遺言の重要性と影響
遺言は、遺言者が自身の財産の分配方法を指定できる法的手段です。
遺言の内容次第で相続人や相続財産に大きな影響を及ぼす可能性があるため、遺言を作成する際にはその内容を十分に理解し、適切に記載することが重要です。
本記事では、遺言によって相続財産の処分に影響を与える主な事項について解説します。
遺言によって相続財産の処分に影響を与える事項
遺言によって相続財産の処分に関与できる事項として、以下の3つが挙げられます。
遺贈
一般財団法人の設立
信託の設定
遺贈(いぞう)とは、遺言書によって自分の死後に財産を誰かにあげることです。
たとえば、「自分の家を友人にあげる」と遺言書に書いておけば、その友人は家をもらうことができます。
遺贈の相手は家族でなくてもかまわず、友人や法人(たとえば学校や団体)でもOKです。
ただし、注意が必要なのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。
遺留分とは、法定相続人(たとえば子どもや配偶者)に最低限保証されている取り分のこと。
遺贈で全部の財産を他人にあげてしまうと、遺留分を侵害することになり、相続人から「取り返したい」と請求されることがあります。
ですから、遺贈を考えるときは、誰にどれくらいの財産を残すか、遺留分とのバランスを考えることが大切です。
一般財団法人とは、ある目的のために使うお金(財産)をもとに作られる法人です。
たとえば「子どもたちの教育を支援したい」と思って財産を残す場合、この一般財団法人が使われます。
この法人を「遺言」で作ることができる点です。亡くなった人の意思で法人を作るわけです。
手続きの流れはこうです。
まず遺言の中で、「一般財団法人を作りたい」「こういう目的で動かしてほしい」と書きます。
次に、遺言執行者(亡くなった人の遺言を実行する人)が定款(法人のルール)を作り、公証人の認証を受けます。
そして最低でも300万円の財産を拠出し、役員(評議員・理事・監事)を選びます。
最後に、理事の中から代表者を決めて、法務局で法人の登記をすれば設立完了です。
少し手順は多いですが、故人の思いを法人という形で実現できる制度なのです。
信託とは、自分の大切な財産を「信頼できる人(受託者)」に託して、その人に特定の目的のために管理・運用してもらう制度です。
たとえば、自分が亡くなったあと、未成年の子どもがしっかりと生活できるように、遺言で信託を設定することができます。
たとえば、次のようなケースで使われます。
- 子どもがまだ小さく、財産を自分で管理できないとき
- 障がいがあって生活支援が必要な家族がいるとき
- お金を浪費してしまうような相続人がいるとき
信託を使えば、「このお金は毎月10万円ずつ子どもの生活費に使うように」といった希望を形にすることができます。
単に財産を渡すだけではなく、将来の使い方まで指定できるので、遺族の生活を安定させるのにとても有効です。
遺言作成時の留意点
遺言で自分の財産の分け方を決めることができますが、正しいルールに従わないと、その遺言が無効になってしまうことがあります。
特に注意したいのは、遺言の「方式(決められた形)」と「内容」です。
例えば、自筆で書いた遺言(自筆証書遺言)や、内容を秘密にして作る遺言(秘密証書遺言)は、亡くなった後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要で、その過程で無効になる可能性もあります。
これに対して、公正証書遺言は、公証人という専門家が作成をサポートしてくれるため、方式や内容のミスが起こりにくく、安全性が高いのが特徴です。
ですから、遺言を確実に残したいなら、公正証書遺言を選び、専門家のアドバイスを受けながら作るのが安心です。
まとめ
• 遺言により、遺贈、一般財団法人の設立、信託の設定が可能。
• これらの事項は相続財産に大きな影響を与えるため、慎重に作成する必要がある。
• 遺言の無効リスクを避けるため、公正証書遺言を利用するのが望ましい。
適切な遺言を作成し、円滑な相続を実現するためにも、専門家に相談することをおすすめします。
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