行政書士として建設業許可の実務に携わる中で、よく出てくるのが「軽微な工事(けいびなこうじ)」の概念です。この記事では、初学者の方にもわかりやすく噛み砕いて解説します。
「軽微な工事」とは何か?
建設業法における「建設工事」の中でも、電気工事は専門性が高く、原則として有資格者(電気工事士など)でなければ施工できません。また、一定の工事には電気工事業の登録(電気工事業法)も必要です。
ただし「ごく簡単な工事」については、登録や資格が不要な例外が設けられており、これが「軽微な工事」と呼ばれるものです。
📚 根拠条文
- 電気工事士法第2条第3項ただし書
- 電気工事士法施行令 第1条(政令で定める軽微な工事)
どんな工事が「軽微な工事」なの?
以下に、代表的な「軽微な工事」の具体例を挙げてわかりやすく説明します。
① 電圧600V以下のスイッチやコンセントへの配線
- 家庭用コンセントに電気コードを接続
- 照明器具のソケット交換
- 壁のスイッチにコードを接続
📌 一般家庭で扱う電圧(100~200V程度)の範囲内で、「差し込み」や「ねじ込み」などの簡単な方法で行うものです。
② 電気機器や蓄電池へのねじ止め配線
- 小型モーターに電線を接続(600V以下)
- 小型蓄電池端子にコードをねじ止め
📌 ねじ止めによる配線で、溶接やはんだ付けなどは含みません。
③ 電力量計やヒューズの取り付け・交換
- 家庭用ブレーカーやメーターの交換
- ヒューズの交換
📌 高度な工事を伴わない、単純な取り外し・交換作業です。
④ 小型変圧器(二次側36V以下)への配線
- 火災報知器やインターホン用小型トランスの配線
- 豆電球のような小型機器への配線
📌 感電の危険性が少ない36V以下の安全電圧での作業です。
⑤ 電線を支える支柱などの設置・変更
- 電線を引くための柱や腕木の設置
- 支柱の移動
📌 電気的な接続ではなく、物理的な支持構造の作業です。
⑥ 地中に配管(電線管)の設置・変更
- 地面にパイプを埋設して電線を通す
- 古い電線管の交換
📌 これは電気の接続ではなく、配線ルートの準備作業です。
重要ポイントまとめ
項目 | 軽微な工事の特徴 |
---|---|
工事の範囲 | 一般家庭レベル・600V以下の安全電圧 |
工事の方法 | 差し込み・ねじ止めなど簡単な作業 |
工事者の資格 | 電気工事士の資格は不要 |
電気工事業の登録 | 不要 |
建設業許可との関係
「電気工事業」の建設業許可が必要か判断する際、「軽微な工事」だけであれば許可が不要なケースがあります。
🔧 具体例
- インターホンの設置のみを行う業者
- 照明スイッチやコンセント交換のみを行う業者
→ これらは軽微な工事に該当するため、建設業許可や電気工事業登録は不要です。
実務で判断に迷う場合は、個別のケースに応じてご相談いただければ、法的・実務的な観点からサポートいたします。