公正証書遺言は本当に安全か?―無効とされるケースと対策を解説

公正証書遺言でも無効?意思能力と対策を解説

公正証書遺言は本当に安全か?無効とされる理由と対策

遺言書は、故人の意思を家族に伝える大切な手段です。特に公正証書遺言は「公証人が関与するため安全」と思われがちですが、実際には無効とされるケースが裁判例で数多く存在します。
本記事では、公正証書遺言が無効になる理由と、無効を防ぐための対策をわかりやすく解説します。

公正証書遺言とは?

遺言書には大きく分けて2種類があります。

  • 自筆証書遺言:本人が自ら全文を書いて作成する。費用がかからない反面、形式不備で無効になるリスクが高い。
  • 公正証書遺言:公証人が関与して作成する。形式面では安全性が高いとされる。

しかし、公正証書遺言でも「必ず有効」とは限りません。

公正証書遺言が無効とされる主な理由

1. 遺言者本人の判断能力の欠如

民法第963条は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めています。
例えば次のような場合には無効と判断される可能性があります。

  • 認知症と診断されていた。
  • 介護記録や証言から「正常な判断ができなかった」と認められた。
  • 遺言内容が不自然で、本人の真意ではないと疑われる。

2. 公証人による確認不足

公証人は法律の専門家ですが、確認が十分でない場合もあります。

  • 遺言書を読み上げるだけで、本人の理解を確認していない。
  • 家族や専門家が原案を作成し、本人は署名するだけ。
  • 本人確認が印鑑証明だけで済まされ、意思能力の確認が不十分。

遺言能力とは?

遺言能力とは「有効に遺言を行える能力」のことです。本人が遺言の内容を理解し、その結果を予測できる力が求められます。

関連条文内容
民法961条15歳に達した者は遺言できる
民法963条遺言時に能力を有しなければならない

判断基準としては、医師の診断、認知機能テスト、遺言内容の合理性などが重視されます。

無効を防ぐための生前対策

1. 医師の診断書を取得

遺言作成直後に「意思能力あり」とする診断書を残しておくと有効性を証明しやすくなります。

2. 遺言能力の証拠を残す

  • 認知機能テストの結果を保存
  • 作成時の様子を動画記録
  • 弁護士など専門家の立会いを依頼

3. 遺言執行者の指定

公正証書遺言を作成する際、信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。

死後に無効が疑われた場合

相続人同士で争いになった場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことになります。

  • 裁判ではカルテや介護記録などの客観的証拠が重視される。
  • 第一審だけで1~2年かかることもある。
  • 無効と判断されれば遺産分割協議が必要になる。

まとめ

  • 公正証書遺言でも無効になることがある。
  • 最大のポイントは「遺言能力(意思能力)」の有無。
  • 診断書や動画記録など、客観的な証拠を残すことが重要。

相続争いの多くは「一般家庭」で起きています。大切な家族のために、早めに法的に有効な遺言を準備しておくことがトラブル防止につながります。

ご不明な点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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