈の区別を学ぶうえで、非常に有用な事例といえるでしょう。

    東京地判平成10年6月26日(判時1668号49頁)

  • 包括遺贈と特定遺贈の違いと裁判例解説

    包括遺贈と特定遺贈の違いと裁判例解説

    初学者にも理解しやすいように、「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い、そしてそれが争われた裁判例について、できるだけ平易な言葉で丁寧に解説していきます。

    遺贈とは?

    「遺贈」とは、亡くなった人(被相続人)が遺言によって、自分の財産を誰かに与えることをいいます。

    遺贈には、大きく分けて以下の2種類があります:

    包括遺贈(ほうかついぞう)

    財産の全体、または一定の割合(例:2分の1など)を与える遺贈のことです。

    例:「私の財産の全部をAに遺贈する」「私の財産の3分の1をBに遺贈する」

    特定遺贈(とくていいぞう)

    「この土地」「この家」など、特定の財産を指定して与える遺贈です。

    例:「〇〇市の土地をCに遺贈する」

    この裁判の概要

    被相続人が次のような遺言を残しました:

    「遺産の全部をA、B、Cに贈与する。寺と地所、家はCがとる。Cを遺言執行者とする。」

    ここで問題となったのは以下の2点です:

    • この遺言は包括遺贈か?特定遺贈か?
    • 不動産取得税がかかるのか?

    不動産取得税がかかるかどうか

    地方税法第73条の7では、次のように定められています:

    「相続(包括遺贈や相続人への遺贈)による取得には、不動産取得税を課さない」

    つまり、不動産取得税を免除してもらうには、以下のいずれかである必要があります:

    • 包括遺贈であること
    • 相続人に対する遺贈であること

    原審(地裁)の判断:包括遺贈で税金不要

    地裁の判断は以下の通りです:

    • 「遺産の全部をA・B・Cに贈与」とあるため、包括遺贈である
    • 「家はCがとる」は、配分の詳細を示したにすぎない

    → よって、Cは包括受遺者であり、不動産取得税はかからないと判断されました。

    控訴審(高裁)の判断:特定遺贈で課税対象

    一方、控訴審(東京高裁)は次のように判断しました:

    • 「家はCがとる」という記載は、Cに対する特定の財産の遺贈と解釈できる(特定遺贈)
    • 包括受遺者に対して特定遺贈をすることも可能である

    ただし、最初の文(遺産の全部を…)については包括遺贈かどうかの判断を明確にしていません。

    この裁判例の意義と論点整理

    1. 包括遺贈か?特定遺贈か?

    包括遺贈は通常「割合」で示すとされますが、原審は「全部を与える」との意思があれば割合明示がなくても包括遺贈と認めました。

    2. 包括受遺者への特定遺贈は可能か?

    控訴審は「可能」と認定し、そのうえで「家」は特定遺贈と判断しました。

    3. 不動産取得税の取り扱い

    不動産取得税が免除されるのは:

    • 相続(包括遺贈を含む)による取得
    • 相続人への特定遺贈

    → では「包括受遺者に対する特定遺贈」はどうなるのか?明確にはされていません。

    裁判例:
    原審:横浜地裁 平成10年1月28日(未登載)
    控訴審:東京高裁 平成10年9月10日(判タ1071号172頁)

    まとめ

    ポイント内容
    包括遺贈遺産の「全部」や「割合」で与える。相続に近い。税金は原則不要。
    特定遺贈特定の財産(家や土地など)を与える。原則として税金がかかる。
    争点「全部あげる」と記載していても、解釈によって包括遺贈か特定遺贈かが争点に。
    裁判結果地裁は包括遺贈と認定、高裁は特定遺贈と判断。見解が分かれた。
  • 【やさしく解説】包括遺贈と特定遺贈の違いとは?遺言書を書く前に知っておきたいポイント

    【やさしく解説】包括遺贈と特定遺贈の違いとは?遺言書を書く前に知っておきたいポイント

    こんにちは。行政書士の吉村です。
    今回は、遺言書の中でもとても重要な「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の違いについて、やさしく・わかりやすく解説していきます。

    これを知っておくことで、遺言書を自分で書いてみようという方にも、専門家に依頼する際のイメージづくりにも役立ちます。
    少し難しそうな言葉ですが、実はルールはシンプルなんです。どうぞ最後までお付き合いください。

    包括遺贈とは?

    例:

    • 「私の財産の全部を妻に遺贈する」
    • 「長男に私の財産の3分の1を遺贈する」

    このように、「どれを」とは書かず、「すべて」や「割合」で財産を渡すのが包括遺贈です。
    特徴は、財産全体をまとめて、あるいは◯分の◯という割合で引き継がせる方法であること。

    注意点:
    借金などのマイナスの財産も一緒に引き継がれる点が重要です。

    特定遺贈とは?

    例:

    • 「次男に埼玉県の土地を遺贈する」
    • 「三女に〇〇銀行の預金100万円を遺贈する」

    このように、あげる財産を具体的にピンポイントで指定して渡す方法が特定遺贈です。

    特定遺贈では、プラスの財産だけを相手に渡すことができ、借金などのマイナスの財産はついてきません。

    包括遺贈と特定遺贈の見分け方

    ① 通説(よく使われる考え方)

    ・割合で渡せば包括遺贈、モノを指定すれば特定遺贈。

    • 「遺産の2分の1を遺贈」→ 包括遺贈
    • 「A銀行の預金を遺贈」→ 特定遺贈

    ※ 借金がついてくるのは包括遺贈だけ

    ② 借金の有無で判断する説

    • 借金を含むなら → 包括遺贈
    • 財産だけなら → 特定遺贈

    ③ 折衷説(良いとこどり)

    「割合」も「借金の有無」も両方を考えて判断する柔軟な考え方。

    一部の財産を割合で渡すのはOK?

    例:「長女に甲不動産を相続させる。そのほかの2分の1を長男に遺贈する」

    このような書き方は、遺産全体の割合が曖昧になり、包括遺贈と認められない可能性があります。

    包括遺贈にするには、「遺産全体」に対して割合で指定する必要があります。

    よくあるケースと注意点

    例:「長男には○○銀行の預金を、次男にはその他の一切の財産を遺贈する」

    このような遺言では、「その他の一切の財産」が包括遺贈か特定遺贈かで見解が分かれることがあります。

    • 通説:具体的な財産を渡したあとなので「その他一切」は包括遺贈に当たらない
    • 別の見解:借金も含める意図なら包括遺贈と解釈される可能性あり

    まとめ:包括遺贈と特定遺贈の違い

    比較項目包括遺贈特定遺贈
    内容全体または割合で渡す特定の財産を渡す
    借金も引き継ぐ?はいいいえ
    判定の基準(通説)割合指定具体的な財産指定
    実務上の注意「全体」の割合で書く必要あり金額やモノを具体的に書く

    専門家からひとこと

    「包括遺贈と特定遺贈の違いなんて、遺言書にそんなに大事なの?」と思われるかもしれませんが、この違いが“相続トラブル”の大きな火種になることもあります。

    実際に、「言葉の使い方ひとつ」で遺言の効力が変わってしまい、せっかくの想いがうまく伝わらなかったというケースもあります。

    自分でも書けそう、でもやっぱりちょっと不安。そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
    ご本人の想いを、確実に、法律的にも安心できる形で伝えるお手伝いをいたします。

    お気軽にご相談ください。
    ご家族を想う、そんなお気持ちを大切に、誠実にサポートいたします。

    行政書士吉村事務所のホームペー

  • 包括遺贈と特定遺贈の違いとは?

    包括遺贈と特定遺贈の違いとは?

    遺言の内容を考えるうえで、「包括遺贈」と「特定遺贈」という言葉を耳にすることがあります。これらはどちらも遺言によって財産を人に渡す方法ですが、法的な意味や取り扱いに大きな違いがあります。

    ここでは、民法の条文に基づきながら、実務上も重要なポイントを整理し、初めての方でも理解しやすいように説明します。

    包括遺贈と特定遺贈の違い

    包括遺贈:たとえば「財産の3分の1を○○さんに遺贈する」といったように、全体の割合で指定されるものです。民法第990条では「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定められています。

    特定遺贈:たとえば「○○市の土地を△△さんに渡す」というように、特定の財産を指定して行うものです。

    この違いにより、法律上や税務上での取り扱いにも差が生じます。

    遺贈を放棄する際の手続きの違い

    包括遺贈の場合

    贈与の事実を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に「放棄の申述」をしなければなりません(相続放棄と同様の手続き)。一部放棄はできず、全体を受け取るか放棄するかの選択となります。

    特定遺贈の場合

    放棄はいつでも可能で、家庭裁判所の手続きも不要です。部分的な放棄も可能です。

    借金や負債の扱い

    包括遺贈では、遺産の中に借金などのマイナスの財産があれば、それも一定割合で引き継ぐ可能性があります。一方、特定遺贈では指定された財産のみを受け取るため、借金を負うことはありません。

    ただし、形式上は特定遺贈でも実質的に包括遺贈と判断される場合、放棄期限を過ぎると負債を引き継ぐおそれがあります。

    農地を遺贈する場合の注意点

    農地を遺贈する場合、農地法の規制に注意が必要です。

    • 包括遺贈の場合:農業委員会の許可は不要
    • 特定遺贈の場合:原則として許可が必要。許可が下りないと無効

    不動産取得税の違い

    不動産の遺贈により発生する税金にも違いがあります。

    • 包括遺贈:原則として非課税(法定相続人への遺贈含む)
    • 特定遺贈:課税対象(固定資産評価額の約4%)

    形式の違いが税務署の判断に影響することもあります。

    換価遺言と譲渡所得税

    「不動産を売却して現金を渡す」といった遺言は「換価遺言」と呼ばれます。この場合、不動産の売却は相続人が行うため、譲渡所得税は相続人が負担することになります。

    換価金をもらえない相続人が税だけを負担するという事態も生じ得るため、遺言作成時には慎重な検討が必要です。

    包括遺贈と特定遺贈の比較表

    比較項目包括遺贈特定遺贈
    内容遺産全体の一定割合など指定された特定の財産
    放棄の手続き家庭裁判所に3か月以内の申述が必要いつでも可能。家庭裁判所の手続き不要
    一部放棄不可(すべて放棄か受け取りか)可能(不要な物のみ放棄できる)
    借金の引継ぎあり(相続人と同様)なし(プラスの財産のみ)
    農地の承継許可不要必要
    不動産取得税非課税課税される(評価額の約4%)
    換価遺言の税負担相続人が譲渡所得税を負担

    まとめと注意点

    包括遺贈と特定遺贈は、見た目には似ていても法律的な効果や手続き、税金の取り扱いに大きな違いがあります。

    遺言を作成する側も、受け取る側も、それぞれの違いを正しく理解したうえで判断することが重要です。

    不明点があれば、民法の条文に即した解説もいたします。行政書士として、正確な理解をお手伝いします。

    ※本記事は一般的な解説であり、特定の法律相談を目的としたものではありません。具体的な案件については、専門家にご相談ください。

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  • 包括遺贈と特定遺贈の違いをわかりやすく解説

    包括遺贈と特定遺贈の違いをわかりやすく解説

    はじめに:なぜ「遺贈」が注目されているのか?

    近年、「遺贈(いぞう)」という言葉を耳にする機会が増えています。背景には、高齢化や単身世帯の増加など、家族構成の変化があります。

    たとえば、法定相続人がいない方が亡くなった場合、その方の財産は最終的に国に引き取られる(これを「国庫に帰属」といいます)ことになります。実際、2019年度には全国で約603億円もの財産が国庫に帰属しました。

    これは、必ずしも故人の望んだ形ではなかったかもしれません。そんなときに活用できるのが「遺言による遺贈」です。遺贈を使えば、家族以外のお世話になった方や団体(NPO法人・病院・施設など)に自分の財産を託すことができます。

    民法964条:遺贈には2つのタイプがある

    民法第964条では、遺贈について次のように規定されています。

    遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

    この条文にあるように、遺贈には以下の2つの形式があります。

    • 包括遺贈(ほうかついぞう)
    • 特定遺贈(とくていいぞう)

    包括遺贈とは?

    内容

    財産の全部や割合を指定して贈る方法です。

    例:「私の全財産をAに遺贈する。」

    特徴

    • 遺産の割合(例:「2分の1」)を指定する場合にも使われます。
    • プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。
    • 相続人に近い立場となり、遺言執行者がいなくても一部手続きが可能です。

    メリット・デメリット

    メリットデメリット
    財産を包括的に一括で託せる借金も一緒に引き継ぐ可能性がある

    特定遺贈とは?

    内容

    特定の財産を指定して贈る方法です。

    例:「〇〇銀行の預金1000万円をBに遺贈する。」

    特徴

    • 土地・建物・預金など、具体的な財産を対象にしています。
    • 借金などのマイナスの財産は原則として引き継がれません。
    • 不動産などを遺贈する場合、遺言執行者が必要なケースが多くなります。

    メリット・デメリット

    メリットデメリット
    借金を引き継がなくてよい手続きが複雑になりやすい(遺言執行者が必要)

    注意点:包括遺贈と特定遺贈を曖昧にすると?

    たとえば、「財産の一部をAに贈る」とだけ書いてしまうと、それが「割合」の意味なのか「特定の財産」なのかで、受け取る側や遺族の間で解釈が分かれてしまう可能性があります。

    また、包括遺贈だと認識せずに財産を受け取ったら、思わぬ借金がついていた…というケースも実際にあります。

    こうしたトラブルを防ぐためにも、遺言の記載はできるだけ具体的かつ明確にしておくことが重要です。

    まとめ:安心して遺贈するために

    • 「包括遺贈」か「特定遺贈」かをはっきり書く
    • 「割合」なのか「具体的な財産」なのかを明示する
    • 不安があれば法律の専門家に相談する(弁護士・行政書士など)

    【文例】

    包括遺贈の文例:
    「私のすべての財産を、Aに包括的に遺贈する。」

    特定遺贈の文例:
    「私が所有する〇〇銀行の預金(口座番号:XXXX)を、Bに遺贈する。」

    最後に

    「遺贈」は、ご自身の思いを最も確実なかたちで後世に伝える手段の一つです。しっかりと仕組みを理解し、正確な表現で遺言書を作成することが、望んだ相手に確実に財産を届ける第一歩となります。

    ご不明な点がある場合は、専門家へご相談ください。丁寧に、わかりやすくサポートいたします。

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  • 相続で車を引き継ぐ手続きと必要書類ガイド

    相続で車を引き継ぐ手続きと必要書類ガイド

    「親が乗っていた車を相続したけれど、名義変更ってどうすればいいの?」
    そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

    相続による自動車の名義変更には、通常とは異なる手続きが必要です。本記事では、相続時の名義変更の流れや必要書類、注意点を行政書士の視点からわかりやすく解説します。

    なぜ名義変更が必要?放置によるリスクとは

    相続による自動車の名義変更は法律上の義務ではありませんが、放置することで以下のようなリスクがあります。

    • 車を売却・廃車できない
    • 事故時の補償が不利になる可能性
    • 車を担保にできない

    早めの手続きが将来的なトラブル防止につながります。

    相続による名義変更の流れ【5ステップ】

    1. 所有者の確認:車検証で所有者を確認。ローンやリース契約中の場合は所有権解除が必要。
    2. 相続人の確定:遺言書があれば内容に従い、なければ相続人全員で遺産分割協議を実施。
    3. 遺産分割協議書の作成:相続人全員の署名・実印が必要。
    4. 車庫証明の取得:新所有者の住所地の警察署で取得(軽自動車は保管場所届出書)。
    5. 名義変更手続き:書類が揃ったら運輸支局で手続き。自分で申請 or 行政書士に依頼。

    相続パターン別|必要書類一覧

    ① 相続人が1人だけの場合

    • 除籍謄本
    • 戸籍謄本
    • 印鑑証明書
    • 車検証・車庫証明

    ② 複数の相続人のうち1人が相続する場合

    • 遺産分割協議書
    • 相続人全員の戸籍・印鑑証明
    • 新所有者の印鑑証明・車検証・車庫証明

    ③ 車を共有財産とする場合

    • 遺産分割協議書(共有割合明記)
    • 相続人の戸籍・印鑑証明
    • 車検証・車庫証明
    • 使用者を定める念書

    名義変更にかかる費用の目安

    項目費用(目安)
    戸籍・除籍謄本約500円/通
    印鑑証明書約300円/通
    車庫証明約3,000円
    ナンバー変更約1,500円
    移転登録手数料約500円

    ご自身で手続きすれば約6,000円以内で済みます。行政書士に依頼する場合は1~3万円の代行費がかかることもあります。

    名義変更後に必要な手続き

    • 自動車保険の名義変更:保険会社に連絡し契約変更。
    • 売却の場合:名義変更が済んでいないと売却不可。
    • 廃車の場合:廃車時も名義変更が必要。

    まとめ|手続きに不安があるなら専門家に相談を

    相続による名義変更は、自分で行うことも可能ですが、戸籍の取得や遺産分割協議など慣れていないと手間がかかる場面も多くあります。

    不安な場合や時間が取れない場合は、行政書士への相談・依頼がおすすめです。
    当事務所では、相続による名義変更のご相談・手続き代行を承っております。お気軽にお問い合わせください。

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  • 【相続】配偶者と子が相続人の自動車手続き

    【相続】配偶者と子が相続人の自動車手続き

    こんにちは、行政書士の吉村です。

    今回は、配偶者と成人した子どもが相続人となる場合における、自動車の相続手続きと必要書類について解説します。

    実際のご相談でも、「何から始めたらよいかわからない」とお悩みの方が多くいらっしゃいます。

    この記事を読むことで、手続きの基本的な流れと準備書類を把握できます。

    ぜひ最後までご覧ください。

    相続人が「配偶者+成人した子ども」の場合

    この場合、どちらが自動車を相続しても問題はありません。

    遺産分割協議によって、誰が引き継ぐかを話し合い、決定します。

    たとえば「お母さんが引き継ぐ」「息子が使用するので名義を息子に変更する」といった形です。

    自動車の相続に必要な書類一覧

    • 戸籍全部事項証明書(所有者の死亡が記載されたもの)
    • 相続関係がわかる戸籍一式
    • 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)
    • 相続人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
    • 委任状(実印を押印)
    • 自動車検査証(車検証)
    • 車庫証明書(必要な場合)
    • ナンバープレート(抹消登録時)
    • 譲渡証明書(譲渡予定がある場合)

    書類のポイント解説

    戸籍全部事項証明書

    「戸籍謄本」に該当します。死亡が確認でき、相続人が特定できる内容であれば、一通にまとまっていても問題ありません。

    遺産分割協議書

    誰が自動車を相続するかを明記し、相続人全員が実印で署名・押印します。

    印鑑証明書・委任状

    印鑑証明書は3ヶ月以内に発行されたものを使用します。委任状には必ず実印を押印してください。

    車庫証明書

    名義変更後も同じ車を使用する場合に必要です。車検証と新所有者の住所が一致している場合は不要になるケースもあります。

    譲渡証明書・ナンバープレート

    相続後すぐに譲渡・売却する予定があれば、あわせて準備しておきましょう。抹消登録時にはナンバープレートが必要です。

    すぐに名義変更したい場合の追加書類

    相続後すぐに他人に譲渡・売却する場合は、以下の書類も必要です。

    • 新しい所有者の印鑑証明書
    • 新しい所有者の委任状
    • 新しい所有者の車庫証明書

    これらを同時に揃えておけば、一日で手続きを終えることも可能です。

    まとめ:自分でできる?専門家に依頼すべき?

    書類の数自体は多くありませんが、一つ一つ正確にそろえる必要があります。

    不備があるとやり直しになることも。

    ご不安な場合は、行政書士が書類収集から申請までしっかりサポートします

    。まずはお気軽にご相談ください。

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