遺言の方式

遺言を作成する際に知っておきたい基本事項

遺言(いごん)は、人生の最期に残す大切な意思表示です。財産の分け方を明確にしたり、家族や大切な人への想いを形にしたりすることで、遺された方々の負担やトラブルを未然に防ぐことができます。

しかし、遺言には法律で定められた形式があり、正しい方法で作成しないと「無効」となってしまう恐れがあります。せっかく遺された想いも、法的に認められなければ実現されない可能性があるのです。

ここでは、遺言を考え始めた方に向けて、最低限知っておくべき「遺言の基本的なルール」について、分かりやすくご説明いたします。



遺言の方式にはルールがある


遺言は自由に作成できるわけではなく、法律で定められた方式に従う必要があります。民法第960条には、


遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。


と規定されています。このため、遺言を適切な方式で作成しないと、法的に無効となる可能性があります。

遺言の方式の分類

民法では、遺言の方式を以下の2種類に分類しています。

普通の方式(一般的な遺言)
特別の方式(緊急時の遺言)

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

普通の方式の遺言

一般的に用いられる遺言の方式で、平常時に作成されるものです。民法第967条では、次の3つの方式が定められています。

自筆証書遺言

• 遺言者が全文を自筆で書く方式。
• 費用がかからず手軽に作成できる。
• 形式不備があると無効になる可能性がある。

• 2020年の民法改正により、自筆の負担軽減のため一部の内容(財産目録など)のパソコン作成が認められるようになった。

公正証書遺言

• 公証人が遺言者の口述をもとに作成し、公証役場で保管する方式。
• 形式や内容の不備がなく、確実に執行される。
• 費用がかかるが、トラブルを防ぎやすい。

秘密証書遺言

• 遺言の内容を秘密にしながら、公証人に遺言の存在を証明してもらう方式。
• 遺言の秘密を保持できるが、形式に不備があると無効になる可能性がある。
• 実際に利用されることは少ない。

特別の方式の遺言

特別の方式の遺言は、遺言者が通常の方式で遺言を作成できない特別な状況にある場合に認められるものです。民法には、以下のような特別の方式が定められています。

死亡の危急にある人の遺言

• 生命の危機が迫る状況で、証人3名以上の立会いのもと、遺言の趣旨を口授し、筆記させる方式。
• 遺言の日から20日以内に家庭裁判所で確認を得る必要がある。

伝染病で隔離されている人の遺言

• 伝染病のために隔離されている人が、警察官1名および証人1名以上の立会いのもとで作成する遺言。

船舶中にいる人の遺言

• 船に乗っている人が、船長または事務員1名と証人2名以上の立会いのもとで作成する遺言。

船舶遭難中の人の遺言

• 船舶が遭難した際に、証人2名以上の立会いのもとで口頭で遺言する方式。
• 証人が筆記し、家庭裁判所の確認を得る必要がある。

まとめ

• 遺言には法律で定められた方式があり、これに従わないと無効になる可能性があります。
• 一般的な遺言は「普通の方式」であり、自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類があります。
• 緊急時には「特別の方式」による遺言が認められることがあります。
• 遺言を作成する際は、適切な方式を選び、必要に応じて専門家に相談することが大切です。

専門家のサポートで安心を
遺言は一度作成すれば終わり、というものではありません。状況の変化に応じて見直しが必要になることもあります。また、相続人の状況や財産の種類によって、最適な遺言の形式は異なります。

当事務所では、遺言書の作成から見直し、保管・執行に至るまで、安心して任せていただけるサポートをご提供しています。

ご自身の意思を確実に伝えるために。
大切な人に、想いと財産をきちんと届けるために。
正しい遺言書の作成を支援します。

行政書士吉村事務所のホームペー