2024年の民法改正により、離婚後の親権に関するルールが大きく見直されました。
これまで日本では、離婚後の親権は「単独親権」が原則であり、父母のどちらか一方が親権者となっていました。
しかし今回の改正により、離婚後も共同親権を選択できる仕組みが導入されました。
このブログでは、改正前後の違いと、具体的な運用イメージ、注意点について、わかりやすく解説します。
1.改正前のルール(単独親権が原則)
改正前は、協議離婚の場合も裁判離婚の場合も、必ず父母のどちらか一方を親権者と定めなければならないとされていました。
【民法第819条 改正前】
- 第1項:協議離婚では「父母の一方を親権者と定めなければならない」
- 第2項:裁判離婚でも「父母の一方を親権者と定める」
- 第3項、第4項:子が出生前に離婚した場合や、父が認知した場合でも、父母の協議で「父を親権者とする」ことはできたが、「共同親権」は認められていなかった。
つまり、改正前は離婚後に父母が共同して子の親権を持つことはできず、親権者となれなかった親は「法律上の親権行使権」を失い、子どもの進学や医療に関する重要な決定にも関与できない状況でした。
2.改正後のルール(共同親権の導入)
改正により、離婚後も父母双方が親権者となる「共同親権」を選べるようになりました。
【民法第819条 改正後のポイント】
- 第1項:協議離婚の場合、「父母双方または一方を親権者と定める」ことが可能に。
- 第2項:裁判離婚の場合も、「父母双方または一方を親権者と定める」ことができる。
- 第3項、第4項:出生前離婚や認知の場合も、共同親権の選択肢が明確に加えられた。
- 第6項:これまで「子の親族」しか親権者変更を申し立てできなかったところ、子本人も請求可能に。
- 第7項・第8項【新設】:共同親権の可否を判断する基準が明文化された。
3.裁判所の判断基準(重要ポイント)
今回の改正で、父母の双方を親権者とする場合でも、必ず「子の利益」が最優先されます。
裁判所は以下の事情を総合的に考慮し、共同親権が子の利益を害する場合は必ず単独親権とします。
- 親の一方が子を虐待するおそれがある場合
- 一方が他方に対してDV(身体的・精神的暴力を含む)がある場合
- 協議が不成立になった経緯から、父母の共同意思決定が現実的に難しい場合
共同親権は「子にとって最善」であることが前提であり、リスクがある場合は強制的に単独親権となります。
4.親権者変更時の新ルール
親権者を後から変更する場合、以下の事情が特に考慮されます。
- 親権を決めた際の協議の経過
- DVの有無
- 家事調停や裁判外紛争解決手続(ADR)の利用の有無
- 公正証書の作成有無
これにより、不適切な合意や子の利益に反する場合は、家庭裁判所が親権者を変更することも可能になりました。
5.実務上のイメージと注意点
実務でよくあるケース
- 協議離婚時に共同親権を選択したが、後に父母の対立が激化し、子の生活に悪影響が出た場合 → 家庭裁判所が単独親権に変更可能
- DV被害を受けていた親が協議時に十分な主張ができなかった場合 → 協議経緯を家庭裁判所が審査し、不適切なら変更可能
注意点
- 共同親権でも子の進学・医療・居住地など重要事項の協議は必須。意見がまとまらない場合はトラブルのもと。
- 離婚協議時に「具体的なルール」や「紛争時の手続き」も定めておくことが重要。
- 共同親権の導入により「子の利益を守る」視点が一層重視されるため、家庭環境や親の関係性を慎重に検討する必要がある。
6.まとめ
今回の改正で、離婚後も父母が共同で子どもを育てる仕組みが法的に整いました。
しかし共同親権は「子の利益」が守られることが大前提であり、単に「父母の希望」だけでは判断されません。
父母が協力できるか、子どもにとってどちらが幸せかが問われる時代です。
親権の選択は家庭事情により慎重な判断が必要です。
迷われている方は早めに専門家に相談することをおすすめします。
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