こんにちは。行政書士の吉村です。
今回は、遺言書の中でもとても重要な「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の違いについて、やさしく・わかりやすく解説していきます。
これを知っておくことで、遺言書を自分で書いてみようという方にも、専門家に依頼する際のイメージづくりにも役立ちます。
少し難しそうな言葉ですが、実はルールはシンプルなんです。どうぞ最後までお付き合いください。
包括遺贈とは?
例:
- 「私の財産の全部を妻に遺贈する」
- 「長男に私の財産の3分の1を遺贈する」
このように、「どれを」とは書かず、「すべて」や「割合」で財産を渡すのが包括遺贈です。
特徴は、財産全体をまとめて、あるいは◯分の◯という割合で引き継がせる方法であること。
注意点:
借金などのマイナスの財産も一緒に引き継がれる点が重要です。
特定遺贈とは?
例:
- 「次男に埼玉県の土地を遺贈する」
- 「三女に〇〇銀行の預金100万円を遺贈する」
このように、あげる財産を具体的にピンポイントで指定して渡す方法が特定遺贈です。
特定遺贈では、プラスの財産だけを相手に渡すことができ、借金などのマイナスの財産はついてきません。
包括遺贈と特定遺贈の見分け方
① 通説(よく使われる考え方)
・割合で渡せば包括遺贈、モノを指定すれば特定遺贈。
- 「遺産の2分の1を遺贈」→ 包括遺贈
- 「A銀行の預金を遺贈」→ 特定遺贈
※ 借金がついてくるのは包括遺贈だけ
② 借金の有無で判断する説
- 借金を含むなら → 包括遺贈
- 財産だけなら → 特定遺贈
③ 折衷説(良いとこどり)
「割合」も「借金の有無」も両方を考えて判断する柔軟な考え方。
一部の財産を割合で渡すのはOK?
例:「長女に甲不動産を相続させる。そのほかの2分の1を長男に遺贈する」
このような書き方は、遺産全体の割合が曖昧になり、包括遺贈と認められない可能性があります。
包括遺贈にするには、「遺産全体」に対して割合で指定する必要があります。
よくあるケースと注意点
例:「長男には○○銀行の預金を、次男にはその他の一切の財産を遺贈する」
このような遺言では、「その他の一切の財産」が包括遺贈か特定遺贈かで見解が分かれることがあります。
- 通説:具体的な財産を渡したあとなので「その他一切」は包括遺贈に当たらない
- 別の見解:借金も含める意図なら包括遺贈と解釈される可能性あり
まとめ:包括遺贈と特定遺贈の違い
比較項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
---|---|---|
内容 | 全体または割合で渡す | 特定の財産を渡す |
借金も引き継ぐ? | はい | いいえ |
判定の基準(通説) | 割合指定 | 具体的な財産指定 |
実務上の注意 | 「全体」の割合で書く必要あり | 金額やモノを具体的に書く |
専門家からひとこと
「包括遺贈と特定遺贈の違いなんて、遺言書にそんなに大事なの?」と思われるかもしれませんが、この違いが“相続トラブル”の大きな火種になることもあります。
実際に、「言葉の使い方ひとつ」で遺言の効力が変わってしまい、せっかくの想いがうまく伝わらなかったというケースもあります。
自分でも書けそう、でもやっぱりちょっと不安。そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
ご本人の想いを、確実に、法律的にも安心できる形で伝えるお手伝いをいたします。
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ご家族を想う、そんなお気持ちを大切に、誠実にサポートいたします。
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