遺言書を作成するとき、多くの方は「この人に財産を相続させたい」という思いを明確にします。
例えば、
- 世話になった子どもに多くの財産を残したい
- 疎遠な親族との相続トラブルを避けたい
- 特定の家族に自宅を相続させたい
こうした目的で遺言書を作ることは非常に有効な相続対策です。
しかし、実務上よく問題になるのが、 遺言で指定した相続人が先に亡くなってしまうケースです。
この場合、多くの方が
「子が亡くなっていれば孫が相続するだろう」
と考えますが、実は遺言書がある場合には必ずしもそうならないのです。
この記事では、行政書士の実務の視点から、
- 遺言書と代襲相続の関係
- 最高裁判例が示した重要なルール
- 遺言書作成で注意すべきポイント
について分かりやすく解説します。
遺言書を作成する目的
遺言書は、将来の相続トラブルを防ぐための重要な手段です。
例えば、次のようなケースがあります。
よくある遺言作成のケース
- 疎遠な家族との相続争いを避けたい
- 長年世話をしてくれた子どもに多くの財産を残したい
- 家業や不動産を特定の相続人に承継させたい
実際の相談事例でも、次のようなケースがありました。
ある夫婦は、疎遠になっている長女との相続トラブルを避けるため、
「すべての財産を長男に相続させる」
という遺言書を作成していました。
ところが、思いもよらない出来事が起こります。
想定外の出来事「逆縁」
遺言者より先に相続人が亡くなることを、 「逆縁(ぎゃくえん)」と呼びます。
この事例では、遺言者である父親よりも先に、 財産を相続する予定だった長男が亡くなってしまいました。
このとき、多くの方は
「長男の子(孫)が代わりに相続するのでは?」
と考えます。
しかし、ここに遺言書の大きな落とし穴があります。
遺言書がある場合は代襲相続にならないことがある
遺言書がない場合(法定相続)
遺言書がない場合、相続は民法の定める法定相続によって決まります。
民法887条では、
子が先に亡くなっている場合、その子ども(孫)が相続する
という代襲相続
遺言書がある場合
ところが、遺言書で
「長男に相続させる」
と書いている場合には事情が異なります。
民法994条の考え方により、
遺言で指定された人が遺言者より先に亡くなると、その遺言は原則として効力を生じません。
つまり、
- 長男が先に死亡
- 遺言の効力が失われる
- 結果として遺言がない状態になる
という可能性があるのです。
最高裁判例(平成23年2月22日)の判断
この問題については長年議論がありましたが、 最高裁平成23年2月22日判決によって重要な判断が示されました。
判決のポイント
この判決では、
「相続させる」旨の遺言であっても、受取人が先に死亡していれば原則として遺言の効力は生じない
と判断されています。
つまり、
- 遺言で相続人を指定していても
- その人が先に亡くなれば
- 代襲相続は原則認められない
というのが現在の基本的な考え方です。
ただし、遺言書の内容などから 特段の事情があると認められる場合には、 例外的に代襲相続が認められる可能性もあります。
遺言書作成で重要な対策
この問題を防ぐために有効なのが、 予備的遺言(補充的遺言)です。
予備的遺言の例
例えば次のように記載します。
「長男Aに相続させる。Aが私より先に死亡した場合には、その子Bに相続させる。」
このように書いておくことで、
- 受取人が先に亡くなった場合
- 財産の行き先が不明になること
- 遺言の意味がなくなること
を防ぐことができます。
遺言書作成の実務では、非常に重要なポイントです。
遺言書は定期的な見直しが必要
遺言書は、一度作成すれば永久に安心というものではありません。
人生の中では次のような変化が起こります。
- 相続人の死亡
- 家族関係の変化
- 財産状況の変化
- 不動産の売却や取得
そのため、 遺言書は定期的に見直すことが大切です。
行政書士に遺言書作成を相談するメリット
遺言書はご自身でも作成できますが、実務では次のような問題が多く見られます。
- 法律上無効になる書き方
- 相続トラブルの原因になる内容
- 予備的遺言が入っていない
- 財産の特定が不十分
行政書士に相談することで、
- 法的に有効な遺言書の作成
- 相続トラブルの予防
- 公正証書遺言の作成サポート
- 遺言内容の見直し
などの支援を受けることができます。
まとめ
遺言書には見落とされがちな重要なポイントがあります。
それが 「受取人が先に亡くなった場合」です。
現在の判例では、
- 遺言で指定された人が先に死亡
- その場合、遺言は原則失効
- 代襲相続は自動では発生しない
とされています。
この落とし穴を防ぐためには、
予備的遺言を含めた専門的な遺言書作成
が重要です。
相続でご家族が争うことのないよう、 早めの対策をおすすめします。
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